信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第6話

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戻った義父母の許で、妻ははしゃぎまわっていた。

「ねえ、聞いております? お母様ッ! 殿下が、この子が女の子だったら妃に迎えたいと仰って下さったの! 私の娘がついに本当の王子様に迎えられるのよ、なんて素敵な事なんでしょう! 」

「まあ、それは喜ばしいお話ね。私も胸が弾む思いだわ。けれど少し落ち着きなさい、シルビア。あちらで殿方が複雑なお顔をなさっているわ」

「まあ!」

手を取り合い妻と喜びを分かち合う義母君とは対照的に、私は義父君と顔を見合わせると、互いに複雑な表情を覗かせながら溜息をついていた。

駄目だ、妻のテンションに全くついていけない……。

と言うか、生まれる前から娘の誕生を喜べないとぱ、なんと言う不遇なのだろうか?

妻の懐妊が分かった時、色々あって心底妻の身体と腹の子を私は心配した。
それがどうにか無事だと言う事が分り、最近やっと心身ともに随分と落ち着いて来られるようになって来たと言う状況だった。
帰宅後は、妻と共に子供の将来について語る事もあった。
妻は私に良く似た男児が良いと言っていた。
私は妻が産んでくれる子ならば、元気であれば男女など関係ないと思っていた。
男児ならば、我が家の跡継ぎとなるし、幼い頃から剣を握らせ一緒に鍛錬するのも楽しいだろうと漠然と思い描いていた。
女児ならば、もし妻そっくであったなら、おそらく私は目の中に入れても痛くない程可愛がるであろう事が推察できた。
勿論娘に対し、可愛いから一生嫁に出す気が無いだとか、そんな親のエゴを押し付けるつもりは毛頭ない。
いつかそれなりの信用のおける者を見つけ出し、娘には婚期に関係なく聡明な者を見つけてやろうとは漠然と考えていた。
かつての私のように女に乱れる事も無く、娘だけを一生涯愛し続けてくれるような聡明な相手を……。
浮気などしようものならそれこそ私が乗り込んで行って……等と思っていたのだが、相手が王太子殿下ともなればその様な事があったとしても、私が口を挟める訳も無く、浮気をされた所で涙を呑むしか他ないのだ。そうなれば、娘が不憫だ……。

「絶対に……、王家になど嫁がせるものか!」

二つ目のため息をついた後、口から零れ出た言葉に、義父君も傍で頷いた。

「同感だ。可愛い孫娘と会う事もままならなくなるような所へ等、嫁がせられないッ」

「義父君……」

「そなたに……いや、これからは同士だ。息子として認めてやろう。スタンベルク」

元々この結婚は、私からしてみれば義父君から強制的に勧められたものだったのだが、義父は私に対し、ずっと長い間何処か他人行儀だった。
おそらくは、私の今までの行いを知っていたからなのだろうが、この所の我等の仲睦まじい姿に加え、娘よりも自分寄りの考えを持つ私の想いに賛同し、義父君が手を差し伸べてくれた。
私達は初めて抱き合い、固い握手を交わした。


「ダメです、旦那様ッ! この子は絶対に白馬に乗った王子様のお妃になるんです!」

私達の様子に気付いた妻が、間に割って入って来た。

この期に及んでまだ王子様に対するイメージが膨らんでいるのか?妻は……。

その事を今まではとても可愛く思っていた筈なのに、何故だか今は少しだけ気分が滅入る。

「残念だったな、シルビア。王太子殿下の愛馬のサンテクロスは漆黒に額と爪先だけ白い黒馬だ」

「えーっ、白馬にして下さい、旦那様ッ」

「知るか!」

思いがけず、口から零れ出た自らの言葉にハッとした。

「旦那様が冷たいですぅー」

「あっ、いや、サンテクロスは3年前に贈られたばかりの馬だから、まだ若い馬だし早々には変わらないと思うぞ」

慌てて言葉を付け足した。

だが私は、何故これ程までに妻に対しイラついているのか?


「王子様は絶対白馬なのにぃ」

「…………」

……分かってしまった……。
私はきっと、妻にとっての王子様が私から本当の王子である殿下に取って代わられた事が面白くないのだ。

「無理を言うな、シルビア。さあ帰るぞ。約束だ。ソフィア、シルビアを頼む」

「ええ、あなた。さあ、行きましょう、シルビア」

「あん、旦那様ぁ」

流石に義父君は抜けられないからと、義母君が妻を連れて屋敷へ戻ってくれる事となった。

「済まないシルビア、私ももう時間が無い。職務に戻らないと……。お願いします、お義母君」

「ええ、任せてちょうだい。さっ、シルビア行きましょう。無理をしてお腹の子に触ったら、王子様のもとへ嫁げなくなるわよ」

「…………」

娘が娘なら、母もやっぱり母だった。

「えーっ、それは嫌ですぅ。……旦那様、早く帰って来て下さいね」

「今日はおそらく無理だ。遅くなる。先に休んでなさい」

「寂しいですぅ……」

「夜更かしは、お腹の子に触るから……」

「はい、旦那様……」

妻と軽い抱擁を交わし口づけると、私は妻を馬車まで見送った。


その後職務へ戻り、その日全ての任務が完了したのは午前3時を回った頃だった。
流石に今日は疲れた。だが、直ぐには何故か帰りたくない気分だった。
おそらく寝ているだろうとは思うが、もし妻が起きていて、あのテンションで娘の妃問題を語られるのは苦痛でしかないと思った。

「素面では帰れないか……」

少し酒でもひっかけて勢いをつけて帰るかと、思ってしまったのが不味かったのか?

「団長、お疲れ様でした。俺達これから一杯ひっかけて帰ろうって話になってるんですが、団長も明日は午後からですよね。一緒に如何ですか?」

「そうだな……、たまには行くか」

部下に誘われて、独身時代に良く通っていた酒場へと顔を出してみれば、そこには奴が待っていた。

「おう、スタン待ってたぞ。お前も明日は午後からだってな。まあ、一緒に飲もうぜ」

「…………」

「さあ、団長もそんな所に突っ立ってないで座って下さいよ」

「ああ、そうだな……」

奴の顔を見た時、私は部下の誘いに乗った事を酷く後悔した。

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~ Comment ~

NoTitle 

お、新しいの。
最近忙しそうなので、
作品見れなくて残念にしておりました。

やはり涼音さん小説を読まないと!!


それにしても、確かに、
産まれる前から婚約するというのも大変ですね。
子育てをどうするかもありますし。
母体にも影響しそうな。。。
( ̄~ ̄;)

LandM様 

今晩は。
最近仕事でもバタバタしていて中々落ち着けずにいたりなのですが、嬉しいお言葉有難うございます^^/

この設定、最初のプロットには無かったのですが、書いていていきなり飛び込んできました。
そしてそこから話が膨らんでいて、秘かに次世代編を少し書いていたり~。(書き始めだけでまだ全然作業が進んでないんですが、その内仕上がったらいつか本編終了後UPしたいと思ってます)

実はこれ以上に母体に悪い話がこの後待っています(笑)
題名が題名なので、そういう流れのお話になって行くと言う。。。
子育てについては子供の性格などもあるのでまあ色々と。シルビアが超浮かれ気味ですが、これが今後におけるすべての発端となって行くと言う^^;
聞き続きお楽しみ頂ければ幸いです。

いつもコメント有難うございます^^/
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