ファンシーの扉

オリジナルの王道恋愛ファンタジーを中心とした小説です。最後にはホッと出来る物語作りを目指しています。(R設定がある時は冒頭に記します。独自の判断でご注意ください) 尚、過去の作品については『◆ALL』をご覧頂きページの下の方にあります「Next」を押すと過去の作品まで全がご覧頂けます。作品のキーワード検索も『◆ALL』ページ左上よりご利用頂けます。

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第18話

信じても良いですか?旦那様ッ

結局その後マゼレーゼが大人しく男爵夫人の座に今まで収まったと言う事で、事態は急激に終息したに違いない事は推察できるが、何ともやるせない……。
以前は良く分からなかったが、親は我が子の為なら何でも出来る生き物だ。生まれる前ですらこんなに娘(仮)が心配で仕方がないと言うのに、愛する夫との間の……、それも生まれて間もない我が子を意に反して置いていく事となり、当時のマゼレーゼの想いはどれ程のものだった事か……。その心境には同情を禁じ得ない。

「マゼレーゼは男爵夫人になってからは、当初はただ息子の為だけに男爵に尽くそうと心に決めていたらしい。だが、結婚から1年もせずに男爵は他の幾多の女の下へとしばし通うようになってしまった。飽きたのならば開放して貰えないかと直ぐに離縁してくれるように直談判したらしいが、自らの行いが離縁のきっかけと言われるのは体裁が悪いからと認めては貰えなかったらしい。そこで男爵が告げたのはこうだ。『跡継ぎを儲けなければ離縁はしない。それまでは奉仕しろ』と……。男爵は3度目の結婚だが子には一度も恵まれてはいない。自らは認めてはいなかったようだが、状況的に見て問題はおそらく男爵の方にあったのだろう。その話を聞いてマゼレーゼは当初更に絶望したそうだ」

マゼレーゼが旦那以外の者と交わるようになったきっかけは、旦那のその言動以降からだと言う。旦那との数少ない情事の後で、少しでも効率よく妊娠に結びつくようにと多く者と関係して自らに子種を注ぎ込み、妊娠を誘発させるのが狙いだったと……。
子を儲ければ男爵から逃れられるという思いに駆られ、自分、若しくは男爵と同じ特徴色を持つ者を相手に選び、誰の子が生まれても男爵家の子として疑われぬようにと、関係を持つ相手は厳選していたらしい。
だが男の方の目的の多くは、都合のいい女との快楽だ。
出来れば情事を楽しむだけの存在の女との間になど、子を儲けるつもりは更々ない。
自身としては奉仕のつもりもあったが、快楽を求めていなかっとは言い切れない所はあった。それは男としての悲しい性だ。だがそれはマゼレーゼに限ることなく、そういう関係のあった婦人等との間でも一緒だった。だから避妊にはそれなりに気を付けていた。では事情を知らされて居たとして、子を成す為の協力をしただろうかと聞かれれば、それは否だ。自らの子を他人の子として育ててもらう言われはないし、自身の子をあのいまいましい男爵の息子に等断じてしたくは無いと当然思っただろう。それに誰彼構わず種をまき散らすような真似もしたくは無い。これは自身のプライドにも関わって来る問題だ。

だがマゼレーゼは結果として、我等のような男との関係を長々と重ねる事により、その内数人の……我らのような者に、情にも似た感情を抱くようになっていたようだ。最近では旦那との関係もほぼ無くなっていた状況下にありながら、だらだらとこのような関係を続けていたらしい。このような状況で妊娠すれば、即不貞を意味する事は本人も分かって居た筈だ。にも拘らずそれを止められなかったのは、既に離縁をする為ならば手段を選んでいられない精神状況だったのかもしれないと思うと、その事に不憫さを拭い切れない。不貞が明るみとなれば離縁は出来るだろうが、社会的地位も同時に失われ、加えてマゼレーゼの場合実家の家業や息子にもどのような影響が及ぼすかも分からない状況となる。結果として現在その状況下に置かれ、マゼレーゼはとりあえず実家に身を寄せていると言うが、そこもこのままずっと居られるとはおそらく思ってはいないだろう。そんな中での唯一の救いは、息子が我等の側に居る事で身の安全が保障されている事だと言う。

