FC2ブログ

ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《3.衝 撃》

 ←ずっと心に決めていた《2.失 意》 →ずっと心に決めていた《4.本 心》
正式な発表は来月となるが両家の間では結婚に向けての話は順調に進んでいる様だった。
舞踏会で顔を見た事はあったけれど、真面に話しすらした事の無いドワイヤル伯爵子息、ロナルド・セオン・ドワイヤル。
だが結婚の話があって以降、彼は舞踏会やガーデンパーティ等の事ある毎にその場へ私を誘い、必ず同伴して行くようになっていた。
こうなると正式な発表は未だだが周囲の噂もかなり広まって来る。
更に1週間後には、私たちは周囲が認める公認のカップルに祭り上げられていた。
アレクとの距離は依然遠く、今となっては彼の態度に関わらず話す機会をも中々掴めない。
元よりアレクはあれ以来ずっと更に私との間に距離を置こうとしているようだった。
明らかに私を避けている・・・・。その様にも感じた・・・・。
アレクから想い人を奪って行く男と同じ顔をした者と寄り添い、いつも側に居る自分にアレクが嫌悪感を抱くのは仕方がないと思う。
煩わしいとすら感じているかもしれないと思うと、何とも言えないやるせない気持ちでいっぱいになった。

遠目でアレクを追いながら、思わず涙が込み上げそうになってしまった。
潤みかけた瞳を気付かれぬ様にと懸命に我慢していれば、隣で深いため息が聞こえて来た。

「何だ。・・・・君も彼の信者だったの?」

「えっ!?」

気持ちを見透かされたのかと、思わず身を強張らせて小さくなった。

「しかし凄いよね、彼は。あの年で若き侯爵閣下だ。今や王太子殿下とも懇親で、次の代では宰相の地位も堅いと言うもっぱらの噂だよ。出来る男であることは認めるけれど実際は結構容赦しない冷徹さを持っていると言うのに、女どもはすっかりあの容姿に騙されて。やはり表向きのあの爽やかさが曲者なのだろうね。女性と言うものは外見に囚われ易いと言うからね。君も例外にもれずと言う所かな?」

「そのような事は・・・・」

一般的にはそうかもしれないが、私がアレクに好意を寄せている理由は全く違う。私はあの母親想いの心根の優しい少年に恋をしたのだ。
8年ぶりに再会し、近寄りがたくなっていて最初は少し戸惑いを覚えたけれど、彼があの頃と変わらぬ優しい眼差しで見つめ返してくれて、あの頃のアレクシスのままだと思えたから直ぐに打ち解けられたのだと思う。
彼が侯爵だからだとか、御覚えが目出度いと言う事は一切関係なかった。

ロナルドの言い様にそうでは無いのだと否定したい気持ちもあったけれど、所詮そう告げた所で事態に何の変化も望めない。今更過去においての出来事を告げた所で何にもならないし、何より二人だけの想い出まで壊されてしまう気がして、そのまま言葉を濁した。

「まあ憧れた所で所詮彼は雲の上の人だよ。同じ貴族とは言え、彼の家は先王のお妃を排出した家柄だ。男爵風情の娘には良くて伯爵家の子息ぐらいがお似合いだと思うよ」

「そうね。確かにそうかもしれないわね・・・・」

その通りだ・・・・。
ロナルドの言う事は正しいと思う。
彼は物事を的確に捉え、おそらく行動を取れる人。今の私にはそれ以外の魅力は何も感じられないけれど、悪い人では無いように思えるからこのまま傍に居れば何れ好きになれるかもしれない・・・・。
ロナルドにしてみてもおそらく私に好意を持ってくれている訳では無いと思う。彼もおそらく父である伯爵の言いなりだ。
先程から私の横にありながら、彼の視線もまた私とは違う人物を捉えて離さない。その先にはいつも兄レナルドと婚約者ベルマール嬢の姿がある。きっと彼はベルマール嬢に想いを寄せていたのではないだろうか・・・・。

彼が視線を向けた矛先を見やり、深いため息を一つ零した時、やはり私たちは似たもの同士なのかもしれないと言う思いが芽生え、一瞬だけ彼との距離が縮まった気がした・・・・。

「ロナルド様は私との話を何時お聞きになったのですか?」

「さあ、何時だったかな。父からレナルドとベルマールの話が纏まった時に、お前にもいい話があるから気にするなと言われた。今考えればそれが貴女との話の事だったのだろうね」

「そんなに前に? 私はつい2週間程前だわ。父から突然告げられて・・・・」

「そう。・・・・でも、貴族同士の結婚と言うものは元々そう言うものだろう? 純粋な恋愛の上に成り立つ結婚なんてねほんの一握りだ。アイツ等みたいにね」

苦笑いを浮かべながら見入る視線の矛先には彼の兄レナルドとその婚約者ベルマールの姿。婚約が発表された時、相思相愛の幼馴染同士だと、ちょっとした話題にもなった。

「本当に幸せそうね・・・・」

「そうだな・・・・。けれど私の両親は親の決めた相手と結婚したけれど、それなりに幸せだったと思う」

「そうね・・・・。うちもそうだわ・・・・」

貴族の結婚とは確かにそう言うものなのだ。

(ならば、そろそろ私もアレクへの想いに終止符を打たなければ駄目ね・・・・)

フッとそう感じた時だった。
ロナルドの視線が突如揺らめいたかと思うと今度は突然目線を横に反らせた。
何処かくぐもった様な痛々しいその姿に、何があったのかと思い逸らせた視線の先には、唇を寄せ合い熱い抱擁を交わす幸せそうな恋人たちの姿があった。

(ああ、やっぱり・・・・)

彼も報われぬ恋に悩む、自分と同じ・・・・、同胞なのだと思うと同情にも似た感情が駆け巡った。

その瞬間、組んでいた私の腕をロナルドが急に強く握りしめた。

「いっ、痛いッ。ロナルド?」

「ねぇ、マリエッタ・・・・。私たちにはお互いを知り、より歩み寄る努力がこれからは必要だと思わないかい?」

縋り付くような眼差しでそう告げられた。

「そっ、それはそうだわ。お互いの事を分り合えなければ結婚なんて到底無理だわ」

「良かった。君も同じ思いで居てくれたんだね・・・・。ならば話は早いよね?」

「何が? えっ!?」

突然握られた手を強く引かれて連れられた先は、会場から少し離れた人気の少ない木々の囲まれた中庭の一角。
不意に抱き寄せられ、何時にも増して色濃く光ったロナルドの茶褐色の瞳が目の前に迫って来て、私は思わずその場で身を竦めた。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村




総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【ずっと心に決めていた《2.失 意》】へ
  • 【ずっと心に決めていた《4.本 心》】へ

~ Comment ~

NoTitle 

周りと結婚というのも結構大切ですよね。
周囲が認知していくうえで、カップルや夫婦というものは認知されていくもので、実感がわいていくものですからね。
私も付き合っている相手がいるときは結構、ほかのカップルとダブルデートみたいなものをやったものですからね。

LandM様 

そうですね。結婚に周囲の反応はやはりポイントの一つになりますよね。
自分たちだけでなく周囲の反応で多かれ少なかれ感化される部分はあるので。
ダブルデートですか。懐かしい。私もそう言えば一度だけしたことあります(笑)

いつもコメント有り難うございます。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ずっと心に決めていた《2.失 意》】へ
  • 【ずっと心に決めていた《4.本 心》】へ