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ファンシーの扉

オリジナルの王道恋愛ファンタジーを中心とした小説です。最後にはホッと出来る物語作りを目指しています。(R設定がある時は冒頭に記します。独自の判断でご注意ください) 尚、過去の作品については『◆ALL』をご覧頂きページの下の方にあります「Next」を押すと過去の作品まで全がご覧頂けます。作品のキーワード検索も『◆ALL』ページ左上よりご利用頂けます。

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第17話 彼女の残した痕跡(殿下視点)

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

 プロムナード伯爵邸の門前に到着し、ローゼリアン統帥本部長が何処から入手したのか招待状らしきものを手に門番に入場許可を求めている時だった。
 屋敷の中から、猛スピードで駆けてくる馬車に遭遇した。
 何事かと目を凝らした瞬間、見覚えのある馭者の姿に驚愕を覚えた。
 自らの邸の者だと認識した統帥本部長は、すぐさま行く手を阻み馬車を引き止める。

「ステアント! 何かあったのか!?」

「ああ、旦那様ッ、大変なのです! お嬢様っ、フィフィアナお嬢様がぁ……」

 その言葉に、私はかつてないほど身を硬くした。

「おっ、お父様!?」

 馬車の中から顔を覗かせるのは、彼女が護衛していた筈の妹の姿。
 その表情は青ざめ、小さく震えていた。

「シルビア! 何があった? フィフィアナは……。どういう事なのだ!?」

「ああ、ごめんなさいお父様。私が馬鹿だったの……。おっ、お姉様は私を助けようとして……っ」

「フィフィに何かあったのか!?」

「でっ、殿下ッ!?」

 私の姿に、彼女の妹はとても驚いた表情をしていた。
 当然だ。
 通常王族が、このような場に同行する事は在り得ない。

「まさかとは思うけど、フィフィを見捨てて自分だけ逃げて来た訳じゃないよね? もしそうだったら、私はお前を絶対に許さないッ!!」

「でっ……」

 怒号にも似た私の強い言葉に、馬車に備え付けられている真っ赤なビロードのカーテンにしがみ付き、彼女の妹は身をさらに震わせていた。

「殿下、お怒りは全てこの私に……。全て私の監督不行き届きでございます。お叱りの言葉は後で幾らでもお聞きしますゆえ、ここはどうやら不測の事態。とにかく中へ急ぎましょう」

 馭者から何らかの情報を得たらしい統帥本部長から、先へと促され大きく頷く。

「戻るぞ。シルリル、我等も同行する。中で出来るだけ明確に事情説明をしなさい!」

「っ……、はっ、はい!」

 彼女の父である統帥本部長と馬車に乗り込むと、元来た道へと急ぎ走らせた。


 馬車の中で、まだ少し震えている彼女の妹から、懸命に幾つかの話を聞き出す。
 現在彼女はある紳士と応戦中で、更にはこの妹を庇い何かの液体を顔に噴きかけられたと言うのだ!

「それで、様子に変わりは無かったと言うのか?」

「はい……。私には普段と変わらない姉さまに見えました」

「暴漢退治用に貴族の令息が良く携帯しているスプレーを瞬間的に牽制の為に使用したと言う訳でも無いのであれば一体……?」

「状況からして効果のないものを安易に顔に目掛けて噴射するとは考えにくい。おそらくは時差的な効果を期待しての事でしょう」

「では、今頃フィフィは!?」

「おそらく、何らかの症状が少なくとも徐々に現れている可能性は、非常に高いでしょう」

「……それが、まさか例の薬(モノ)……と言う可能性は?」

「取引リストの中に、ある種の配合により高濃度の吸入物となり得る効果の強いものがありましたので、今回のパーティに関する娘からの情報から示唆します限り、その可能性は否定できません……」

「くそうッ!!」

 もし、予測するようなものならば……、徐々に呼吸は乱れて来るだろうし、おそらく応戦どころでは無くなって来るはずだ。
 それに高濃度の物ならば、じきに色んな意味でかなり辛くなって来る事も考えられる。

「……フィフィアナと別れてどれ位経つ?」

「わっ、わからないわ……、でも、多分20分ぐらいは……」

 吸入効果が得られるものに即効性は少ないとは聞くが、徐々に効果は自然と現れ30分もあれば平素でいられ保証は何処にもない。じわじわと神経を刺激させる効果が癖となり、最近では一部でそのようなものの流用者が増えて来ている傾向にあるという事も先程聞いたばかりだった。


