ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《183.念 願3》(アレク視点)

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祖父君は封を切り、封書の中身を見つめたまま固まっていた。
額から一筋の汗が流れ落ちている。その事からも緊張感がどれだけのものかが推察出来る。
祖父君の周囲には何処か張りつめた空気が漂い、誰の介入も許さない、そこは祖父君だけの空間のように感じられていた。
祖父君がゴクリと唾を飲み込む。
こちらもつられて、つい息をのんで詰めていた。
だがそこに、いとも簡単にその空間を打ち破る主が現れた。

「あら、ご覧になりませんの?」

「みっ、見る! 今開けるから黙っていろ!」

背後からの声に一瞬ビクリと肩を震わせながら、何処か表情の硬い祖父君の姿。
夫人に見せる何処か砕けた反応に、思いがけず頬が緩んだ。

「何が書かれてあるのでしょうね。私、とっても楽しみですわ」

「たっ、大したことはないさ。そう急かすな。いいか? 本当に、あっ、開けるからなッ」

「ふっふっ。はい、ぞうぞ」

祖父君の後方から覗き込むように寄りかかる夫人の余裕を浮かべる柔らかな笑みとその眼差しが、何処かマリーの姿と重なる。
髪の色も違うし別にマリーと夫人は外見が良く似ていると言う感じではないのだが、何処となく漂う雰囲気がとても良く似ているのだと、今更ながらに気付かされた。
成程、祖父君がマリーを溺愛する気持ちにも頷ける。
確かに夫人も可愛い。そう感じたが……。

「んっ?」

私を見つめ、マリーが如何かしたのかとでも訪ねた気に小首を傾げた。

「いや、何でもない。マリーの方が可愛いよ」

「やだ、如何したのよアレクったら」

そう告げ、みるみるうちに顔が真っ赤に染まって行くマリーの方が数百倍も可愛いと自覚し、その肩を引き寄せた。

年を重ねても今も変わらず仲の良さそうな二人の関係性を微笑ましく思う。
少し気が早いが、私たちも何れ年老いた時、こうやっていつまでも寄り添えるような夫婦になりたいと漠然と思った。

夫人の言葉に促され、意を決したのかようやく封書から書類を引き出した祖父君。
見開き、その内容を確認すると、何処か安堵するような大きなため息をついた。

「はあーー……っ」

「あら、『ロナルド・セオン・ドワイヤルに関する調査報告書』ですって。 残念だわ」

残念とは?……。
夫人は封書の中身を、本当に何と思っていたのだろうか?

「けれど、確かにこれは大切なものだわね。私たちオセアドから見聞きした彼の姿しか知りませんもの」

「そうだな……」

互いに頷き合いながらもそこに至るまでの二人のあまりにも両極端な反応に、思わず苦笑いが零れるが、それが何処か微笑ましくも感じられるから不思議だ。


書類の内容は、最初にロナルドの簡単な経歴が記されていた。
彼は留学中、隣国ステガルドの理学修士館に2年間籍を置き、鉱物学についての修士課程を終えると言う珍しい経歴を持っていた。
隣国ステガルドは我が国を含む多くの国々から鉱石を輸入して財をなしている国の一つ。
教育の一環として、理学を学び鉱物の研究に携わる者も、我が国よりもかなり多く育っている。
わが国では鉱物を輸出はしているものの、そういった技能者は少ない。
貴族といえども跡取りでない次男ともなれば、爵位を継ぐことはままならない。
となれば自国において、まだまだ研究者の少ない理学、それも鉱物学に目を付け、それを学び財を得ようと考えるのは、賢い選択肢だったと言っても良いだろう。
そこは最初書類を目にした時、ロナルドについて唯一感心させられた事だった。
成績もかなり優秀で、こちらに戻ってからも、最初の頃は方々の鉱石の採掘現場へ出向き表向き、国に貢献しているようにも見受けられていたと言う。

「これは大したものだな……。こういう者が我が家の跡取りになってくれれば、確かに理想的ではあるな」

「あなた!」

学に感心し、思わず口を滑らせた祖父君を夫人が諫める。 

「あっ、いや……。確かにオセアドがマリエッタに黙って話を強制的に進めたと言うのならば、それはあ奴が悪い。だが、恩義のある家の息子と言うではないか。おまけに次男、オセアドが彼を押すのも確かに領主としては頷ける所なのだぞ」

祖父君のその声を耳にした途端、しばらく二人の動向を静寂のままに見守り続けていたマリーが、眉を吊り上げその場で立ち上がった。

「お爺様がロナルドと私の話を蒸し返す気なら、私、今直ぐここを出ていくわ!」

「まっ、マリエッタ!!」

「大丈夫だから落ち着きなさいマリエッタ。お爺様は貴女の意に添わぬ結婚話を、決して無理やり押し付けたりなさらないから。そうですわよね。あなた」

「あっ、ああ。ただ、有望な青年だなあと感心しただけなのだ。うん」

ロナルドが、有望な青年?
それは続く行動調査の報告書に目を通してからも、言える言葉だろうか。

「男爵、次もご覧ください」

「ああ、そうだな」

男爵が続いてもう一枚用紙を捲る。
途端、少しその表情が硬くなった。

「……マリエッタ以外にも、求婚相手が幾人も居たのか?」

「そのようですね。帰国してからだけでも6件。通常貴族の家では後継ぎが先に嫁を娶るものです。それも彼の場合は双子。ですが彼が行動を起こし始めたのが今から3年前の二十歳の時ですから年齢からするとかなり早い婚活になります。元から婿養子先を狙っていたと言うのは間違いないでしょう。ですが婿養子先と言うのは鉱石の採掘権を持つ領主宅の特権と言うものではありません。その家名欄を見て、何かお気づきになりませんか?」

