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ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《20.謎 人》

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父を介して私が行方不明だとの連絡を受け、一緒に探している時の事だったそうだ。
同じく人探しをしている、見るからに高貴な衣装に身を包んだ貴婦人に声を掛けられたらしい。


『ねぇ貴女、マニエール男爵夫人をご存じない?』

『えっ!? あの・・・・』

『ああ、いらしたわ! 貴女がマニエール男爵夫人ですわね。そうでしょ? 良かったわぁ。そのマリンゴールドの瞳はお嬢様にそっくりですもの』

『あっ、はい。あの・・・・確かにそうですが・・・・、あの貴女様はッ・・・・』

突然声をかけられ、姿をまじまじと見つめれば、今まで近くで目にした事も無い高貴なお方。驚き、母は慌てて頭を垂れたと言う。

『ああ、お止しになってそのような事は。だからこの様な場は苦手なのよ。それよりも少しお話をしたいのだけれど。お時間を頂けるかしら?』

『はっ、はいッ。勿論』

とても断れる状況では無かったらしい。

『出会ったばかりの貴女に、この様な事を突然申し上げるのは不躾になるかもしれないけれど・・・・、敢て聞いて頂きたい事があるの』

『は、はい、何なりと・・・・』

『もし、お嬢様の事でお心を痛めている事がおありの時は何時でも我が家にいらして頂きたいのよ』

『はぁ!?』

『いえ、誤解なさらないでね。先程涙に濡れているお嬢様の姿を拝見したのよ。その姿があまりにも痛々しくて・・・・』

『マリエッタに・・・・、娘にお会いになられたのですか? 一体どちらで?』

『いえ、あちらの裏庭の方で少しだけね。垣間見たと言う方が正しいですわね。聞けばご婚約がお近いのだとか。そういう時期は色々と心が乱れるものですわ。父親では手の届かない事も多いですからそこは夫人が気をつけて差し上げてね』

『はい・・・・。色々とご心配頂き有難うございます』

『全てがそうだとは申しませんが、時として結婚は心に深い傷を齎すものです。私等は訳の分らぬ幼い頃より相手を決められていたものですからそれなりの覚悟も持てましたけれど、この年頃になって急に決められた縁談と言うものは、時として心に深い傷となる時もあると申しますわ。特に親に言えぬまま心に秘めた殿方が居たりする話は後になり良く耳にします。不憫ですわよね。中々に難しい事かもしれませんがそう言う時は、お嬢様の意を汲み取ってやって頂きたいの。ほら、男親では何かと気付かぬ事も多いですから、その時は是非我が家を頼って頂きたいの』

『はぁ・・・・、それはお心遣いを頂き、有難うございます・・・・』


言われた言葉に半信半疑に返事をして、粗相のない様にとりあえずは対応し、その場は別れたと言う事だった。

「あの時は何故その様な事を突然告げられたのか言葉の意味が上手く飲み込めなかったのだけれど、今考えると侯爵夫人は何処かで貴女の事を色々とお聞きになっていたのかもしれないわね」

「えっと・・・・それはどう言う・・・・?」

「分らないわよ。けれど、これは今考えても先ない事でしょう? どうしても貴女がこの婚約を受け入れられないと言うのならば身を隠す以外に何が出来て? それとも貴女には今のお父様を説き伏せられる妙案でもあると言うの?」

「それは・・・・」

とても今の現状で、あの父を説き伏せられるとは思えない。

「ならば行動するしかないでしょう? それともこのまま修道院にでも逃げ込むつもり?」

確かに父から逃れられる道はその二つしか残されて居ないだろう。
誰にも迷惑をかける事無く、このまま院に逃げ込むのも一つの手かもしれないとチラリッと思ってはいたけれど、もしそうなればアレクとの約束はきっと果たされる事無く終わってしまう・・・・。
彼が縋る様な眼差しで私を見つめ告げようとしてくれた言葉が、私には如何しても気になって仕方無かった。

「分かったわ。お母様行きましょう」

思いを決め、母と共に既にもう明け方に近い時刻の早朝、私達はベアレーゼ侯爵家の正門を潜り抜けた。

『この様に朝早くに何事だ』ときっと咎められ、門前払いを告げられるに違いないと腹をくくっていたのだが・・・・。

「ああ、貴女様方が・・・・。奥さまよりお話しは伺っております。それはお困りだったでしょう。奥さまはまだお休みですが、事情は伺っておりますので、さあ、どうぞ早く中へ・・・・」

何事も無くすんなりと受け入れられた。
母に縋り付くように寄り添う私に、執事はとても同情的な眼差しを向けてくれた。
余程頬の腫れが痛々しかったのか?
やはり何かを知っているに違いない。私達は直ぐに応接室へと通されると、火をくべたばかりの暖かな暖炉の傍で、差し出された暖かな紅茶とマフィンを二人して口にする事もせず、唯々夫人の訪れを待った。

何分待っただろうか?
注がれた紅茶から湯気も消えた頃、応接室の扉がノックされ夫人の訪れを知らされた。

執事の声に母と二人して扉の前に目を向け扉が開かれた途端、私は視界に入って来た侯爵夫人の姿を目にし、震える眼差しで凝視すると思わずその場に立ち上がってしまった・・・・。

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NoTitle 

修道院というのも最終手段でもありますが。
それでもいいですが。
この辺はさすがに作風が出ていて良い味が出ているなと
設定面で関心致すところでございます。
!(^^)!

そういうえば、今更というのもあるのですが、
リンクをつなげてもよろしいでしょうか?

LandM様 

やはり修道院設定は私にとって保険的選択でした。
最初の設定では修道院かそれに代わるものとしか考えていなかったのですが、やはりその後ただの修道院設定は定番すぎるので保険として考えて、出来れば却下で考えていたら今回の設定が降臨しました^^(どのみち叔母上は絡ませる予定だったので)
些細な自己満足の世界だなぁと思っていましたが、そう言って頂けるととても嬉しいです^^

そういえばそうなんですよね。今更ですが勿論リンクOKですよ。
宜しくお願い致します。
私もリンク貼りたいと思いつつ、勝手には不味いからいつか聞いてみたいと思っていたので私も宜しければリンク貼らせて下さいね。

いつもコメント有り難うございます。
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