 馬車を降り、最後にフィフィと別れたと言う場所へと急ぎ彼女の妹に案内をさせた。

「ここよ。確か、ここでお姉様と別れたの。彼と応戦していて……っ」

 だが既に、そこに彼女の姿は無かった。

「何処に行ってしまったんだ……。フィフィっ」

 仮装し後を追って来た騎士団の面々に次々と指示を出すローゼリアン統帥本部長の姿。


「殿下には、私と行動を共にしていただきます。決して一人になりませんように」

「分かっている」

「先ず何か手がかりを探しましょう。あれも騎士の端くれです。徐々に薬の効能が現れているのであれば、何か手がかりを必ず残していてくれる筈です。先ずはそれを探りましょう」

 目を皿のようにし、彼女が応戦中だったと言う場所周辺をくまなく捜索していると、やがて統帥本部長がある事に気付いた。

「流石は私の娘だな」

 そこには数メートル毎に居室へと続く、まだ幾分湿り気の帯びた薄い血痕とおぼしき痕跡が認められていた。

※おまたせしてスミマセン。ぼちぼち更新します。

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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第16話 背後から襲い来る者

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

 誘われるままに殿方の手を取り、もう幾人と踊っただろうか?

「私たちも少しあちらで休憩しませんか?人気者の貴女は既に何曲も踊られている。さあ、こちらへ」

 次から次へと誘われ、踊る事に夢中になりすぎていたが、気付けばホールに残る人は疎ら。
 皆、一体どこへ行ったのだろうか?
 その事に少し気がかりを覚えつつも、確かに私の脚もかなりパンパン。
 そろそろ限界も近かったので、その気遣いがとても嬉しかった。

「あら、お優しいのですね」

「このような場でレディに無理をさせる事を、私が得意としないだけですよ。最高級のレディは敬われるものです。さあ」

 こんなに甘い言葉を投げかけられ、誘われるのは初めてで、みるみるうちに頬が紅葉していく。
 笑顔で差し向けられた彼の腕を遠慮がちに取りながら、共に中央の輪から離れテラスの方へと歩き始めた。
 馬車の中から少し見ただけだが、確かこの先の庭園奥には東屋(ガゼボ)が点在していた筈。
 そこで夜空の星を眺めながら語らい、少し休憩するのも悪くはないと思っていると、あからさまに私たちの行く手を遮る人影があった。姉さまだ。

「あら、どちらへ?」

「こちらのご令嬢が少しお疲れのようなのでね」

「でしたら、こちらへどうぞ。お席は空いていますわ」

「いえ。お気遣いは嬉しいが、私たちには不要です。ね?」

 とろけるような甘い笑顔で見つめられ、反射的にうっとりと見つめ返し、軽く頷く私。
 なのに更に行く手を遮られた。

「なッ!?」

 状況を察してくれず、しゃしゃり出て来る姉の態度がとても鬱陶しく思えた。

「余計な世話は止めてよ!」

「ここから見渡せる範囲だけでも、先ほどから姿が見えなくなったカップルが7組。何方もとても親密に寄り添っていらしたけれど、どちらに向かわれているのかしら?」

 何かを勘繰るような姉の失礼な態度に、彼が気分を害していないか気がかりでいれば、案の定……。

「無粋な事言うな。なんだ、お前は!」

「私は好奇心旺盛な妹が、知人より面白い夜会があるからと初めて誘われ参加しているものですから、知らないお宅で羽目を外さないようにと見ていただけですわ」

「……妹?」

 姉の言葉に、彼は私の方を覗き込む。

「まるで保護者だな」

 そう告げると小さく鼻で笑った。

「如何とでも仰れば」

 強気な反応で、更に彼を嗾けている風にも見える。
 一体何をしているのかと思えば、いつも胸元に隠し持っている防犯用の棍棒を握りしめ身構え、険しい表情をしていた。
 その姿に、彼が目を見開く。