私の言葉に祖父君は食い入るように調査書を見入る。そして次の瞬間。

「皆……我がマニエール家同じと地層を持つ鉱石の輸出領主ではないか」

「ご名答です。では、最近我が国の国宝石であるアクアローズが他国に秘密裏な形で流出されていると言う噂がある事を、男爵は聞いたことが?」

「勿論、知っている。国の一大事だからな」

「それについては、今まで知られていませんでしたが、ある種の鉱石にも微量ですがアクアローズの原石が含まれていると言う可能性も示唆出来ぬという見解に陥っておりまして、実は現在鉱石の輸出と国内買取についても新たに見直し基準を改める準備をしている段階なのです。ですが、悪質にもその事に早く気付きながらも内々に今まで諸外国に流出する手助けをしていた者が居たという事が先ごろ分かりまして、今その調査も始められている所なのです」

「という事は、我がマニエール家の鉱石も、ともすれば国の買取となり収入が安定する可能性も?」

「勿論です。可能性は否定できません。既に調査は最終段階まで進んでおりますので最終決定がなされれば、国よりマニエール家に対してもその報告がなされると思います」

「お前は、その詳細を知っているのか?」

「勿論です。ですが現段階では何を聞かれてもお答えできません」

「……だろうな」

「ただ……。ロナルド氏の次の資産についての調査書をご覧ください」

私の言葉に従い、祖父君は更にもう1枚用紙を捲る。

「ッ!! 凄いな……。何だ? この額は……いったい……」

続く資産についての調査書に書かれているロナルドの現段階での個人資産は、マニエール家に国より支払われる十年間の領地の管理費額をはるかに上回るものだった。

「先日、彼の現段階での資産の計上を調べてみたのですが、そちらの報告書と桁がかなり違うようなのです」

「何だと!?」

祖父君が、驚きに満ちた声をあげる。

「彼の、今なお続けられている月に数度のステガルドへの出国。どうやらそちらでの計上利益の報告漏れがあったようなのですが、この金額については現在調査の目が向けられているとか居ないとか?」

「おいッ!」

祖父君から焦りの色が見え隠れする。

「マリエッタ嬢との婚約申請提出から三月以上。それが受理されたと言う正式なる報告が未だになされないのは何故なのか? 噂では、私が裏で工作をしていると言う話もあるようですが、そのような姑息な真似をする必要すら私は無いと思っているのですがね。その事につきまして、男爵はどの様に思われておいでですか?」

「それは……。まさか……、そんな事が? いや、あり得ないッ!」

みるみる内に、表情が青白くなって行く祖父君の姿。

「お爺様!?」

「あなた? しっかりなさって!?」

項垂れ、力なく頭を抱える祖父君の姿に、マリーも駆けよると、優しく寄り添った。

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なっ、何とか……書き直せました。
今回、まさかまさかのデータ消失につき、更新がかなり遅れてしまい申し訳ありませんでした。

話の流れは変わっていませんが、書いた内容がかなり失ったデータと異なると言う。。。
失ったデータの中には、お婆様もマリエッタも出て来ていませんでした。そちらではリレントが出て来ていたのですが、お婆様の登場で彼の出番が遠のいてしまったと言う(笑)
今まで何度かデータを失ったことはありますが、1話分まるっと失くしたのは多分初めてです。
もうこういう経験はしたくないので、まさかの事態に備える術もまだ見い出せずにいますが、少しでも被害が少なくなるように今後は気を付けて、とにかくこまめな保存を心がけたいと思います。

もう、本当に本当にこういう経験だけはしたくないですW
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~ Comment ~

NoTitle 

おお、一気に盛り返しましたね。
凄い頑張りですね。
敬服します。
しかし、アレクとマリーの色ボケもすごいですけど、
その周りも色々動いていますね~~。

LandM 様 

こちにらにも有難うございます。

今まで色々と言われてきたアレクでしたがやっと盛り返し実現。
私はこの場面をずっと内に秘めて書いていたので、色々言われてもアレクのヘタレ発言とか、ヒロインが可哀そう発言も今まで別サイトのコメであったりしましたが、それをやんわりと否定してきた次第でした。
もうアレクの思考内での、マリーに対する溺愛は習慣なので仕方ないですね~(笑)

これでやっとパウウェル達の調査してる件とも重なって来るので本当のラストが見えて来るかな~と。
本当にそろそろ終わらせなきゃなので、ラストに向けて頑張ります^^/

いつもコメント有難うございます。
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