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ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《11.胸 間》

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二つの強い視線に阻まれ、如何話して良いのか最早分らず、言葉を無くしてしまった。
けれどその瞳に宿る二人の色は全く異なっていた。
父は私を卑下するような強く鋭い眼差しで、一方のアレクは私に何かを訴えかけるような真剣な眼差しで食い入るように見つめていた。

「何だ!? 突然どうしたのだ?」

今まで父に逆らう事を結局あきらめていたような私から、まさか今になって否定される言葉が紡がれるとは思ってもいなかったのか、父が理由を問いただして来た。
けれど、嫌だと言う以外に告げる言葉が見つからない・・・・。

「ぃえっ、あの・・・・」

二つの強い視線に射抜かれて私は更に次の言葉を放つ事が出来なくなってしまった。
父の視線より、口から少しでも言葉を放とうとすれば向けられるアレクからの射抜かれるような強い眼差しが私にはとても重かった。
彼に見つめられれば見つめられる程に、どうしても本当の事が言い出せなくなってしまう。
アレクには・・・・、彼にはどうしても先程のロナルドとの経緯を知られたくなかった・・・・。

「・・・・ごめんなさい、お父様」

「その言葉は私では無く、お前を心配して探してくれている者達皆に言うべき言葉だ」

「・・・・はい・・・・」

確かに突然姿を消し、皆に心配をかけたのは自分だ。その件に関しては、とりあえずは謝っておく必要があると思った。

「ロナルドだけではない。伯爵等も皆お前を心配して手を貸してくれているのだ。感謝しなさい。さぁ早く無事である事を知らせてやらなければ」

父は傍に居た従者に伝令を託けると、再び私に視線を向けた。

(行きたくない!!)

「・・・・・・」

けれどその事を告げられなくて無言で後ろに佇むアレクを振り返ると、父は更なる苛立ちを露わにさせ、私の腕を鷲掴みにすると今まで視線を合わせようとしなかったアレクを見据えた。

「では、侯爵」

「・・・・・・」

アレクの横を通り過ぎる時、今まで彼を視界に入れようとすらしなかった感のある父が何故だか薄ら笑いを浮かべているように見えた。それが何故だか彼を蔑んでいるように思えとても冷たく感じられた。
アレクは無理やりその腕を引かれて行く私を食い入るように見つめると、一瞬だけ父と目線を合わせたが一言も言葉を返そうとはせずに無言でそのまま私達二人を見送った。
親子の会話に口を挟むべきではないと思っているのだろうか?
私に話しがあると言いながら、父からの声に無言を決めこむ彼の態度に二人の間の蟠りの様なものを感じずにはいられなかった。

「・・・・ごめんなさいアレク。・・・・お話しはまた今度うかがッ」

父に遮られ話をきちんと聞けなかった非礼を一言詫びておかなければと、去り際にアレクに断りを入れたかっただのに・・・・。

「マリエッタ、お前は黙って居なさい!」

またも突然怒号する父のあまりにも過剰な反応に、それすらも遮られた。

「お父様?」

私の声に我に返った様に少し慌てる素振りを見せる父の姿に、言い様の無い不信感が芽生えた。
父はもしかしてアレクとの間に、やはり何かあるのではないかと言う疑念が私の頭を巡らせた。

「何でも無い。行くぞ!」

後ろ髪引かれる思いでアレクを見つめる私の腕を、有無を言わさず強く握り締めると父は足早に歩き出した。
父が来なければ、一体アレクは私に何を聞きたかったのだろうか!?
途切れてしまった話を繋ぐことが出来ないまま、私は苦々しい思いでその場を離れる事しか出来なかった。

遠ざかって行く私を見つめるアレクの、何処か辛そうにも見える眼差し。
私は目頭が熱くなるのを感じながら、そっと諦め目を伏せた。

けれど・・・・。

「・・・・虚実を・・・・申していたのですか?」

突如ゆっくりとした口調で放たれる重々しい声。

「えっ、?」

「私には・・・・、とてもマリエッタ嬢とあの者との仲が・・・・、貴方が告げたようなものには思えない!!」

アレクから公衆の面前である事も顧みずに突然告げられた言葉に、私は驚き父を見据えた。

親子喧嘩を仲裁的立場で温かく見守っているのかと周囲から好意的に思われている様子だったお優しい侯爵様の立場は、瞬く間に一転して、突如好奇の目で曝される事になってしまった。

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~ Comment ~

NoTitle 

この世界でも父は強しですね
それはそれで父は身を案じているのでしょうし、
それがセリフで表れているところが妙であり。
人と人とが絡み合って楽しいところですよね。

LandM様 

そうですね。今回の父は今までの父とは一味違うかな。
違う意味で強い方かもしれません。結構我が強いです。
自分の手のひらの上で泳いでくれている間は良いのですが・・・・。娘の事は心配ですが、それに比例して譲れない事もあると言う^^;
後継ぎのいない家の父も結構大変です。

いつも有り難うございます。
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