信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第10話

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主術医であるマグノーマル医術師の邸へ訪れてから、4時間程が経過した。
どうやら薬は完全に抜け切ったようで、今は身体に痺れも発汗も無く、平穏に過ごせている。
手首の傷の痛みによる、不都合ささえ除けば……。

傷口の痛みは、縫った直後ほどでは無いが、今でもズクズクとした鈍痛は残っている。
使えないと言う訳ではないが、傷口が開いては不味いので、抜糸が済むまでは剣を持つ等と言う過激な動作は禁止されている。
この調子では暫くは通常腰元に下げている、重い剣は使えない。
片手で使用できなくもないが、上級者相手では両手でなくては太刀打ちできない。
少し早めに騎士団詰所へ赴き、軽くてもっと実用的な剣と差し替えなければならない。
出仕時刻まで後2時間程。そろそろ邸に一度戻り、妻に顔を出そうかと思っていた矢先、急ぎこちらに向い走って来る馬車の音が聞こえて来た。
何事かと思い窓から覗き見れば、それは良く見知った馬車だった。

まさかとは思うが、妻に何かあったのか!?

私は身の回りの物を手に取ると、そのまま外へと飛び出した。



我が邸の者と共に医術師を連れて邸に戻ってみれば、昨夜の姿とは全く異なる妻の姿がそこにあった。

朝食は、何時ものようにブティングに肉や野菜を付け合せてバランスよく食べたのだと言う。
普段と違う点は、今日は昨夜の疲れからか胃もたれ感が食前から多少あったらしく、量を多くは食べられなかったと言う。
まあしかし、そう言う事は時として往々にしてある事だとし、周囲もそれ程までに気にも留めていなかったと言う事だったのだが、その後先程、ティータイムを楽しんでいた時の事。
妻が大好きなケーキを一くち口に含んだ途端、急に吐き気をもよおしたのだと言う。

この様な事はこちらに来て今まで一度も無いらしく、食あたりも頭を過ったが、妻以外邸の者に不調者はいない。結局どのみち医術師の先生に来て頂こうと言う事になったのだそうだが、医術師の見解でもここは悪阻ではないかと言う事で話が落ち着いた。

妻の場合、月齢から言って悪阻は既にあっていてもおかしくない時期だった。
私も悪阻の存在は知っている。
だが、今まで妻には何の変調も無かったし、こういうものは個人差がかなりあるらしく、人によっては全く無い者も居ると聞く事から、もしかして妻は無いタイプなのかもしれないと思い安堵していたのだが、そう簡単なものでは無かったようだ。

「うっぐッ……、ぎもぢ……悪いデス……」

寝台に横になり、顔面蒼白となり横たわる妻の姿。

「シルビアッ、だっ、大丈夫か!?」

「申し訳ありません……旦那様……」

「ああ、良い。喋るなッ!」

側には侍女が、洗面具を持って待機している。

家の者の話によれば、妻は昨夜私の帰りをやはり待つと言い出し、明け方になり少しうとうとしていたが、殆ど眠っていない状況だったらしい。

「妊婦があまり無理をしてはいけませんな。睡眠不足は悪阻を誘発する傾向にあります」

「……申し訳……、ありません……うっぷ……」

「ああ、奥さまッ!」

「何とかならないのか!?」

妻の苦しげな姿は見るに堪えない。
出来る事ならば、なんとかしてやりたい……。
その思いが込み上げて来て、いっぱいになった。

「時を待つほかありません。おそらく一月もすれば症状はかなり改善されます」

「一月もかかるのか!?」

「平均的に見て、と言う事です。奥様の場合既に三月に入りますし、多くは二月の半ばから症状は出ますので、遅い方かと……。往々にして4か月になる頃には少しずつ落ち着きはじめ、5か月でと言う話しはあまり聞きません」

妊婦に悪阻がつきものだと言う知識はあったが、そのように長い間あるものだと言う事は全く知らなかった。

「食材は今後見直しし、考慮が必要となります。今までは食に対し何の支障も無いご様子でしたから、出来るだけ栄養価の高い物をと勧めてはおりましたが、悪阻の症状が現れた以上、それは改善を試みなくてはなりません。食べられるのならばと言う事が前提で、今後はそのように対応してください」

「食べられれば何でもいいのか?」

「はい。悪阻で何も食べれなくなると言う方もいらっしゃいますので、口に出来るものならば何でも構いません」

「……そんな事で、腹の子は育つものなのか?」

「今まで奥様に蓄積された栄養でこの月齢の胎児は育ちますので、極端な話、食べられなくても大きな問題はありません」

「だが、それでは妻が参ってしまわないか?」

「水分さえしっかりとれていれば大丈夫です」

「水分さえって……」

確かに戦場などで食料が無くなっても、水さえ工面できれば一月はしのげると言う話しは聞いた事があるが、女と男の体力には差があるし、とても妻にそのような事が出来るとも思えないッ。

「人によって食べられる食材は異なりますが、一般的に悪阻時に有効とされる食材と言うものがありますので、料理長にお話ししておきます」

「宜しくお願い致します」

私は深々と頭を下げると、医術師を見送った。


結局、医術師からは悪阻の症状が酷い時にと言う事で、薬湯を処方して貰ったが、これは1日に三度までしか服用できないらしい。出来れば食前に服用した方がより有効的だと言われたが……、これ程までに苦しんでいるのに、直ぐに飲ませる訳にはいかないのだろうか?

「シルビア……、大丈夫か? 薬湯を持ってくるか?」

「いいえ……、食前にします……。少しでも食べて、赤ちゃんが元気に育ってほしいですし……」

「っ………」

「旦那様?」

妻の言葉に、目頭が熱くなった。

妻が私の帰宅を待ち、これ程までに苦しい思いをしていた時に、私は一体何をしていたのか!?

「すまない……、シルビア……、すまない……っ」

「旦那様が、お悪いわけでは……」

私は妻の傍らに跪き、唯々許しの言葉を乞うていた。
何も知らない妻は、私の頭に手を伸ばすと、優しく髪を撫ぜてくれた……。

妻を裏切ったつもりはない。裏切るつもりも無いッ。
ならば逃げるべきでは無かったのだ!

グレンが来るかは分らない。
だが、奴とはもう一度きちんと……。今度は素面な状況で、話し合う必要があると思った。

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~ Comment ~

NoTitle 

うん。
こんな旦那様がいたらイイネ。
(´_ゝ`)
って展開ですけど。

こういう優しさで愛情って決まるんでしょうね。
いや、実際に本音として。


仲間由紀恵じゃないですけど、妊活中に浮気とかありますからね。
案外、旦那も気を遣うんだよな。。。
色々と。。。
( 一一)

LandM 様 

今日は^^
過去に何があろうと、結婚してからは、妻を溺愛する旦那様なので、こう言う優しさや愛情は、あって当たり前の設定です妻を^^

妊活中の浮気とか、妻側からしてみればありえないw
旦那側にもそれなりの主張があるのかもしれませんけれど、もう不信感がこのうえなく芽生え修復は無理w
浮気する前に悩みをせめて話してほしいと思うけど、人それぞれだからね~。

とにもかくにも、うちはハッピーエンド推進なので♪

いつもコメント有難うございます^^/
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