ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《189.突 入》(パウウェル視点)

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公になったロナルド・セオン・ドワイヤルの表向き罪状は、隣国シュテガルドにおいて留学時より行われていた不正所得にる悪質な隠蔽によるものとした。
裏で蠢く未解決事件の真相を暴く為には、奴を真の理由で拘束するにはまだ早い。
こちらが囮取引を持ち掛けたシュテガルトの輸入業者に視察させ、様子を探りながら奴の今まで巧妙な手口を割らせる必要があった。
その為、当初は視察まで奴を泳がせるつもりだったのだが、どうやら長期にわたる監視体制に危機感を覚えたのか、ここに来て不審な行動をしていると言う報告が上がって来た。
諸々の事情を知っているであろう奴に、今ここで逃げられる訳にはいかない!
何処かに鉱石の不正輸出に関わる密約的書類も存在している可能性もある。
危機感を覚え処分されるのも不味い事から、ならばその前に過去の不正を理由に引き釣り出し、拘束する事こそが現段階における最善だとした我等は、早々に命令書を申請することにした。
決して、悪友の幸せの為に、等と言う甘い考えは無い。

我がアクアリリス国では近年、国益となる人材育成に力を入れている。
貢献する留学者には特別奨学金が支給されると言う制度が存在し、一定の資格を取得し帰国後、国の求める職に就くことを条件とするものだ。
学費、留学時にかかる衣食住全てにおいての経費を国が全面的に支援するもので、奴の場合通っていた学部長の強い推薦で、将来的に理学分野における鉱物の学位を3つ以上取得する事を条件に、この制度を利用し留学した。
特別奨学金を受給者する者は、学業に勤しむ事を強く求められる為、留学中に特別な所得を得る行いも禁じられている。
その為、学力向上の為に必要と認められた経費加算についても追加申請し、要件を満たせば更なる助成金も支給されるようになっている。
留学生には勤勉な者が多く、この制度を利用している者は現在においても多くいる。
この件に関しては今まで問題が生じた事が全く無かった事から、申請も書類確認だけで難なく処理され支給されていたようだが、奴のおかげで今後の審査が更に厳しくなっていくであろう事に、疑う余地は無い。
だが、奴は求められた学位を全て取得して帰国しており、帰国後やがてはその道のスペシャリストとして国へと貢献し、更なる飛躍をしてくれる人材へと育ってくれるのであろうと思われていた。
だが、事実は異なっていた。
あろう事かロナルド・セオン・ドワイヤルは国の宝とされているアクアローズを不正に輸出する為の抜け道を見つけ出し、横流しに関与してしまったのだ。
始まりは留学先での女性関係からで、おそらく間違いはないだろう。
これが留学以前から行動だったならば、かなりの策士だ。
奴はシュテガルドでの密売に関する情報を得る為に、夜な夜なある店に通っていた。
そこで数人の女性と出会い、深い関係を持ちながら利用して行く事となる。
その中の一人が現在こちらの協力者となってくれている鉱石王して名高いブラッド・バーンの当時秘書をしていた女だ。
近づいたのが奴からだった事に間違いはないが、現段階において横流しを提示したのがバーン側なのか、或いはロナルドからなのかはまだ分かっていない。
だが、この件に関して奴が黒であることだけは確かな事だった。

「――よって、申請中であるマニエール男爵令嬢との婚約は正式に破棄。ご子息ロナルド・セオン・ドワイヤル氏を拘束致します」

我が側近ユリウスの言葉に、最初は好意的だったドワイヤル伯爵の態度が豹変する。

「……何だとぉ!?」

わなわなと手足が震え出し、今にもこちらへと食って掛かって来そうな鋭い眼つきだ。
目の前にいるのがあの口五月蠅い女と、小賢しい男の親かと思うと実の所非情に煩わしい……、いや、関わりたくないと言う気持ちにもなるが、今回は流石にそう言う訳にも行かない。

「こちらが正式な拘束命令書となります。ご子息は何方です?」

「……これは、罠だ……」

「はあ?」

「そうだ! 我が息子の才能をやっかんでいる奴らが、息子を陥れようとしているのだ!」

「…………」

「そもそもロナルドのような兄妹思いの優しい息子が……」

……兄妹思いは認めてやってもいいが、優しいはあり得ん。身勝手極まりない輩だ。


「心中お察し致しますが、そのような事を言われましても拘束命令書が下りました以上、私共には如何する事も出来ません。すみやかにご協力下さい」

「無理だ!」

ユリウスの優しい言葉も如何やら通じないらしい。
奴は現在政務騎士団の監視下にあるが、今現在外出していると言う報告はうけていない。
ならば間違いなく邸のどこかに隠れている筈。

「青騎士隊、突入準備!」

私の合図に青騎士隊が一歩前へ出る。

「かっ、勝手な真似は許さんぞ!」

「邪魔だてするのならば、公務執行妨害で貴方も連行しますよ、伯爵」

「な……っ!」

「何か言いましたか?」

「悪質な隠蔽等……、我が家は金に困っている貧乏貴族とは違う!そのような愚かな行いなどする道理がない! ロナルドは兄妹思いの優しい息子だ!」

息子が息子ならば、親も親だ。
そもそも金があるから隠蔽しないなど言う輩に限って、裏で工作をしている奴は多いものだ。
こういう考え方を持つ親の許で育つと、あのような子が育つのか?
自らの親が無頓着で良かったと、つくづく思った。

「話にならんな。青騎士隊、突入!」

マリエッタ嬢と奴の縁談話がなければ……、或いは我が悪友アレクシスとマリエッタ嬢が互いに深く恋に落ちなければ、奴の悪行がこれ程までに早く表舞台に出て暴かれることも無かったのかもしれない。
だが、二人は恋に落ちてしまった。
この事がロナルド・セオン・ドワイヤルにとって、一番の誤算だったのかもしれない。

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~ Comment ~

NoTitle 

ここまでくると言い訳もできませんね。
唯一出来ることと言えば、戦う・反乱を起こすということですが。
まあ、それがメインの話でもないですからね。
いつの時代でも没落というものはあるものですからね。
(-_-メ)

 LandM  様 

今日は。

流石に、もうそれは無理ですね。
知らぬは親ばかり。
でも、この親、子の事に関しては激甘と言うか今でいうクレーマータイプなんです。で爵位に執着もあるから上には媚びるタイプ。
結果身勝手な子供たちが育ってるって設定なんですが、一応夫人と長男は比較的真面な感じなんですが、出る機会があるとすれば次が最初で最後なんだろうけど、出すかは不明。
次男の不始末。それがドワイヤル家にとってまだ救われるか・も・しれない(笑

いつもコメント有難うございます。
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