「お前……っ」

「こういう事、得意なの」

 何かを言いかけて、一旦口を閉じた。
 姉の俊敏な動作に、口先だけではなく女だてらに腕に覚えがあると感じたのか、彼は表情を歪ませると、小さく舌打ちをした。

「……そういう事か」

「そういう事よ!」

 そこには、先程まで優しかった筈の彼の眼差しは無かった。

「……お相手、有難うございました」

 腕を解き、少し強張った表情のまま作り笑いをする彼は、こちらに向け深々と礼をする。
 その姿は、何処か悔しそうにも見えた。

「……いえ、こちらこそお相手、有難うございました」

 去り行く彼の後姿を見つめる横で、姉があからさまに大きく深いため息をつき、その姿がとても癪に障った。

「シル、あなたって子はッ。気分に流されることなく、状況を把握して行動するようにいつもお父様からも言われているのに、いつもどうしてこうも軽はずみなの?今日なんて少しだけでも周囲に目を配っていれば自ずと異常な状況は把握できていた筈よ。あまりにも男性の態度はあからさまだったじゃない。少しちやほやされただけであんなに浮かれて……、姉さま見ていてどれだけハラハラした事か。いい気になって軽はずみな行動をしていた事を反省なさい!」

「何よ、私は少し踊っただけじゃない」

「いつもより、かなり親密にね。密着度も男性の貴女を見つめる眼差しも下心のありありだったじゃない」

 そういえば……。
 思い返し、思う所はあったが素直になれなかった。

「そうかしら?」

「手をやる腰元の位置をかなり下の方にずらしていた殿方もいたわよね。あれを変に思わなかったの?」

「だって皆身長も違うから、位置だって変わって来るでしょ」

 多分私は姉に助けられた。
 その事を分かっていたのに、素直に頷く事が出来なかった。

「……もう、いいわ。とにかく、ここの夜会は普通のものとはかなり趣きが違うのよ。おそらく男女の親密な出会いを主としている夜会よ。どうやら女性が男性の手を取り輪から離れれば契約は成立する仕組みみたいね。早々に奥の部屋へと消えて行ったカップルが何組もいるわ」

「そんな……っ。私マグリットからそんなこと一言も……。ここへは私を心配して連れて来てくれたはずなのよ。大切なお友達が、気分転換になればって誘ってくれたのに」

「大切なお友達? ではそのお友達が、今ここで何をしていると思う?」

「えっ?」

 そう告げられて辺りを見渡してみたが、そこに誰よりも大切に思っていた筈の友達の姿は無かった。

「 ……マグリットは?」

「ある殿方と……、二人目だったかしら。とても親し気に東屋の方角へと消えて行ったわ。声を掛けようとしたけれど、目が合った途端、あからさまにとても嫌そうな顔をされたの。そして、後はまるで無視」

「……そんな……っ」

「あなたも、今の今まで甘い言葉に惑わされてマグリットの事なんて忘れて浮かれていたわよね。人の事は言えないわね。まあ、あなたの場合は慣れない殿方からのアプローチに浮足立っただけで深い意味合いは無かったんでしょうけれど……」

 姉の言葉に、背中から冷や汗が流れて落ちて行くのを感じた。

「彼女、慣れているわね」

「えっ?」

「あの娘、多分この夜会の常連ね。誰とお友達としてお付き合いするかはあなたの自由だけれど、これからも殿下のお側にいたいと思うのならば、今後お付き合いをするお友達はもっと慎重に選んだ方が良いと思うわ。口ばかり達者な友達は要注意。もっとしっかり周りを見れるようになりなさい」

 姉から告げられた言葉に、今までの自らの行動に多少の自責の念を覚えつつも、この時素直になれなかったのは、私の悪い所だったと思う。
 けれど自尊心を傷つけられた事もあり、この時の私はどうしても素直になれなかった。

「お姉さまなんて嫌い!いつも口うるさい事ばっかり……。余計なお世話よ。もう放っておいてッ!」


 怒りに任せて、呼び止める姉の腕を振り切るようにその場を後にしたのはほんの10分ほど前の事。
 その言葉が間違いだったと気付くのに、そう時間はかからなかった。

 
「やあ、レディ」

 私の事を、いつから見ていたのだろうか?
 去って行ったと思っていたのに、何処かで見張っていたのか?
 先程別れた筈の彼が何処からともなく突如近づいてきて、私は肩をビクリッと震わせた。

「さっきは良くも私に恥をかかせてくれたね。まさか、あんなお目付け役が潜り込んでいるとは……。でもお姉さんの事、嫌そうにしていたし、あのマグリットの紹介なんだから大丈夫だよね。姉さんはどうせ無理矢理ついて来たって口だろ?」

「ち……」

 否定したいのに、突然の出来事に恐怖で声がうまく出てこない。

「だから離れるのを待っていたんだ。さあ、もう邪魔者はいない。もっと仲良くなろうよ」

「ちっ、違うの……。私はっ……」

「何が違うんだよ!」

 明らかにダンスを踊っていた時との甘い表情とは違う。
 自己顕示欲の強い彼の態度に、私は戸惑いを隠せずにいた。
 掴まれた腕を振り解こうとするが上手くいかない。
 抵抗しようとする私の姿に、彼は更に激情しているようだった。

