信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第1話

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我がローゼリアン伯爵家に来春には家族が増える事になった。
まだ随分先の話だが、先日妻の妊娠が判明し、色々あって心落ち着かない日々も過ごしたが、今朝は私よりも早く起きて身支度を整えると、厨房にも顔を出していた。
妊娠判明と同時に流産の危機にもさらされて、私達夫婦はとても生きた心地がしなかったが、やっと普段の日常が戻りつつあった。
今朝は玄関先まで久し振りに見送りをしてくれた。

「旦那様、ただですらお忙しいですから、もう私の心配などなさらずにお仕事に専念してくださいね。医術師の先生からも無理をしなければ普通に生活して構わないと言われましたし、本当に大丈夫ですから」

「そうか? ならば今日は職務に専念させて貰うが、気を付けるんだぞ。何かあればセイバスに言え。直ぐに戻るからな」

「はい、分かっておりますから。行ってらっしゃいませ、旦那様。お気をつけて」

「ああ、行って来る」

軽く口づけを交すと、私は久し振りに清々しい気分で家路を後にした。


実は今まで妻の身体が心配で、護衛の任が昼間に差し掛からない時は、憩時には一度邸に顔を出していた。
妻には大丈夫だと言ってはいたが、私の執務室の机の上は今、山積みにされたままの書類でいっぱいだ。
いつもならばその日の業務が終わると報告書類などは全てその日のうちに片付けて日々提出していたのだが、今回は緊急事態と言う事で、最低限の提出書類の確認事だけを済ませると出来るだけ早く帰宅していた。
そのせいで、この月末締めの書類もまだ沢山残っていた。

日中片付けようとしても護衛の任が入っている時は如何する事も出来ないので、少しでもデスクワーク出来る時間を有効活用しようと、今日は騎士団詰所内に設置されている厨房で手軽に食べられる食事を見繕って貰い、それを摘まみながら行おうと顔を出してみれば、嫌な奴に捕まった。

「よう! スタン。久し振りだな。そんなの持って、何処に行くんだ?」

「執務室」

「そう言えば珍しく、お前書類を溜め込んでいるらしいな。手伝おうか?」

「……別に良い」

「遠慮するなよ。俺とお前の仲じゃないか」

「私は別に……。もう、お前と連む気は無い。言っただろう?」

奴の名はグレンソ・マグリニー。護衛騎士団、第2連隊隊長で私の同期だ。
苦楽を共にし、良い事も悪い事も共に行ってきた、親友と呼べるべき友の一人だ。いや、一人だった。
気心の知れた奴だし、仕事も出来る。次の副団長には彼を推挙する事も考えられる程の逸材なのだが、私が言うのも何だが如何せん、かなり女にはだらしない……。
護衛騎士団が一番王侯貴族と近しい位置にある関係もあってか、入団項目に唯一容姿端麗の文字も記されている。
そのせいか数ある騎士団の中でも花形的存在と祭り上げられ、早くして結婚をする者も実に多いのだが、その反面、婚姻後も長年遊び歩いている者も居たりする。
私のように30歳の声を聞くまで結婚する事も無く……と言う者は稀で、この場合、程々に遊びながら独身を貫き通し、40代になる頃には女遊びにも飽きてきて騎士道にだけ身を置いて全うすると言う者が私が知る所の大部分を占める。
だから私のようなケースは異例中の異例で、その為おそらく世間的話題を呼んだのか?我妻にいらぬ事を吹き込んだ者がいるようだ。
私は実際、妻に不実を働くような真似は一切していなかったし、それなのにあのような噂が不本意にも出回ってしまったのは、おそらく結婚してもグレンのように女遊びが盛んな夫を持つ夫人達のやっかみだったのだろう。実際グレンは妻以外にも現在内縁関係にある婦人が2人居る。
そして以前内縁関係にあったある者との間に一子を儲け現在引き取っており、本妻との間の子を含めて3人の父親だ。
元々グレンの家は高貴な家柄で騎士団に入った当初から既に親が決めたと言う婚約者がいたが、それにしても今の私からしてみれば酷い話だ。

「何だ冷たいなぁ。お前とは積る話もあったのに」

「私には無い!」

「分かってるって。無理強いはしないさ」

「如何だかな」

元々私が貴婦人等と関係を持つようになったきっかけは、このグレンが原因を作った。
その事については今となっては詳しく思い出したくも無いが、彼と二人で酒を飲む事だけはしないでおこうと思っている。

「信用無いなぁ」

「当然だ」

「今度一緒に酒でも、」

「飲まない!」

私はキッパリそう断言し、仕入れたチキンサンドをトレイに乗せて自らの執務室まで急いで引き上げた。

奴が間に入って良い事など、今の私には何もないッ。
付け込まれて、再び奴の仲間になる事だけは避けたいと、心の底からそう思っている。

私には愛するシルビアがいる!
そして来春には子も産まれるのだ。
私は妻に対し、いや生まれてくる子に対し、誠実な父親でありたいと心の底からそう思っている。

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~ Comment ~

NoTitle 

お、続編ですねえ。
前作も楽しんで読ませていただきましたので、今回も楽しく読ませていただきます。
特に女性視点の妊娠というものを勉強させていただきたいなとは思っております。
私は経験できないからなあ。。。

LandM 様 

今日は。

妊娠についてどこまで触れられるか分かりませんが、確かに男性には分からない事と思うので、何か一つでも知識として加えていただけるものがあれば幸いです。

いつもコメントありがとうございます。
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