「実家に迷惑をかける事になるかもしれない事は気にしていたが、息子が一人立ちして護衛騎士団に身を置くようになってからは、我らとの関係がある限り、どんな状況になろうとも息子は我らが守ってくれるという安心感があったらしい。だからお前との関係が失われる事になって、実際は……、かなり動揺していた。お前と別れてから俺と会って最初の日に告げられたのは『何かあったら、あなたが守ってくれる?』と言う言葉だった……。最初は何のことか分からなかったが、やがて詳しい事情を話してくれた。その事からお前には息子を預けていると言う信愛もあったらしい事に気付いた。俺との関係もあったが、俺との関係はお前の比ではなかったと言う事だ。だからお前が居なくなった事で歯車が狂い始めた。お前の穴を埋めるように俺との距離を縮めようとしている感があった事には気づいていた。求められる事も以前より多くなっていたからな。会う回数もお前が結婚してからは増えていた。だが俺一人ではお前を失った穴は埋めることが出来なかったと言う事だ。結果として今回の事態に陥る事になったのだから」

告げられた真実は私に衝撃をもたらした。だが……。

「今更、そのような事を言われても、私には如何してやることも出来ない」

冷たいと言われるかもしれないが、今の私にはそれ以外の言葉は言いようが無い。
愛する妻を、これ以上苦しめる事だけはしたくないのだ。

「そんな事は分かっているさ! だがなッ……。いや、もういいや……」

大きなため息をつき、グレンが何処か諦めにも似た言葉を吐き出したものだから、これでやっと話に一先ずの決着がみられるのかと思い安堵しかけていたら、今度はソファーに座りずっと訝し気にずっとこちらの様子を伺い、かたずをのんでいた女が勢いよく立ち上がった。
そういえば、この女も一緒に居たんだった……。
最初は何処かいやいや来た感がぬぐい切れず、ずっと早く帰りたいオーラを全開に解き放ちながら神妙な態度を決め込んで大人しく座っていたのだが、何やら事は途中から、この女にとってただならぬ状況に突入してしまったようだ。

「馬鹿言わないで! 話が全然違うじゃない!!」

「あの話は、一つの提案事項だった。だが、今の状況を聞いていれば分かっただろう? もう無理だ。撤回させてもらう!」

「はあ?! あと少しだったのに馬鹿言わないでッ。貴方のせいで、全てが台無しじゃない!」

一体何が始まったのか?

「何故それが俺のせいになる?! 元はと言えば、お前が勝手に事を性急に進めすぎたからじゃないのか!?」

「何ですって! 私にそんな口を叩いても良いの?!」

「いや、それは……。良くは無い……。良くは無いが、此奴がここまで言い出したらもう無理だ」

「無理? 信じられないッ!!」

「おい……」

今度は女と痴話げんかか?! 全くもって忙しい奴だ。
それでもってこちらの声は、全く耳には届いていないようだ。

「おい、お前たちッ。いい加減にし……!!!」

仲介に入ろうとしたら、女にがっちりといきなり腕を掴まれた!

「女……。何をしているッ!」

「私のなんだから!」

「おい、グレン……、これは一体どういうことだ?!」

「すまん……。そいつと取引をしていた。マゼレーゼの腹の子を、引き取って貰う代わりに、お前との仲を仲介すると言う条件付きで……」

「……はあ?! お前……、いい加減にしろよッ!」
                         
私は少なからず苛立ちを覚えながら言葉を吐き捨てた。
グレンの軽はずみな行動には、呆れかえるばかりだッ。

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離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第17話 &お知らせ

信じても良いですか?旦那様ッ

グレンは大きく息を吐き出すと、重々しい口調で語り始めた。

「先頃までマゼレーゼの書類上の夫だったプロムヴェザー男爵は、こいつの実の父親を死に追いやったおそらくは張本人だ」

「何だと?! それに、過去に元夫人は……、結婚していたのか?」

「そうらしい。相手は幼馴染で長年ずっと恋人関係にあった男だ。我らと同じ剣の道を志す者で、従騎士となる以前から付き合っていたらしい。そしてその者が正騎士の称号を賜ると直ぐに式を挙げた。当時マゼレーゼは既に身ごもっていたからな」

