信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第2話

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「流石に定時で上がる訳にも行かないか……」

「申し訳ありません。団長」

「いや、お前は悪く無い。良くやってくれている」

妻の件で一番迷惑をかけてしまったのは、秘書のモルダー・トワイトソンだ。
溜まっている書類を、期日ごとに見やすいように纏め上げ、近頃は私の護衛の任のスケジュールも色々と調整して貰っていた。
彼は実に秘書としては良くやってくれていて、私としても惜しいとは思いつつも、実は近々人事異動を考えている。
彼とは入団経緯が経緯である為に……。

先日は貴婦人等の親睦会なるもので妻は色々な情報を入手して来ていた様だが、また体調が更に安定すれば参加すると言っていた。
今回の親睦会では更なる大きな話題事があった為に、プロムウェザー男爵夫人の話は一旦は終息を見せたようだが、相手は噂好きの奥方連中だ。おそらく暫くは話題にものぼり続ける事だろう。
別に私にとっては過去の事だし既に妻の信頼を取り戻した今、気にすべき事でもないのかもしれないが、婦人との関係が過去にあった以上、彼を傍に置く事は得策とは思えない。
実は彼は例の……妻との離婚話にまで発展してしまった元マゼレーゼ・プロムウェザー男爵夫人の紹介で入団した者だ。
遠縁の者の息子が騎士に憧れているからと言う事で最初は従騎士として雇い入れたのだが、剣術においてその才能を見い出せず、結局私が団長になった事を期に、秘書として来て貰った。
元々几帳面な性格である種の拘りがあるのか固執した考えを拭いきる事が出来ない様で、騎士としては柔軟性に欠きその才を認められなかった。だが提出文の才に長けていた事からこちらの方ならば、とりあえずこのまま正騎士にはなれなくとも騎士団に身を置く事は可能だと思っての判断だったのだが、蓋を開けてみれば事務的能力にも長けおり、スケジュール管理も今は全てを任せてある。
だが、本人曰くまだ騎士になる夢を諦めきれずにいるらしく、そこが些か難しい……。

それに最初は何の疑いも無しに提出された入団記録を信じていたが、傍に置いてみれば性格と言うか気質的なものが婦人に似た所が幾つかみられ、気になって内務省に提出されている正式なものを問い合わせてみれば、遠縁所か夫人の実姉の子、つまり甥と言う事になっていた。
私としては夫人との関係を絶った今、これ以上傍に置いておく訳には行かないと言う判断に至ったのだが、秘書を持てるのは騎士団では団長クラス以上のみに与えられた権限で他には持てない。
一応他の団長にも当たってはみるが、それは些か難しい気がしている……。
かと言ってまた従騎士に戻すと言うのも些か戸惑われる。
これも黙っていれば簡単に妻の耳に入る事でも無いのだろうが、何時どのタイミングでこの話が妻の許に入るのかは分らない。
今すぐは夫人等の親睦会に顔を出す事も無いだろうが、安定期に入れば如何やら行く気でいるらしい……。

「やっぱり、知ったら良い気はしないよなぁ……」

「どの件でしょうか?」

「いや、何でも無い」

思っていた事をつい口にしてしまったようだが、やはり常識的にそれは無いと思っている。



「お帰りなさいませ、旦那様ッ」

玄関先で執事と話している事に気付いた妻が、弾んだ声を発した。

「ああ、そこで良いッ。そのまま、動くな!」

帰宅を待ちわびてくれていたのだろう。私の姿を見るなり身を乗り出そうとする姿を目にし、慌てて静止した。

「分かっています。飛びついたりしませんから大丈夫です」

「そうか?」

私は妻の傍まで駆け寄ると、優しく抱きしめた。

「ただいま、シルビア、変わりは無かったか?」

「はい、旦那様」

軽く帰宅の口づけを交した。
ああ、落ち着く。大好きな妻の匂いだ。

「食事は如何だ? 食べられているか? 湯にはもう入ったようだが……」

妻の身体からは、好んで良く使っているローズオイルの香りがした。

「はい、お先に入らせて頂きましたが、夕食はまだ……」

「まだ食べていなかったのか?!」

「はい……。だって私一人では食事も味気ないですし、食べていてもし旦那様がお戻りになったら嫌でしたから。絶対に、もう少し待てば良かったと思うに決まっていますもの」

「すまない、遅くなると言う連絡を入れれば良かったな」

「いえ、私の為に色々とご無理をなさって下さっていたのは分かっていますから。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「いや、あれは私が勝手にやった事だから……。それに残って政務を熟していたとしても、気になって進まなかっただろうし」

「ならば相子ですわね」

「次から、遅くなると連絡を入れるから、私を待つ事はせずに食事をするように」

「え――っ」

「腹の子の為だ。言う事を聞きなさい!」

「……はい、旦那様」

少しだけ頬を膨らませつつも、しぶしぶ認める妻の仕草もまた可愛い。
帰宅し、愛しい妻の顔さえ見られれば、今の私は満足だ。

結婚してからも女と切れる事など全く無なかったグレンには、今の私の感情を話した所で、所詮理解して貰えるとは思えない。
ならば近づかないに限る!

多くの難題に頭を悩ませながら、今はただ、妻との一時を楽しもうと心に決めた。

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~ Comment ~

NoTitle 

とりあえず、旦那も気を遣っているようですね~~。
こういうときの旦那はどうすればいいか分からないですから、困惑するのが男の心理なんですよね。妊娠は女性しかできないこと。
私は男性視点でしか描けませんでしたけど、ぜひとも涼音さん視点でも描いてほしいですね。
(*´▽`*)

LandM 様 

今晩は。
周囲に経験者が居なかったら、本当に何していいか全く分からないですよね。
その点こちらは執事や侍女もいるので色々知ってるものに教えてはもらえますが、悪阻は個人差もあるし、情報としてはある程度得ているんでしょうが、旦那様は心配で仕方がないんですよね。
何もなく生まれてくることもありますが、一度危なかったですしね。
視点変えちょこちょこしてますので、またお楽しみ頂ければと思います。

いつもコメント有難うございます。
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