離婚しましょう? 旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ 本編《シルビア視点》11

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ふかふかに整えられた寝台の上に寝かされると、旦那様はしばらくは何も告げずにただじっと横になった私の側に座っていたのだけれど、先程からは落ち着かなくなって来たのか、急に立ち上がるとせわしなくウロウロし始めていた。
そして時折何かを思い出したように、私に話しかけてくる。

「あっ、痛みは如何だ?」

「今は大丈夫です……」

つっぱり感は実際あるが、痛みは既に無かった。

「気分は如何だ? 吐き気……とかは無いのか?」

「無いですよ」

「喉が乾いてないか? 檸檬水が良いと聞く。持ってくるか?」

「いいえ、大丈夫です……」

「そうか……」

旦那様の脳裏には、私の妊娠説は濃厚で、それが頭をかすめ続けているらしい。
私は旦那様の言葉から、その可能性も否定はできないと思いながらも、実感としては何も感じられずにいた。
だから至って冷静でいられた。

「あの……旦那様? 少し座りませんか?」

「あっ、うん、そうだな……」

何処か落ち着かない旦那様を時折諫めながら、何分位が経っただろうか?
外から馬車の近付いて来る音が聞こえて来て、旦那様は慌てたように立ち上がると私の側を離れて行った。
続いて、階段を駆けて行く足音。
その様子からも旦那様の緊張の度合いが伺える。
私も緊張していない訳ではないけれど、旦那様がそんな状態なものだから、何処か冷静でいなくてはとの本能が働き、平常心を保てている気もする。
結局は今の私に出来る事と言えば、こうして横になっている以外、何もないのだから……。

「シルビア、先生が来られたぞ!」

医術師の先生が見えられた事で何処か安堵しているような旦那様に対し、今度は私が緊張を強いられる番となった。


先ず先生は来るなり望診を行われ、私の舌の色までしっかりとチェックして下さった。
続いて問診では痛みや違和感を伴うようになった時期と、出血もあった事から月経についての事も色々と聞かれた。
切診では旦那様に暴かれる事すら恥ずかしいと言うのに、医術師とは言え、全く知らない殿方に秘められた場所を曝け出す事となり、私は羞恥に震え気を失いそうになった程だった。
けれど、もしも旦那様の言う通りだったとしたら、それこそ大変な事なので、私は懸命に瞳を閉じて、その羞恥に必死に耐えた。
結果――。

「熱の花が出来ておいでですね。ずっと体調が優れなかったのではありませんか? 微熱もあるようですし……」

「色々と心労がありましたので、良くはありませんでしたが、特に悪いと感じる程では……」

「そうですか……」

「あの……、あの痛みは如何すれば治まるものなのでしょうか?」

このままでは旦那様に不自由な思いをさせてしまうと思い問うてみれば……。

「それは時期が来れば……としか申せません。痛みの原因は、妊娠初期の『お腹の子宮の大きくなる時の痛み』でしょうから、これには個人差が大きく伴います。これは痛みを感じる方もいらっしゃいますが、感じない方もおられますので……」

「!!!……」

絶句した……。

「では、私に赤ちゃんが……、生まれるのですか?」

「確定は今の段階では何とも……。多少の出血も見られておりますし……、『おめでとうございます』とは直ぐには申せない状況です。安静が必要かと……」

ああ、何てこと!!

「ぅぅっ……」

私は医術師の言葉を聞いた途端、はらはらと流れ落ちる涙を止める事が出来なくなってしまった。

旦那様とのお子は、何時かは絶対に欲しいと思っていた。
結婚し、そう言う行為をしているのだから、子供が出来てもおかしくは無いのだけれど、月の障りも無かったから、出来る筈がないと信じて疑っていなかった。
だから旦那様の妊娠を示唆する発言も冷静に受け止められていたのに、本当にまさか妊娠していただなんて……。

「っ……、ごめんなさい……、気付けなくて……本当にごめんなさいっ……ぅっく……」

私は医術師の先生が退出後も、上掛けの中に身を埋めたまま、ずっと泣き続けていた。

先生を玄関先までお送りした旦那様が、再び寝室を訪れたのは、それから間もなくの事。
私に労りの言葉をかけてくれるけれど、その言葉すら申し訳無く感じてしまい、涙が止まらない。

「心配ない。私がずっとついているから……」

「ごめんなさい……、旦那様ッ、わたしっ……」

「お前は悪くないッ……」

その優しい言葉の一つ一つが、今の私にどれだけ救いを齎している事か……。

今ならば、正直に今まで思って来た事を、全てを話せる気がして、私はずっと心に燻っていた思いの丈を旦那様に向かって吐き出した。
旦那様が以前よりお付き合いをされていたご婦人達の事で、平常心を装ってはいたけれど、自分がどれだけ心を痛めて来たかと言う事や、この結婚が父より勧められたからでは無くて、本当は自分が父にお願いしたものであったと言う事も。

「結婚前より旦那様に……新しい方が増える度に、やるせない気持ちでッ……」

「……ああ、分かったから……、もう喋るなッ……」

「っ……、ぅっぐ……、ぐすんっ」

旦那様は私の告白に、何とも言えぬ複雑そうな表情を浮かべながらも、ベッドの上に腰を下ろすと、上掛けの上からゆっくりと顔を覗かせている私を抱きしめながら、ただ優しくずっと側に居てくれた。


それから約2週間、いいつけを守りひたすら安静にしていた私は、やっと医術師の先生より嬉しい言葉を貰う事が出来た。

「しっかりとした心拍が聞き取れます。何とか峠は越したようですね。おめでとうございます」

「旦那様ッ!」

「シルビア!!」

私達は手を取り合い、共に喜びを分かち合った。

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~ Comment ~

NoTitle 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
幸せムード一直線になった。

こういうときに旦那様は浮気しやすいんだぜ。
・・・なんていうのは野暮なことですね。


一緒に子どもが授かるのを喜んでくれる。
それこそ幸せですね。
(´▽`*)

LandM様 

こちらにも有り難うございます。

はい、暗から明に一気に浮上しました^^

>こういうときに旦那様は浮気しやすいんだぜ。
ここでは全然大丈夫ですね^^
でも、今進めている続編の方では……、おっとネタバレはしませんよ(笑)

二人には山あり谷あり乗り越えて、究極の幸せを噛みしめて欲しいと思っているので、引き続きお付き合い下さいませ^^

いつもコメント有り難うございます^^/
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