「その子が、このモルダーと言う訳か?」

「そうだ。だが、我らもそうだったが、騎士になって直ぐと言う頃は色々と生活も不規則だし泊りも多いだろ? それを心配した夫が、落ち着くまでマゼレーゼを実家に預けていたそうだ」

「実家と言うのは?」

「プロムヴェザー男爵が領主として治めるローゲンフィールドだ。そこで実家は農奴を纏める長の地位を任されていたそうだ。当然、プロムヴェザー家との関わりは深い」

何となく、今回の不幸の背景見えてきた気がした。

「と言う事は、プロムヴェザー男爵とマゼレーゼは昔から面識があったと言う事だな」

「子供の頃だけだがな。マゼレーゼが13歳の時に、その幼馴染が王都で従騎士試験に合格してな、後を追うような形で13歳にして高養教育を学ぶためと銘打ち王都に出て来ていたそうだ。その後の再会は出産して一月ほどの時だ。夫を待ちながら実家に滞在していた頃にプロムヴェザー男爵から運悪く見初められてしまい、マゼレーゼの不幸が始まった」

プロムヴェザー男爵は既に70歳を目前にしてなお女好きと有名な御仁だ。
モルダーは現在17歳。50過ぎの男が成人して間もないそれも自らの領地を纏めてくれている者の一人の娘……、それも産後間もない若き人妻自らのものにしようとしたのか?!
全く持って酷い話だ!!

「半ば脅されるに近い形でプロムヴェザー男爵家に連れて行かれ、実家と息子と夫の安否を気遣っていた矢先、夫の死を知らされたそうだ。在籍期間は半年にも満たなかったようだが確かにその名は記されていた」

「死因は?」

「業務上の事故死。だが、おそらく殺されたのだと思う」

「理由は?」

「書類上は要護衛者を守っての事故死となっているが、その護衛者と言うのがプロムヴェザー男爵の甥だ。別に名も無い道楽息子で通常護衛等必要のない者なんだが、護衛者指名を名だしで外注要請があり、殆ど危険度が予測されなかった事からマゼレーゼの夫は当時一人で護衛に出向いている。だがそこで不自然にも物取りに襲われて殺された。そして護衛対象者のその甥は、全くの無傷だったそうだ。おかしくないか?!」

「確かにおかしいな」

まがりなりにも正騎士の名を持つ腕の男が殺される程の相手だと言うのに、その側に居た護衛対象者の甥が無傷と言うのは通常有り得ない。騎士殺しは大罪だ。私の知る限りこのような場合のケースは口封じの為に護衛対象者も殺されるのが通例だ。

「そしてマゼレーゼはその後、夫の喪も明けないうちから婚姻を強要され、挙句には領地で幼子の殺傷事件が多発していと言うようなことを仄めかされたそうだ。『貴女の息子となれば私にとっても息子だからな。そのような事が起こらないようにしてあげよう』と当時告げられたらしい。夫を殺されたばかりだ。冷静な判断など出来なかったのだろう。息子の命までも狙われているかもしれないと思ったマゼレーゼは、男爵の要望を受け入れる他なかったと……」

