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記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《19.救 出》

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目の前の衝撃に怒りが込み上げ打ち震え、既に冷静を保つ事は不可能だった。

「・・・・お前と言う奴は!!」

セイラルは弟の振り上げた手を掴み捩じ上げるとそのまま振り落し、怒りに任せてその拳で殴りつけた。
サニエルは壁際まで飛ばされると背を打ちつけられてそのまま床に転がった。
痛いと訴え、蹲る弟に声を掛ける事も無く近寄ると胸ぐらを掴みセイラルはその上に跨った。

「痛いだと? 良くこの口でその言葉が告げられるな! 彼女の心の傷はお前の痛みの何十倍にも値する! お前のやった事に比べればこれは当然の報いだ!!」

言葉を吐き捨てると、力任せに弟の顔を何度も何度も殴りつけた。
リアの心の痛みに比べれば、どれだけ今コイツを殴りつけた所で、その傷が癒えるものではないと頭では分かっていても、こうせずにはいられなかった。

入口の二人を片づけて寝室に入って来た王子姿のマジミールは、その主の姿に頭を抱えた。

見事、やってくれた・・・・。
どう収拾しようかと頭を抱えたくなった。
サニエル王子の口は切れ、顔は腫れ上がっている。

「マジミール、もう良い。それ位にしておけ!」

王子姿の従者の声にハッとしたセイラルは、そのままの体制で固まった。
その手はフルフルと震えている。
マジミールはゆっくり近付くと、主であるセイラルの手を自分の手の中にそっと包み込んだ。

「お前の気持ちは十分、分かったから・・・・。感謝するマジミール」

王子扮するマジミールにそう告げられ、セイラルは悔しそうに弟から顔を背けると、掴んでいた胸ぐらを投げつけるように離し、口惜しそうに振り上げた拳を収めた。

サニエル王子は床の上に力なく倒れ込むと、ぐったりだ。

セイラルは悔しげに立ち上がると、心を落ち着かせようと大きく息を吐き出した。
今の自分は王子でも従者でも無かった。一介の、唯の恋する男に過ぎなかった。

微かに聞こえて来るすすり泣く声に耳を奪われ、我に返ると慌ててベッドに繋がれたアーリアの傍まで駆け寄った。
着ていた上着をもどかしい想いで慌てて脱ぎ捨てると、その肩にそっと掛けた。

「・・・・大丈夫か!?」

アーリアは震え、泣きじゃくりながらも小さくコクリと頷いた。
繋がれた縄は難なく解けたが、自分の今の立場的なものに戸惑い、一瞬どうしたものかと手を止めた。
だが、目を覆いたくなる様な痛々しい姿と、自分の不甲斐なさが招いた結果に溢れ出す感情が抑えきれずに服の上から思わずギュッと抱きしめた。

「・・・・すまん・・・・」

突然抱きすくめられ、一瞬ビクッとしたアーリアだったが、回される温もりがとても心地よくて、泣きながらもその胸に顔を埋めてしまった。

裂けていたのは胸元の少し下の辺りまで。弟の下肢も緩められて居なかった為、とりあえず貞操は守られたらしい事は聞かずとも理解は出来たが、それでも許せなかった。
弟は言うに及ばず、少しの間とは言え彼女から目を離してしまった自分自身が!

「ひっく・・・・まっ、マジミール・・・・さま・・・・、ひっく」

完全に素に戻っている王子の姿と、信頼を寄せその腕に顔を埋めて泣きじゃくるアーリア嬢の姿を、王子扮するマジミールは真面に正視する事が出来なかった。
これは自分の落ち度だ。
王子も気にかけていたとは言え、今日の状況は王子にとって苦痛でしか無かったはずだ。
平常心で自分とアーリア嬢の姿をじっと見続ける事は叶わなかったに違いない。耐え切れずに目を背けたくなる事もあっただろう。その王子の状況を分かっていながら、自分も緊張を強いられいつもの平常心を保てなかったのも事実だった。

(「申し訳ありません、王子、アーリア様・・・・」)

マジミールは心の中で深く、深く、謝罪した。


一向にその腕を離そうとしない従者の姿に最初に気付いたのはアーリアの方だった。
窮地を助けて貰ったとは言え、婚約者の王子の目の前で、いや、そうで無くても婚約者のある身でこれ以上この温もりに甘えてしまうのは流石に不味いと気が付いた。

「あっ、あの・・・・マジミール様・・・・、もう大丈夫ですから・・・・」

アーリアにそう告げられ、ハッとし我に返ったセイラルは、慌てて従者マジミールとして取り繕った。

「も、申し訳ございません。私も気が動転しておりまして・・・・」

それは、言われなくてもあの現状を目にすればハッキリと分かる事だった。


「とにかくマジミール、我らはサニエルを連れて隣室へ移動しよう。婦女子の着替えを覗くものでは無いよ」

王子に扮したマジミールは床に投げ捨てられていたドレスやペチコートをいつの間にか拾い上げるとベッドの脇に置いてくれていた。

二人はサニエル王子を抱え上げると隣の部屋まで移動した。

さぁしかし、これから如何したものか・・・・・。
とにかく父上だけにはこのサニエルの所行を報告する義務がある。
だが、あの腫れあがらせてしまった顔に側妃はおそらく怒号するだろう・・・・。
何とか言って父に取り繕ってもらうしかないのだが、おそらくこういう事態に陥っては今後自分に対する殺意じみた計画が更に進むであろう事は疑う余地が無かった。

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