ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《180.発 言3》(リレント視点)

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陳腐な前男爵の発言に、些か興味を覚えた私は、冷静にその言葉を受け止めた。
わが身がルーカス家と繋がっていると分かるが否や、手の平を返したようなこの態度には、並々ならぬルーカス家への強い思い入れが感じられる所なのだが……。

「何を考えているのよ! お爺様ッ!!!」

突然の……、自らの祖父の言動が、マリエッタ様には全くもって理解できないと言ったご様子で、かなりご立腹のようだ。
今までの一連の話から、何が如何転ずれば、そのような話になるのか?
それは誰もが感じる所なのだろう。
しかしながら、自らの出生が、旦那様の今後の良く末にお役立ち頂けるのならば、それに越したことは無い。
これは利用しない手はないと瞬時に思いを巡らせた。

おそらくこの様子ならば、かなり強引に踏み込んだ所で元男爵の機嫌を損ねる事も無いだろう。
よって敢て話を難しくする必要性も感じられない。
元男爵が何を目的とし、このような陳腐な事を突然提案する事態に陥ったのかは分からないが、今後の出方次第ではそれを把握しておく必要性は感じられた。
とりあえず差しさわりの無い、言葉をぶつけてみる事にした。

「話の意図が全く見受けられません。理解に苦しみます」

出向いた経緯を考えれば、何の問題も無い妥当な問いかけだったと思う。
だが……。

「意図も何も、言葉のままがその真意だが?」

悪びれる素振りも無い、ストレートな答えが返って来た。

これは如何捉えるべきなのか?
まさか、開き直られているのか?
だとすれば、このまま相手のペースに巻き込まれれば、少々厄介な展開となる事は必須。
よもや本気で私が旦那様を差し置き、マリエッタ様の婿に収まるとでも本当に考えているのか?
だとすれば、それこそ憤慨されたと感じざるを得ない。
ならばもう先程までのように元男爵と旦那様の動向を見守り、都合よく話を合わせてやる必要性は感じられ無いと判断を下した所で、まさかの事態に陥った。

「お爺様ッ、勝手な事を仰らないで! 今回、私達が何の為にこちらへ赴いたと思っていらっしゃるの!?」

「父親より決められた結婚申請書を取り消すことが叶わないのであれば、新たな申請書にサインしろと言う事なのだろう? 良いだろう。認めてやってもいい。但し相手はこの、」

元男爵が決定的な一言を告げようとしている瞬間、ついにマリエッタ様の表情が更に険しいものへと変化して、ついに怒号が飛び出した。

「これ以上馬鹿な真似をしたら、私、お爺様との縁も切るから! 今後お爺様と会うことも無いでしょうね。私の愛しているのはアレクシス一人だけ。その事をこれ以上咎められるぐらいなら、私は一生このままでも構わないわ。誰からのお許しを得られなくても、構わない! 私はアレクシスと一緒になる! ずっと側に居て、アレクシスとは絶対に別れない! 王の許しもいらないッ。日陰者と罵られようが構わない。私はアレクシスと寄り添い、子を産み育て……、共に生きるわ!」

「まっ、マリエッタッ……」

前男爵様の声を無視して旦那様の方へと向き直るお嬢様の姿に思わず見とれてしまった。

「さあ、もうこんな分からず屋は朴っておいて、別邸に戻りましょう? アレクシス!」

身を乗り出し、いきり立つマリエッタ様の姿はかなり勇猛果敢だ。

その姿を我が主は驚きの表情で苦笑いを零しながら優しく諫める。

「落ち着いてマリー、大丈夫だから。絶対に私はお前を日陰者にもしないし、離さないから安心して。次の手も既に打ってあるから大丈夫だから」

「あっ、アレクシス……」

瞳にいっぱいの涙を浮かべていたマリエッタ様は、すぐさま囲う様に旦那様の腕に抱きしめられると、大粒の涙をその懐に零した。

その姿には、絶対にもう離しはしないという旦那様の強い意志が感じられ、私も意を決して続く言葉を口にする。
ルーカス家に強い関心を示している元男爵。
ならば生家にかこつけ何を語っても、おそらく許されるだろう。
私の心は決まった。