告げられた事実は、あまりにも想像を超えるものだった。

「それが事実なら、プロムヴェザー男爵は人間のクズだなッ」

以前から鼻に突く老人だと思っていたが、これ程だったとは……。

「結局夫の死によって晴れて独身となった娘を、息子を人質のように取る形で、半ば強制的に自らの妻にしたというのが、プロムヴェザー男爵夫人誕生の経緯だ」

「……本当に、酷い話だ……」

マゼレーゼと男爵の年の差は確か30歳以上。領主と領民の間での過去においての諍い事は今までも色々と耳にした事はあったが、これ程酷い話は聞いた事がなかった。
通常ならばこれだけの話ならば公になってもおかしくはない。だが、事故として片づけられた事が全てを物語っていた。
当時の護衛騎士団を纏めていたのは祖父の時代だ。だが、その時期と言えば祖父が丁度病に臥せっていた時期とも重なる。父が跡を継ぐまでの間に短期間だけだが、我が家とは別にその地位に就いた者が居た。多くの失態が周囲に知れ渡り、わずか在任期間一年にも満たずに退職を余儀なくされたが……。遠い記憶だからはっきりと現段階では確証は出来ない。だが、もしそう言う事なら時期も悪かったとしか言いようがない。が、何事であれ新人3年目までは二人一組の行動が義務付けられている騎士団で、それはゆゆしき失態だった。
確かその者は正式には勇退扱いになっていた筈だが、これはそれでは済まされない事態だ!
ともすれば、この事件には上層部まで絡んでいる事も考えられる。
今となっては遅すぎるだろうが、その経緯についても、いつか絶対に暴いてやりたいと痛切に思った。

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お知らせ(紹介) 『黎明の王女は愛に目覚める~精霊使いへの誓いのキス~/佐倉 紫』 好評発売中!

お知らせ&感謝

書籍の紹介です。

今月も、仲良くして頂いております同じラブファンタジー系の作品を多く書かれいるプロの作家さんで、こちらのサイトでもリンクを貼らせて頂いておりますプロ友「ベリー・ウィッシュな日々」の佐倉紫さんがロイヤルキス文庫様より2冊目となります『黎明の王女は愛に目覚める~精霊使いへの誓いのキス~』というタイトルの作品を発表されましたのでご紹介させて頂きます。
この作品で書籍11作品目となります。ネット配信の『ロゼリア姫は逃げられない。』KADOKAWA〈eロマンスロイヤル〉 を入れますと、既に12作品目。その活躍に目を瞠るばかりです。
新刊は先日、23日に発売になりました。

黎明の王女は愛に目覚める~精霊使いへの誓いのキス~
『黎明の王女は愛に目覚める~精霊使いへの誓いのキス~』著:佐倉紫 イラスト:蘭蒼史
ロイヤルキス文庫 / 文庫本(小説>恋愛) 2018年3月23日発売

<あらすじ>
ボスビア国の王女オリヴィアは、"精霊使い"の力を買われ、隣国オルタレルとの戦に駆り出される。だが、オルタレルの王太子アーヴィンに捕まり、力を弱めるために純潔を散らされてしまう。
その後も国民を守りたければ専属娼婦になれと抱かれる。猛った熱棒に貫かれる激しさと、それとは裏腹の優しいキスにときめくオリヴィア。
オリヴィアの清らかさにアーヴィンも気づき初めて……!?
国に尽くすオリヴィアとそれを見守るアーヴィンの恋の運命は……!? 極上ラブロマンス♥


この作品は完全書き下ろし作品となっております。
あらすじでは凄く俺様に見えるヒーローは、佐倉さん基準で行くと俺様だけど懐が広くて普通にいい奴だそうで、ヒロインは正統派の清純派ヒロインを目指したそうで、悲運な境遇にある王女が色々な困難に立ち向かい成長していくストーリーとなっているようです。
今回も美味しい要素盛り沢山で、とっても楽しそうなお話ですね。
ラブファンタジーをこよなく愛する佐倉さんの、完全新作書き下ろし作品。ご興味を持たれた方はネットや書店などでお目にしましたら是非一度手に取って頂ければと思います。

また公式サイトにて冒頭部分の試し読みが出来ます。
→ロイヤルキス文庫公式サイト


ネット購入はこちらから 
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【Amazon】  【楽天市場】  【honto】  【セブンネット】


以前の書籍紹介記事 
   ↓    ↓
『王家の秘密は受難の甘さ』
『シンデレラ・マリアージュ』
『白薔薇は束縛にふるえる』
『疑われたロイヤルウェディング』
『獰猛な王は花嫁を愛でる』
『愛されすぎて困ってます!?』
『 ロゼリア姫は逃げられない。』 (ネット配信)
『国王陛下は身代わり侍女を溺愛する』
『淫魔なわたしを愛してください! 』

佐倉さんの小説HPはこちら
     ↓    ↓
ベリー・ウィッシュの伝言


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パウリンに導かれて《第13章2》

パウリンに導かれて

ルシオンは想像もしていなかったローレライの反応に、呆気にとられた。

「……うれ……しい?」

あれだけパウリンを覘く事を怖がっていた妹が、覘いた途端に涙し、嬉しい等と呟くとは万分の一にも思ってもいなかったのだ。
妹のローレライはゼロに恋していた筈で、その気持ちに気付いてらはかなり悩んでもいた。
その者が相手でなければそんな反応はあり得ないと……。
しかし、目の前でパウリンを手にしながら涙ぐんでいるのは事実。
ならばその相手と言うのは!