「こうやって、嫌がられながらって言うのもそそられて悪くはないが、双方合意の下って言うのがここのルールだから、それは守らないとね。義務だからね。だから、少し黙っていて貰おうか」

 ポケットから何かを取り出された。
 香水の小瓶のようなものを顔にめがけて向けられて、私は必至でそれを背けようとする。

「……やっ、姉さ……ま……っ!」


 吹き付けられようとした次の瞬間。

「シルっ、逃げて!」

 突如横の草陰から現れた姉が、私を突き飛ばした。

 ……膝が立たない。
 足が震えて……。

「早くッ、父さまに知らせて! !」

 姉が彼の腕を掴み格闘している。
 応戦している姿を横に感じながら、私はわななく膝を抑えながら何とか立ち上がると、その場を必死で離れた。
 
 父さまッ、……助けて!!

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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第15話 危険へのカウントダウン

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

 プロムナード伯爵邸に到着し、マグリット・ムハナム男爵令嬢と合流するや否や、怒涛のように押し寄せる麗しき殿方の数々。
 そこには夢のような光景が目の前に広がっていた。

「レディ、私と踊って頂けませんか?」

「いえ、是非私と先に」

 あっという間に私たちの前には列が出来上がり……。
 ああ、なんて素敵なの!
 高揚する気持ちを抑えきれず、思わず顔がほころんだ。

「マグリット、これって……」

「ふふふっ、凄いでしょう?プロムナード伯爵邸の夜会はいつも特別なのよ」

 特別も良いところ。大特別だ!
 ざっと見積もって15、6人……。
 いや、それ以上。
 こんな夢のような体験は初めてだった。

「マグリット、貴女いつもこんなに人気者なの? 私、こんな状況初めてで気後れしちゃうんだけど」

「そんな必要はないわ。社交界デビューしたばかりの娘は貴重なものよ。殿方って若い子に目が無いから」

「そう言うもの?」

 確かに周囲を見渡せば、ここにいる中では確かに私たちは若そうだ。

「さあ、少しでも気になる殿方がいたら手を取って。片っ端からどんどん踊っていくわよ。そして見定めるの。貴女ダンスは得意でしょ。それでこの人だと思える殿方が決まれば、一緒に抜け出すの。だって、それからは二人だけで楽しみたいじゃない?」

 ウィンクを返されたので、私はこの時何も深く考えずに、それが気軽な事なのだろうと捉えてしまった。
 月明かりの下、二人で庭園を散策するのかぐらいに……。
 それに私にはお姉さまがいつも付いて下さる。何があってもきっと大丈夫。
 そう考えていたのも事実だった。
 ならば滅多にない機会だ。素敵に殿方に囲まれるこういう状況を味わうのも悪いことでは無い。
 殿下以外の方という事に立場的に少し戸惑いもあったけれど、マグリットの言葉が引き金となった。

「私、一応殿下の婚約者候補の一人なんだけど」

「誰もそんなこと知らないし、気にしないわよ。婚約者候補って言ってもそれは殿下がその中からお妃を選ぶと言う形式的なものなのよ。求婚されなければそれで終わり。貴女、候補に挙がって長いのにまだ求婚されたことないでしょ。可能性の低い今の状況では、他の殿方に今の女として一番輝ける時期をアピールして無駄に過ごさないようにするべきだわ」

「低いって、失礼ね」

「あら、だって殿下はここ数年ずっと貴方のお姉さまに求婚中だってもっぱら噂よ。貴女の勝ち目は低いでしょ?」

「!!」

 突きつけられた衝撃なる出来事に、拳を強く握る。
 殿下が過去にお姉さまに何度か求婚したことがある事は知ってはいたけれど、ここ最近もそのような噂が出るほどの行動をとられていた事を私はこの時初めて耳にした。
 凄く、ショックだった……。

「最悪行き遅れたら、古狸の後妻に落ち着く事にもなりかねないのよ。貴女、その覚悟はあるのよね?素敵な殿方を見つけて先に幸せになるのは自由なんだから、殿下以外にも自分の伴侶となり得る殿方を見定めておくのは悪いことでは無いと思うわ。今日なんて、その絶好の機会じゃない」

