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パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第6章1》

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宿代は前金で既に支払っており、早朝出かけると話してあったので、お礼の置手紙をダイニングのテーブルに置くと、4人はまだ夜も明けぬ間にナグラの町を後にした。

いつもの様に先頭をフリードルが走り、ローレライ、ルシオン、ランドンと続く。
走るペースは何時もよりかなり早く感じたが、それでもフリードルはローレライを気遣い途中途中で休憩を取る事を怠らなかった。
ローレライも昨夜のフリードルの表情が気になっているのか、気が急いているようにも感じられ必死に付いて行っている様子が伺える。



予定よりも3時間も早い正午過ぎ、4人は目的地トランゼの街に到着した。

街は今まで通って来た幾つかのどの街よりも活気があり、行商人の馬車も多く行き交いしている。
我が国の現在の情勢を思うと、こう言う街が今も存在している事にローレライは驚きを隠せなかった。

更にこの場所でもフリードル行きつけの常宿があるらしく、彼にはどれ位常宿が存在するのか、彼の現状が今どのような状況下にあるのか、興味は尽きない。
街へ入ると一番にその常宿を尋ねた。
サングリアの街同様、少し待つようにと言われ、フリードルを宿の前で待っていると黒衣の男と一緒に出て来た。
またしても黒衣の男。
もしかして、この黒衣はフリードルの仲間内で決められているものなのだろうか?
サングリア同様、また一緒に馬屋まで行くと。

「では、頼む」

「了解です。エル様」

黒衣の男は傅き馬を引き取ると、馬屋の奥に括りつける。
続いて我々の馬達にも同様に慣れた手つきで括りつけると世話を始めた。


「あの人も仲間なの?」 

「そうだ。ここは色んな意味で良い情報源にもなる場所だから随時数人の仲間が交代で滞在している。サビエルはまだ着いていないようだ。荷を降ろしたら食事に出よう。案内する」

そう言い宿の主と何やら話をすると、部屋の鍵だけ渡され、勝手に部屋へ上がって行く。

「こっちだ」

本当に、かなりの常連のようだった。

ローレライの荷物は半分フリードルが持ってくれ、部屋の前で鍵を受け取ると各々自分の部屋へ入って行った。

ローレライは荷物を降ろすと備え付けのベッドに腰を下ろす。
暑かったので中着を脱ぎ、上着の上から脱ぎ着出来るようにと薄手のものを荷物の中から探る。その時どういう訳かこの町にはローブの付いた外套を纏っている者がかなり多い事を思い出し、1枚だけ持って来た深緑のローブの付いた外套を纏った。
人が多い場所では出来るだけ風貌を隠せた方が目立ちにくいと言う利点もあるから、それはローレライにとっても好都合な事だった。

部屋の前に出るとルシオンとランドンはそのまま変わらぬ格好だったが、フリードルは先程の仲間と言う人たちと良く似た黒衣の上から裏地が緑色の黒いマントを身に付け外套を纏っていた。

「では、行こうか」

フリードルに案内され、後に続いた。

宿から5分ほど大通りを歩くと途中で路地を左へ曲がり何か所か左折右折を繰り返しながら辿り着いたのは石造りに焼き付けて黒くしてある木製の扉の店だった。

「ここだ」

フリードルを先頭に、少し重厚な造りに感じられるその店にドキドキしながら入って行く。するとそこには、フリードルや先程の者と良く似た黒衣を纏った男が数人、客に交じって座っていた。
フリードルの姿を見つけると、その者達が皆傅かないまでも、目配せしながら挨拶をしているのが伺える。
皆エルの仲間に違いないと思われる。

席はおそらくエルとしてのフリードルの定位置なのか、着くと店の主人が直ぐに現れた。

「いらっしゃいませエル様。先日おいでの折には暫くお来しになれないと仰っておいででしたので残念に思っておりましたが、早くにこの様にお会いできて嬉しゅうございます」

「ああ、少々事情が変わって暫く滞在することになった。また頼む。私の友人達だ。食事はここに寄らせて貰うから顔を覚えておいてくれ」

「心得ております」

「食事は出来るものでいい。サビエルが来たらここへ案内してくれ」

「畏まりました」

主人はエルの言葉に瞬時に対応し判断すると、効率よく反応して行く。
一礼をしてから10分程で直ぐに料理が運ばれて来た。
出て来たのはハーブの香りの蒸し鶏と付け添えられた野菜に暖かいスープ、それにふわふわの白いパンだった。
イシュラルでは卵やチーズは館で作ったものを良く食べていたが、肉と言うものは近頃ではイベント事で飼っていた鶏をたまに口にする以外、殆ど口にする機会がなかったので皆料理に堪能し、とても満足そうな様子だ。

食事を終え食後に紅茶を飲んで寛いでいると、店にまた一人の黒衣の男が入ってきた。
店に入ってまだ30分と言う所だが、既にここには何人もの黒衣の男が出入りしていた。

そして今入って来たのは、サングリアで出会ったサビエルと言う男だった。
周囲を見渡し直ぐにフリードルに気付くと、店の者の案内を断りこちらへやって来る。
空になった皿の様子を見ると、一礼をした。

「お食事はお済で?」

「ああ」

「少々、宜しいでしょうか?」

フリードルを呼び出し店の隅で何やら話をはじめた。


様子を伺っていると、話の途中でフリードルがかなり驚愕しているのが伺える。
頷き、意見を交わし……、何の話をしているのかは分らないが、如何やらじきに話はついたようで、こちらに向かって二人で戻って来た。

「すまない、急用ができた。サビエルが護衛についてくれるから、帰るまで彼の指示に従ってくれ」

「えーっ、突然何だよ。いきなりなんだな」

「すまない。本当に急用なんだ」

「急用ねぇ」

「ルシオン様、この店の今の空気を読んで下さい」

「空気?」

「お兄様、静かにして」

「ちぇッ」

サビエルが入って来てフリードルの前で一礼をし、二人して店の隅で話し始めてから、この店の空気が少し変わった気がした。何処がと言われても説明はできないが、何か張りつめたものをローレライも感じていた。

「では、サビエル。頼んだぞ」

「はい。行ってらっしゃいませ」

サビエルは傅き、フリードルは店の中にいた一人の黒衣の男に声をかけると一緒に店を出て行った。


フリードルが出て行ってからサビエルは言われた通り、席に一番近い柱の陰にずっと立ち待機している。
絶え間なくこちらに注意を払いながら店内の様子を伺っている。
このように監視されていると、紅茶もゆっくり落ち着いて飲めないと思いながらも、3人とも流石にそれを口に出すことが出来ずにいた。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。


現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章5(34話分)まで改稿中です。

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