「まさか……、映っている奴って……ゼロ……なのか!?」

ルシオンはにわかには信じられない出来事に、ゆっくりと言葉を口にする。
涙ながらに微笑を浮かべ小さく頷く妹に、急ぎ駆けより言葉を紡ぐ。
かける言葉は一つしか無かった。

「良かったな、レライ。本当に良かった……」

ルシオンは心からそう思っていた。
生まれた時よりある定めを受けた事で、今まで苦行を強いられてきた可愛い妹。
その妹がやっと共に歩める者を見出し、おまけに恋まで叶うのだ。こんなに嬉しいことは無い。
けれど心の何処かでその事を寂しいと思ってしまっているのも事実だった。

長い抱擁の後、直ぐに報告に行った方が良いと兄ルシオンに温かく励まされ、ローレライは小さく頷くと隣の部屋へと報告に向かった。


ゼロは自室に戻ると食事の席以外で、殆ど口にすることの無いワインを手にしていた。
自室に持ち込む事など滅多にはしないものだが、とても素面な状態でローレライの婚約者が誰であるかと言う結果を待ち続ける事が困難に思えたからだった。

「こんな事で、酒を頼るようになるとは……、もう末期だな」

苦笑いを浮かべながら再びボトルを手にし、グラスにワインを再び注ぎながら思わず言葉を口にしていた。

女がらみでゼロにこのような日が訪れる事を、誰が想像しただろうか?
調査報告に部屋を訪れたシドは、そのゼロの普段あり得ない姿を凝視した。
元々酒は強いのでいくら飲んでも醜態を見せる事は無いが、それでも一人でボトルを空ける程飲むのは珍しい。
既に2本空けている状況に、事はただ事ではないと理解した。

「……何があった?」

「……婚約者を、探していたんだ……。仔馬の件も皆、それに繋がっているらしい」

口にしているのが誰の事かは一目瞭然だった。

ああ、それでヤケ酒か!

当然と言えば、当然だが、今更ながらに己が気持ちに気付き動揺している友の姿にシドが微笑を浮かべた。

「何が可笑しい!?」

「いや、あまりにもお前らしくないからな。即断即決即実行がモットーのお前が、そんな事位で何故酒を煽ってるのかと思うとな。もう自分の気持ちには気付いてるんだろ? だったら何故さっさと行動に移さない?」

「何も無かったら既に言ってる。だが、昨夜の事で予定が狂った。もう少し落ち着いたらと思っていたら……」 

「それで、待っていたら今度はその様か!? ああ、情けない。これだから恋愛音痴の奴は……。って、ちょっと待て。何も無かったら既に言ってるって、今までは気付いて無かったと!?」

「悪いか」 

「なら、何時気付いた?」

「……昨夜」

「嘘だろう……」

あれだけ二人の世界作っておいて、今まで気付いて無かったと言うのはゼロらしいと言えばゼロらしいが、シドはこれで少し肩の荷が下りる気分だった。
とは言え、あの娘に突然婚約者と言う話は寝耳に水だった。

あの娘もゼロに気があるのではないかと思っていたからだ。

「それで、婚約者と言うのは?」

「……もう直ぐ、……分かる」

「何だ? その言い様。もしかして、相手はあの娘がまだ知らない奴なのか? だったら奪ってしまえよ! あの娘の気持ちは絶対にお前に向いてるってッ」

「出来る事ならばな……。だが、あいつの背負った運命は、そんな生半可のものでは無い。この国の運命がかかっている。私一人が足掻いたからと言って、如何こうできるものでは無い」

「……お前、何言ってるんだ??」

「後になれば分かる……」

何時になく慎重な上、何か奥歯に物でも挟まっているような言い様に、ゼロとあの娘が何かとてつも無い事に関わっているのではないかと言う事を理解する。
しかも、自分にすらにも話せない事とは一体何なのか?
その言い様に、シドは何か大きな歯車が動き出したのではないかという事を予測した。

今までの自分が知り得るゼロのどの姿とも違うその様に、シドはゼロの決意とも受け取れる強い意志を感じ取る。

まさか、ゼロはあの娘との事は終わらせるつもりなのか?
だとすれば、今後如何いった形で関わって行くつもりなのか?