「でもっ」

「それにね。地位の高い殿方って、往々にして周囲からの注目度も気にするものよ。更に殿下の目にとまりたいんだったら、もっともっと自分をアピールして常に殿方の視線を集められるような魅力を纏わなきゃ。貴女のお姉さまなんて職業柄高貴な方々と付き合う事が多いんだから、状況としてはそれだけで貴女は常に不利な立場に立たされているのよ。思いが残っているのなら尚更今のままじゃダメ。それにしても、貴女のお姉さまって全く羨ましい限りだわよねぇ」

 マグリットの視線の先にあるのは、お姉さまの姿。
 私と目が合い、何も知らない姉は笑顔でこちらに向けて手を振ってくれている。
 ふと見つめ返したその先に、何故かマグリットの言うように、背後に多くの素敵な殿方が見えた気がして、私は大きく息を呑んだ。

 私には、元から殿下と毎日関われるような機会はお姉さま程ない。
 ならばここは、お姉さまとは違う得意分野で勝負すべきではない?
 私がお姉さまより誇れるものがあるとすれば、それは社交性。
 だったら、ここで見返す為にも勝負しなきゃ!

「これ位、みんなやっている事なのよね?」

「そうよ、私の周りでは普通にね」

 こういう場ではいつもお姉さまは壁の花。
 最初は心配する父が頼んだことがきっかけだったけど、今では私が保身の為に頼んでいる。
 護衛に付いて貰っている事を、今まで利用していると言う風に意識は無かったけれど、いつもありのままの私でいられるのはそのお陰もあったかもしれない。
 それに、今日は良い機会だ。

「さっ、とにかく踊り始めないと。殿方をあまりお待たせするのもではないわ」

「そうね」

 多少の不安を覚えつつもこの時の私は、少しでも自身にとって優位になる事しか考えておらず、事態を軽く捉えていた。
 これから起こる事についての、想像すら膨らませる術も持たずに……。
 
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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第14話 もどかしい馬車の中

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

 騎士団は1班7名の編成部隊を結成。
 そんな男ばかりの大人数で駆けつけるのは、幾ら夜会の席だとは言え不自然さがあるのではないかと思っていれば、堂々と表から入るのは、どうやら私と目の前にいる騎士団統合本部長だけらしい。

「ねえ、何処に向かっているの?」

「プロムナード伯爵邸」

「色々な申請書類が多く上がってきてるから、かなり手広いことをやっている人なんだろうとは思っていたけど、悪事を働いていたんだな……」

「表向きは生活物資の輸入販売をしているように見せかけていますが、裏ではかなり非合法なやり方で禁止薬物も仕入ているようです」

「まさか、麻薬の類とかか?」

 禁止薬物が扱われているだけでも大事だと思っていたのに、続く言葉にそれ以上の性質の悪さが感じられ更に驚かされた。

「非合法に催淫性の高い薬物を仕入れ、人体実験を行っていると言う密告が先日ありまして……」

「人体実験だって!?」

「勿論我が娘たちがそのターゲットになっているとは限りませんが、こう言うものは注目を浴びれば浴びる程、ターゲットにはなりやすい。シルリルは社交性も高く、目をつけられる可能性は十分に在りえる。感の鋭フィフィアナは、いつもその事を危惧しているのですが、私もその点は娘の意見に同感です」

 確かにあのフィフィアナが、妹に対する何かに気付いてそのまま知らぬ振りが出来るとは到底思えない。
 私は生唾を、ゴクリとその場で飲み込んだ。

「けれど、フィフィには剣を日常的にいつも身につけさせているんだよね?だったら、並みの男より十分に強い。きっと大丈夫だよね?」

「多勢に無勢。相手の人数が多ければ、それも無理でしょう」

「でもッ、まだ、それは分からない!」

「ええ、ですがある意味娘たちは有名なのです。知る者も多いでしょう。どうしても注目を人より浴びてしまう」

「だが、仮装をしているのだろう? だったら少しは……」

「その期待は、返って裏目に出ていると見た方がこの際良いでしょう。何かあったとすればシルリルを逃がしてフィフィアナは応戦するでしょう。ですが慣れないドレスであのフィフィアナが、有効な立ち振る舞いをとても上手にできるとは思えない」

「……でも、彼女たちが被害にあっているとも限らない!」

 考えれば考える程、言葉とは裏腹に思考は変な方向へと向かってしまう。

「ええ、それは勿論です。ですが、今は何もできない。無事を祈るより他には……」

 ……何てことだッ。
 最悪だ!
 何人であれ、もし、彼女に何かしたら……、絶対に唯では済ませない!

