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記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《3.再 会》

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王子への返事は正式には送っていない。
父である伯爵は度重なる王宮からの返事の催促に、これ以上は引き延ばせないと明日までに心積もりだけはしておけとアーリアに申し渡した。
直接言葉は無かったが、両親がこの話に乗り気である事は明確だったし、断るなど到底考えて居ないだろう。
それに断れば王宮出仕を数年後に控えた弟へもきっと迷惑がかかってしまう。
自分がこの結婚を受け入れれば我が家は安泰。父と弟の今後の出世も間違いないだろう。だが、もし断れば我が家に未来は無い。家の為にも受け入れる事が最善である事は分かっている。しかし、どうしてもやはり諦めきれないのだ。あの方を・・・・。

「ラル・・・・」

夢を思い出すだけで、あの従者と重なり胸が熱くなり涙が溢れて来る。
私が恋をしているのはあの時の従者なのか? それとも夢の中の王子なのか?
物思いにふける度に、やがてその二つのイメージはどんどん重なって行った。

日々苛まれるお嬢様の姿に、流石にこのまま黙ってはおけないと、侍女はついに邸の主である伯爵にこの奇妙な夢にお嬢様が毎夜苛まれていると言う事実を打ち明けてしまった。
お嬢様のお気持ちを汲み取り、もぅ少しだけ返事を待って貰えるようにと懇願したのだが、これが悲劇の幕開けだった。

「最近やつれていたのはそんなちっぽけな悩みのせいなのだったか!! そんな事に思い悩むからいけないのだ!」

伯爵は娘を叱咤すると、これこそが娘の為なのだと、ついに無断で城に使いを出してしまった。
正式に王子との婚約をお受けすると・・・・。

アーリアはまさかの出来事に、以来ずっと父とは口を利いていない。
それから暫く、気持ちの整理をつけたいからと部屋から一歩も出る事は無かった。

城からは直ぐに返事の使者が訪れ、早々と1週間後には婚約を発表する舞踏会を催す旨が伝えられた。
こうなってしまえばたかが伯爵家の娘であるアーリアが何を言った所で事態は変わらない。
元々貴族の娘として生まれた時点で、結婚に愛や夢を求める事は難しいと自負していた。
殆どの場合、こちらの気持ちに関係なく格上の相手からの求婚を断わる事は無い。
貴族の世界とはそう言うものだ。親が気に入れば尚更不可能だ。
それも相手がこの国の第一王子となれば、断る理由など元から存在しない。
両親とて親の決めた相手と結婚し、それなりに平穏に過ごしている。
アーリアは戸惑いながらも結局は家の為と割り切り、心を決めた。
この恋に終わりを告げるのだと・・・・・。


王宮で開かれる舞踏会当日。
この日、正式にアーリアと第一王子セイラルとの婚約が発表される。

王宮に着き丁重な持て成しで控えの間へと案内される。
ため息交じりで部屋へ入るとロココ調の調度品が供えられた部屋だった。
ソファーに腰をおろしたアーリアは、自分の身に起きてしまった不幸を呪いたい気持ちだった。

(「ラル・・・・」)

王子との婚約が決まってなお、心の中であの従者を想い、そっと呟いた。

控えの間で項垂れ、大きくため息をついた時だった。
誰かが外から扉をノックする音が聞こえた。

『失礼致します』

扉の向こうから声を掛けられ返事をして侍女が迎え入れた者を見て、アーリアは一瞬何が起こったのか理解出来なかった。

「・・・・どうして?・・・・」

そこに佇む精鍛な顔立ちをした男性は、正しくあの時の従者にして夢の中の王子ラルだった。

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