「ではあの娘を、もう女として見る事は止めるんだな?」

「何を言ってる!? 私はあいつを女として見た事等、今まで一度もないぞ!」

ゼロは怪訝な表情を浮かべていた。

「マジかよぉ……」

ゼロの言っていることが、今回ばかりは全くもって理解できない……。

頭を抱え、シドがそう告げた時だった。
扉の外に何か気配を感じ、二人は互いに目配せし黙り込む。
そして、そっと扉に近付くと勢いよく開けた。
……しかし、そこには既に誰の姿も無かった。


ローレライは、ゼロの部屋の前まで行ったものの、思いがけず舞い戻ってしまっていた。
言い尽くせぬ思いを胸に秘め、勇気を振り絞り、扉の前に立った時だった。
中からシドらしき男と会話している声が微かに聞こえて来て……。
流石に今自身が告げようとしている事を、ゼロ以外の他の者に聞かれるのは戸惑われ、出直そうとその場を立ち去ろうとした時だった。
突如ゼロの荒げるような声が聞こえて来て、我が耳を疑う事となる。
おそらくゼロの言う『あいつ』と言う人物が自身である事に間違いはないだろう……。
言葉の意味は、自ずと理解出来た。
それはローレライにとって、衝撃となるものだった。
瞳に涙を浮かべながら、ローレライは瞬時にその場から立ち去ってしまう。
この時のローレライには、ゼロの真意など知る由も無かった……。

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離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第16話

ずっと心に決めていた

グレンは私から視線を反らすと、モルダーに目を向けていた。

「お前は実の両親の事を何処まで聞かされている? 我らの話を冷静に捉え、神妙な眼差しを向けている所を見ると、ある程度の事は知っていたのだろう?」

「……はい。7歳の時にある事がきっかけで、戸籍上の両親が実は養父母であると言う事を知りました。ある理由で一度死んだ事になった妹の子を、生後2か月の時に実子として迎え入れたのが私だと……」

「一度死んだ事にさせられたのか?!」

なんて姑息な奴なんだ!
プロムヴェザー男爵は、自身の女遊びは棚に上げて、体裁をかなり気にする者だと言う話は元男爵夫人から聞いていた。だから我らとの関係はいつも同じ契約を結んでいる別の夫人の屋敷や別邸等で行われることが常だった。外出の名目に仲の良いとされる夫人が絡めば夫の留守に頻繁に外出した所で屋敷の者達からも左程疑われることは無い。だから今回の出来事には屋敷の者達にとっては寝耳に水の話だったに違いない。結果として今回主不在中に起こってしまった夫以外の子を夫人が懐妊してしまったと言う不祥事に、長年勤めて来た執事は自ら職を辞したと言う。夫人とはそのまますぐに離縁の手続きが進められたそうだ。そして驚くべきは更にその一月後、男爵が自身にとって4人目となる妻を娶ったと言う事だ。その者は男爵のかつての愛人の一人ではないかとの噂だが、真実は定かではない。だが、今度の奥方もかなり若い者らしく、確かまだ成人して数年だろうとの事だ。既に式も盛大にとり行なわれており、最近の社交の場では夫人等の、噂話の種のひとつになっていると聞く。おそらく悪しき前妻との噂を封じる為に、敢て派手な祝事を開いたのだろうが、確か男爵は既に60を超えて居た筈。人の結婚に口を挟む気は無いが、本当によくやる……。
しかしモルダーがただの養子縁組ではなく、実子として姉が妹の子を戸籍に入れていたと言う経緯からすると、かつて男爵は体裁を取り繕うための手段を高じたことが考えられる。婚姻に至るまでの詳しい経緯は推測の範囲を超えないが、今回の夫人には前夫人のような、不幸な強行手段が行われていない事を祈るばかりだ。