「馬車の速度をもっと上げろ! どれだけ揺れても構わない!!」

 声を高らかに御者にそう告げると、私は拳を強く握りしめながら、彼女の無事を懸命に祈った。

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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第13話 彼女に何が起こっているのか?

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

 幼少期、身体の弱かった私は、7歳の頃から剣術の稽古を始めるようになると、段々と寝込むことが無くなって行った。
 その経緯から、今でも時間が許せば週に3度は欠かさず夕方から鍛練に通っている。
 今日は幼少期より色々と教わってきた彼女の父親である騎士団統帥本部長が、夕方の会議の後でよければ少し手合わせをしてくれると言うので、鍛錬場で待ちながら他の者と軽く打ち合っていた時の事だった。
 突如、扉が荒々しく開け放たれた。

「警務騎士団第4部隊、緊急出動だ!」

 気迫に満ちた声音が響き渡り、騎士たちに鋭い視線が向けられる。
 私の相手をしてくれていた者が踵を正し一礼すると、声のもとへと駆けて行った。
 どうやらその部隊に所属している者のようだ。

「殿下、申し訳ございません。この埋め合わせはまた後日」

「ああ、構わない」

 こちらに目を向け一礼する警務騎士団長の姿は、何時になく気迫に満ちていた。

 (何があったのか?)
 
 目の前で高まって行く気迫に満ちた騎士らの姿に興味を覚え、少し離れた位置から様子を伺った。
 汗を拭くふりをして、少しずつ近づきながら聞き耳を立てていると、何処かの夜会で何かが起こっているという内容が聞こえて来た。
 夜会と言えば、最近良くフィフィが妹に付き合わされて出かけている。
 まさかとは思いつつも、彼女が出席している場所で何かあったのではないかと胸騒ぎを覚えていると、何時になく彼女の父親が苛立っているように感じられてハッとする。

「ボナベスト師団長、先に出るぞッ」

 彼とはかなり長い付き合いになるが、いつもとは全く異なる余裕無さげな姿に、瞬時に彼の娘に何かがあったのではないかという事を察知する。
 それはあの妹なのかフィフィなのか?
 私は生唾をゴクリと飲み干すと、慌ててその後を追い駆けた。

「ローゼリアン統帥本部長ッ!」

「殿下……」

「……まさか、フィフィアナ嬢に何かあったのか?」

「これは我が騎士団が解決すべき事案です。殿下におかれましては余計なことに首を突っ込まれるようなことをなさらず、速やかに自室にてお過ごし頂けますようお願い申し上げます」

「何かあったのだな!?」

「殿下、後程ご報告に参りますので……」

「フィフィが関わっているのならば、これは騎士団だけの問題ではない!彼女は私が唯一の妃にと求めている存在。もし、私の知らぬ間に、後で彼女に何かあったと分かったら……、相手が父親であっても、私は伯を絶対に許さないからな!」

 必死なる私の訴えに、彼女の父親は苦笑いを浮かべると、小さなため息を一つ溢した。

「……辛辣な思いに駆られる事も、あるやもしれませんよ?」

 その言い回しに、胸騒ぎを強くした。

「そんなことは関係ない!もし、フィフィに今何かが起こっていると仮定して……、それが例えどんなことであったとしても、知らないで済ませる事の方が私は一番辛い!」

 思わず口から零れ出た言葉。
 このまま放置されてしまったら、私はおそらく何も手につかなくなるに決まっている。

「……分かりました。ですが単独行動だけは慎んでください。それと、殿下のその身なりは目立ちすぎます」

「……えっ?」

「こちらへ」

 そう告げると彼女の父親は、鍛錬場へと再び足を向ける。

「師団長、殿下も同行する。黒騎士仮面の衣装一式を貸してやってくれ」

「了解です、閣下」

 私は慌てて、警務騎士団長の許へと駆け寄った。

「よろしく頼む……」


 何が起こっているのか?
 警務騎士団が緊急出動するのだ。危険が伴っていない訳が無い。
 それに、伯のあのような態度はいまだかつて見た事が無かった。

 わが愛するフィフィアナに、きっと何かが起こっているのだ!
 状況が全く分かっていない状態での不安と苛立ち。
 私は心配で、胸が張り裂けそうだった。

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プロフィール

風波 涼音

Author:風波 涼音
オリジナルの王道恋愛ファンタジーを書いています。(ハッピーエンド推進)〇〇年振りに執筆を再開しました。少しずつ自分のペースで書いていきたいと思います。

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