パウリンの娘

パウリンの娘《第15章3》

 ←パウリンの娘《第15章2》 →パウリンの娘《第15章4》
ハビロードは騎士時代警護の関係などで頻繁には家へ帰れず城内にある騎士専用の宿舎に泊まり込む事が多かった。
家庭を持っていたので週に2日は、隣町にある自宅へ戻っていた。
ある日、支払いの遅れた給金を受け取ると急いで家族の待つ自宅へ戻った。
しかし、そこに待っていたのは傷だらけで床に倒れ冷たくなった妻と、その腕に抱きかかえられた幼い息子の姿だった。
息子は微かに息があり、急いで医師に診せたが、衰弱が酷く結局助からなかった。
近所の者から税の取り立てに来ていた者に殴る蹴るの暴行を受けていた事を聞かされた。直ぐに領主宅へ乗り込んだが領主は知らぬ存ぜぬで取り次いでも貰えなかった。
税の取立ては各領主の管轄の許にあり、我王は取立てさえ出来れば手段は選ばずとも良いと言っていたらしい。
手段を選ばずとも良いと言えども、人としてして良い事と悪い事がある。
だが、その人道を我王に問い正すのが無理である事も分かっている。
成す術の無いハビロードは家族を弔うと、その足で宿舎に戻った。
そして、我王暗殺を決意した!
ハビロードの異変に気づいたシドは、直ぐに調べ事の詳細をゼロに報告した。
不審な動きで王宮内の様子を探るハビロードに気付いたゼロは、ある日呼び出し問い正した。
ハビロードは我王を暗殺しようと様子を探っていた事をゼロの前で素直に認めた。
その潔い良い態度と、我王に対する嫌悪感はこれからゼロが行おうとする覇業に必要な人材であった。
加えて以前から才覚を認めていた事もあり、我王の為に失うには惜しい存在だと思った。
当時ゼロは王宮勤めをしながら、次の計画に向けて内密に行動を起こし始めた時だった。ハビロードを仲間に誘い、いつかお前の無念は晴らしてやると約束した。


「大丈夫ですか!?」

何も聞かずにローレライはそう言った。

「すみません・・・・取り乱して・・・・」

ローレライ以外の者はハビロードの事情も承知していたので、誰も今の出来事に声を荒げる者は居なかった。

「ハビ、お前の憤りは理解できる。お前には随分苦汁を強いてしまったが、やっと解決の糸口が見つかったのだ」

そう告げゼロはローレライを見つめた。

「何か苦しい事情があるのね。どれだけ貴方のお役に立てるかは分らないけれど、私がパウリンを持って生まれたのはサザーランド国が滅びの道を歩んでいるからだとザビーネ様から知らされました。今までの王政を終わらせ新王を導く為に」

ハビロードは武者震いし、好機の到来を予感した。

「だからか? 特別な運命に導いてくれるから仔馬を探しているとあの時言っていたのか?」

皆が呆然とする中でフリードルが一人落ち着き、そう告げた。

ローレライは自らのパウリンを取り出した。

「そう。ドレアスを探して行くその中で私はパウリンに映し出される新王となるべき人物を探していたの。そしてついに出会ったわ。パウリンに映し出される運命の婚約者、ゼロに」

「そう言う事だったのか!?」

ある程度の事情を承知していたシドが、なぁ~だと言いたげに呟いた。

「黙っていてすまん」

「そんな事なら誰も異議を唱える者は居ないだろ。元々ブラックナイトの中にはわざわざザンゾール公に頼まずともお前に王座について貰いたいと思っていた者は多いと思うぞ」

「そうですよ。私も大賛成です!」

「貴方の許だからこそ私は今まで耐え忍び付いて来られたのです。願っても無い事です」

「新王として迎える事が出来るなんて夢の様です!」

次々と皆から歓喜の声が上がった。

「では、お前達にはブラックナイト解散後も私の傍で重臣として働いて貰うからな。覚悟しておけよ」

『はっ!』

皆はその場で傅き、互いに顔を見合わせると剣を抜き高々と掲げた。
新王となるアイスラント・ゼロード・フォン・オードラルに新たに忠誠を誓った。

良かったらポチッとお願い致します^^

にほんブログ村


総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【パウリンの娘《第15章2》】へ
  • 【パウリンの娘《第15章4》】へ

~ Comment ~

NoTitle 

歴史と国を抱えるプレッシャーが徐々に圧し掛かってきていますね。。。。出生や生活環境で将来が決まってしまうのはある意味、将来を悩まないですむ幸運でもありますが、それ以外の可能性を決めれない不運でもありますね。

LandM 様 

そうですね。現時点での、特にゼロとローレライに置かれているプレッシャーはかなりのものだと思います。
敷かれたレールを走る事に満足できなかったからある意味反乱まがいな行動をしているゼロと運命を受け入れひたすら走るローレライ。
背いた筈の運命が、やがて自らの手の中に入ろうとしているなんてゼロとしては不本意でしょうが、彼らの場合根本的な事は自分の求めるものに辿り着けると言う点ではある意味幸せな方だと思います。
世襲制が世の常の状況に育ったからこそこういう考えらに落ち着くのでしょうね。
それを幸せと捉えるか不運と捉えるかは本人次第ですから。

いつも有り難うございます。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【パウリンの娘《第15章2》】へ
  • 【パウリンの娘《第15章4》】へ