「実の両親ではないと聞かされた当初は、本当にショックでした。ですが私は本当に今の両親には良くして貰っていました。ですから本当の両親を探す気は有りませんでした。ですが成長するにつれ段々とその事が気になり始めたのです。ある日勇気を振り絞って聞いてみましたが簡単には教えてはくれませんでした。何度聞いてもそれは同じで……、ですが13歳の時に、領主様の護衛として訪れた、ある騎士の姿に私が見惚れてしまい、将来護衛騎士になりたいから王都に出たいと申しした所『血は抗えないな……』と呟いて、本当の父の事を話してくれました。私の実の父は、既に亡くなっていますが、勇敢な護衛騎士だったと……」

「それが、お前が何としても護衛騎士に拘る理由か?」

「はい……、最初はただの憧れでしたが、今は違います。私は、亡き父の後姿を追ってみたいのです!」

理由を知り、何としてもモルダーを立派な護衛騎士に育て上げてやりたいと言う思いが強くなった。
私自身、代々続く護衛騎士の家系と言うのもあったから必然的理由もあったが、在りし日の父の姿に憧れて、私もこの道を歩みたいと自らが選んだのも事実だった。

「母親の事は?」

「母については生きているとは知らされたものの『詮索するな』と言われ続けました。ですが15の年、田舎を出て騎士の修行に王都へ行く事になり『領主様の奥方に推薦状を書いて貰える事になったから……』と母より告げられ、プロムウェザー男爵家に、指定された日時に書類を受け取りに伺いました。その時、私の記憶の中では初めてお会いしたはずの男爵夫人のお姿が、とても懐かしく感じられ……、夫人は私の姿を見るなり涙ぐまれていて……。如何したのかと尋ねましたら『私の初恋の騎士の姿にあまりにも良く似ている事が嬉しくて……』と一言だけ申されました。私はその時、漠然と『この人がきっと私の実の母なのではないのか?』と思いました。後日、田舎の母を問い詰めた所、その夫人が自分の妹だと教えてくれました」

「……自分を捨てた母を恨んではいないのか?」

「プロウェザー男爵邸を訪れるまでは、私は実の母に対し憎しみにも近い感情を持ってずっと過ごしていました。ですがあの時の……、母の涙ぐむ姿を見て、母は私が憎くて捨てたのではないのだと言う事を悟りました。その後田舎の母から、実の母は私を守る為に男爵家へ嫁いだのだと聞かされ、私を手放さねばならなかった経緯も知る事となりました。ですから今は実の母に感謝こそすれ微塵も恨む気持ちはありません。お二人に対しては、少なからず最初は思う所もありましたが、今では母の心の支えになって頂いている事を知っています。騎士としてのお姿は勿論尊敬してもおりますし、私の目標でもあります。感謝こそすれ、疎いと思うような事は一切ありません!」

「参ったな……」

元男爵夫の事についてはさておき、実の母との間で、このように乱れた関係を長年続けて来た我らに対し、何を持ってすればそのように寛容な眼差を向け、理解することが可能なのか?
その事だけは全く我が許容範囲を超えていた。
私ならば、到底理解できない。
モルダーは年齢よりかなり大人びているし、寛容さも持ち合わせている優れた青年だが、これはあまりに出来すぎだろう?!

「モルダーの気持ちが、理解できないって顔してるな」

「当然だ。分からない事だらけだ。もっと詳しく話せ! こんな……、我らとの関係を知り得た上で、こちらに都合のいい解釈が出来る10代の息子なんて普通有り得ないぞ」

「だよな。でも、普通の状況じゃなかったから仕方ない」

「……どういう事だ?」

漠然と、何かあるとは感じてはいたが、それが何なのかを知る為に、私は更なる自身の権利が振りかざした。
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風波 涼音

Author:風波 涼音
オリジナルの王道恋愛ファンタジーを書いています。(ハッピーエンド推進)〇〇年振りに執筆を再開しました。少しずつ自分のペースで書いていきたいと思います。

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