「男爵様にお尋ねいたします。そもそもこの手合わせは、男爵様のご希望により進められたものではありませんでしたか?」

「そうだ」

「それも無理やりに近い形で我が主と剣を合わせ、勝敗が決しました。勝者は我が主で間違えございませんね?」

「……そうだな……」

「ならば我が主には話を聞いて頂く権利がございます。そう言うお約束です。その件を反故にし、突然訳の分からぬ話を持ち出そうとなさること自体、相手を憤慨しているとみなされても文句を言えぬ筈。それは剣を主る者の風上にも置けぬと言動と推察致しますが、その事についてはどのような見解をお持ちでしょうか?」

「いや……。見解も何も、話は聞くぞ。反故にするつもりは無い。だが、今の私の率直な思いは……、そうなのだ。グラッセ侯爵との話の後で良い。私の話を少しは聞いてはくれぬか?」

「ご冗談を。主の話を断る事を前提としたお話を、私が聞くとでも? 今の男爵様のお言葉に、私は憤りすら覚えます。少なくとも今の私は、主の幸せを勝ち取る為だけにこの地へ赴いているのです。これだけの大事になりながら、それすらも分からぬ輩との話をする耳を私は持ち合わせておりません!」

「りっ、リレント殿……。いや、だっ、だが、私のルーカス家に対する想いは……」

「想いが何です?」

「私はずっと以前にルーカス家には……、並々ならぬ恩義があるのだ」

「恩義? そのような事でなど話になりませんね。そんなものルーカスの家には腐る程日々寄せられている。私は何度も申しますが、既にルーカス家を出た身。それに恩義と称される押し付けは、ルーカスの家が最も無用のものと称する産物。良かったですね。口にしたのが私の前で」

「!!…………」

おそらく男爵は、過去にルーカス家の誰かに助けられたか何かの経緯を持っているのだろうが、そんな事はルーカスの家には不必要だ。
ルーカス家の家訓は『何人たりからも、見返りを受けない』だ。
武勲による報奨金もいつも辞退している程だ。
ルーカス家が一番恐れるもの。
それは礼と称して近づき、何かの時にその武力を役立てようと企てる多くの腹黒い連中に力を利用される事だ。
過去に先祖がそれで手痛い目にあっている。

「私はグラッセ侯爵様の臣です。養子へと赴いた先の祖母が前侯爵様の乳母と言う経緯があり、お仕えするに至っておりますが、それでも私は我が主を尊敬致しておりますし、共に剣を交え育った身。その関係性は、将来私がモルシェード子爵家に入り侍従関係が解消されても一生涯変わるものではないと信じております」

「……子爵家の……、跡継ぎなのか?……」

「子爵家の跡継ぎであろうがなかろうが、こういう話をされること自体心外です。この件に関し、今後男爵様に話す事は何もございませんので、以後話を蒸し返すなどと言う愚かな真似は、なされないで頂きたい!」

私は、心底不機嫌さを醸し出しながら元男爵を見据え、自らの意思を力強く主張した。

「……やはり、ルーカス家の血縁者は、一筋縄ではいかぬ者ばかりと言う事か……。私は二人の関係性が羨ましい……」

小さく含むように微笑する元男爵の姿は、何処か寂しそうだった。

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~ Comment ~

NoTitle 

お、久しぶりの「ずっと心に決めていた」ですね~~。
お待ちしておりました~~。
とりあえず、この耄碌した爺をどうするか・・・ですね。
納得してくれたのなら何よりですけど、まだ心から納得していない様子が見られますね~~。
結婚というものは確かに不安定な材料も沢山ありますからね。
ずっと自分の元に置いておきたいというおじい様の気持ちも分からないこともないのですが、どうでしょうかね。
時間の経過が納得する手がかりになるのか、
あるいは強引に奪ってしまうのか。
それによってもなかなかおじい様の心中も変わってきますよね。


誰もが納得する結婚なんて存在しないのかもしれませんが。
そういうものが存在する結婚になってほしいと思いますね。
おじい様を含めて。
こういうストーリーでは尚更。

それでは失礼します~~。
(*´ω`*)

LandM 様 

今日は。

ルーカス家との縁談は諦めたようですが、この結婚事態にはまだ納得はし切れていないですよね。
ただルーカス家に対する絶対的な信頼。そこだけはあるので、それが今後どう生きてくるのか?
プラス、孫娘が絶対に幸せになれると思える確信でしょうね。お父様と違い、家よりも孫娘の幸せに趣を置いている人なので…。
家族の誰からも納得し祝ってもらえる結婚が一番ですしね(笑)
引き続き、二人を応援していただきたいと思います^^

いつもコメント有難うございます^^/
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