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記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《34.変 化》

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少しだけアーリアの様子が変わって来た気がする。
それは昨夜過去においてラルがリアに小屋で数日にわたり介抱して貰った話をした辺りからだ。
何か心の枷が外れたかのように、自分から身体を寄せて話を親身になって聞き寄って来てくれるようになったのだ。
勿論まだ無理出来る状況ではないのだがアーリアが、自分がリアであるかもしれない事を少なからず感じ取ってくれているのではないかと微かな希望が見え始めていた。

「状況はどうなのですか?今日でサニエル王子の謹慎から既に5日です。無理なようでしたら今後の対策を見直した方が良いのでは?」

「分らない・・・・。でもアーリアは何かを感じてくれているように思う・・・・」

唇は何の蟠りも無く許してくれるようになった。
首筋に顔を埋めれば恥ずかしいとは言うものの嫌がっている様子も無い。そろそろ次の段階へ進んでも良いのかもしれない。

「元々人の心を7日で動かすと言う事こそが無謀な賭けでしたし・・・・。サニエル王子が自由の身になるまで等と拘る必要が元々あったのでしょうか?」

「あいつが放免となって何もしないと思えるか? あの約束は王が交わしたものであってサニエルが了解したものでは無い。おまけに側妃も口では了承したが全く納得などしていなかった!」

万階一サニエルが側妃と結託すればどのような計画がなされるか、考えただけでも恐怖だった。


険しい表情の王子にマジミールは、これ以上は言うべき言葉では無いと理解した。
今この王子にとって一番の不安要素は自らの命の危険では無い。アーリア嬢の身の安全なのだと再認識させられた。

「・・・・だからと言って・・・・無理強いは、いけませんよ」

王子の怪訝な表情をじっと見つめ、マジミールは苦笑いを浮かべながら注意を促した。

これはここ数日毎日王子に釘を刺している言葉だ。
せっかくここまで慎重に事を進めて来たと言うのに、ここで焦ったのでは全く意味を成さなくなってしまう。

「何だ、お前も絆されて来たのではないのか?」

・・・・何時もの事とはいえ、このヤキモチじみた発言にはホトホト呆れ返る。
普段ならここで思いっきり否定する所なのだが、今日は少し言葉を変えてみた。

「いえ。何だか私を見る視線が微妙なので・・・・・」

そう神妙な面持ちで呟いてみた。すると、

「・・・・・惚れるなよ」

真剣な眼差しでそう告げられ、思わず吹き出しそうになった。
必死にそれを堪えて、一様真顔でこう言った。

「馬鹿を言わないで下さい」

本当に王子はアーリア嬢の事になると人が変わられる。
普段は冷静沈着に物事を捕らえ、焦って何か行動を起こす様な先走った真似は間違ってもしない。
だが、一度アーリア嬢の事となると、それらの事は全て除外される。
自分が諫めなければ、歯止めの効かない王子の行動にアーリア嬢は今頃完全に王子へ背を向けていたかもしれない。

「多分アーリアは、今セイラルがラルだと思っている。実際間違っては居ないが、私としてはやはり面白くない・・・・」

「普段ご自分に向けられるべき視線を私が奪っているからですね」

「お前のせいではない事は分かっているのだが、どうも思う様に感情がついていかない・・・・」

それはヤキモチを焼いていますと公言しているようなもので、マジミールは小さく笑った。

「良いですよ。幾らでも殴られますよ」

そう告げれば王子が苦笑いを浮かべた。

「いや、だが、・・・・そうだな。久し振りに憂さ晴らしに剣の手合せでも願おうか」

「ですが、それは如何かと・・・・。マジミールは謹慎を免れたとは言え、王子の部屋以外の従じ行為は極力控えるようにと言い渡されておりますので・・・・」

「ああ、そうだったな。だが剣の相手は従じ行為では無い。騎士としての鍛錬だ。私が許す。安心しろ」

「そうですか?」

「任せろ」

とは言え、何かあって咎められ、それをくい止めなくてはならないのは今現在王子に扮する自分だ。
とりあえず何か良い言い訳を考えておかなくてはと思いつつ、苦笑いを浮かべるとマジミールは王子の願いを聞き止めた。


晩餐の後、二人は騎士の宿舎の横にある練習馬場に身を置いた。
久し振りに二人で剣を交えていると、たちまち若い騎士等に取り囲まれて、辺りは黒山の人だかり状態だ。
結局、1セット練習を終えただけで若い者等がドッと押し寄せ、質問攻めに合ってしまった。
急遽立ち回りや受け流しの指導をする事になり、予定外だったが久し振りに良い汗をかいた。

そこには思わぬ収穫もあった。
若い騎士等を纏めているナタニードなる人物。
我等と同い年で、何とセイラル王子の乳母であるファンネの息子だった。
幼少期にかすかに一緒に遊んだ記憶もある。剣の腕も確かで、指導も的確。人柄も申し分無さそうだ。
何れまた時間がある時に話しがしたいと伝えれば、快く承諾してくれた。
今後において良い仲間に成りえるかもしれない。
セイラルは期待を胸に清々しい想いで自室へと向かった。
アーリアの待つ部屋へと向かう為に。

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