FC2ブログ

記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《7.運 命》

 ←記憶の彼方とその果てに《6.従 者》 →記憶の彼方とその果てに《8.苦 渋》
帰国して2年の歳月が流れる中、素性を隠し田舎の子爵家の次男坊として方々の屋敷で行われる主だった舞踏会や平民を装い若い民の集う場所にも顔も出してもみたが、心を動かされる者の姿を目にする事は一度も無かった。
だがその中で、たまに耳にする王都で有名な気ままな占術師の話。
行った所で扉の小窓からその者を覗き見て、気に入らなければ中に入れてもくれないと言うその占術師は、気まぐれだが会えれば全てを見通す力があるのだと言う。
こういう話は何処にでもあり、何度か試しに行ってはみたが当たった記憶は全くない。
適当にどうとでも取れる言葉を選んで話をし、それで一言反応をみせれば反応のいい方向に押し広げると言う輩の何と多かった事か。
今回もただの絵空話だと思い、軽い飲み物を口にしながら適当に耳だけ向けて聞き流していたら、ここに来て興味を示す言葉を耳にした。

「何でもその婆さん曰く、あの伝記は本当にあった話らしい。私は何と当時この国の弓の名手として戦いに参加して敵国の最後の王族を打ち取った英雄らしい。まぁ、信じちゃいないが、弓の名手と言うのはあながち間違ってはいないかな」

話の内容から弓に覚えがある者だと推察しチラリと視線を向けたその先で、思わずその者の風貌を凝視した。
間違いない。顔立ちは記憶に無かったが醸し出す雰囲気とあの野太い片腕は弓の名手と謳われたあの男を彷彿させていた。
伝記に出て来る弓の名手ジャン・グローバル。
彼こそが最後に私に矢を放ったあの者なのだと・・・・。

この時ハッキリと理解した。
記憶は無いまでも、現世に転生する者はきっとまだ多く居るに違いないと。
そして、その占術師に会ってみたいと初めて思った。

詳しい場所を聞きつけ、王都の中心部にある商店街の路地裏を練り歩く。
やっと見つけたその場所には確かに玄関の扉に小さな覗き窓が付いていた。
声を掛け、暫く待つとその小窓からギロリと片目だけが妖しく見えた。

「・・・・やっと来たかい」

老女はそう告げると扉をゆっくりと開いた。


通されたのは2平米四方程の小さな部屋で古い小さな木の机が一つ、その両サイドに椅子が置かれているだけだった。
術師が暗幕側に座ったのを見て自分はその対側に座った。

「良かったねぇ。もう少し遅れたら、運命が変わってしまう所じゃった」

座った途端告げられた言葉に、呆気に取られた。

「・・・・運命が・・・・、ですか!?」

「今も探しておるのじゃろう!? あの娘を」

そう告げられセイラルは思わず机に両手を突くと、身を乗り出した。

「分かるのですか!?」

「今更だね」

本物だと思った。

どうやら、自分は今までにも何度かリアを探し求め、この老女と何度か転生する度に会っているらしい。だが、自分にはその記憶は無い。
だが自分は今まで、一度もリアに会う事は叶わなかったらしい。

「どうしてですか?」

「彼女がお前さんの後を追い、自ら命を絶ったからじゃ。自ら命を絶った者は最低でも200年は人として転生できん」

「・・・・では、彼女は今何処に!?」

「もう直ぐ会える。お前がここに来たからな」

意味が分からなかった。

「おっと、そろそろ時間じゃ。この機を逃せば運命の風向きが変わる。周囲に目を向け注意して行けよ」

それだけ告げると、有無を言わさず家の外へと放り出された。

この老女は一体何を言っているのか!?
訳が分らなかったが、路地を抜け、とにかく言われた通りに周囲に目を配りながら大通りへ出た。
何事も無いではないかと、またも騙されたのかと大きな溜息をついた時だった。
待つ馬車に乗り込もうとした正にその時、対側の道筋で貴族の令嬢らしい娘とその侍女が鼻持ちならない男たちに絡まれている姿が目に飛び込んで来た。

駆け寄り間を割り、男の腕を捩じ上げた時、老女の言っていた事を理解した。
腕の中の男と、その脇に目にした娘の姿に凝視した。
間違いない。この娘こそがリアなのだと!

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村




総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【記憶の彼方とその果てに《6.従 者》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに《8.苦 渋》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【記憶の彼方とその果てに《6.従 者》】へ
  • 【記憶の彼方とその果てに《8.苦 渋》】へ