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信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第13話(シルビア視点)

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少し気分も落ち着いて来ると、今日はまだ屋敷の任されている事に、何一つ手つかずだった事を思い出した。
この屋敷の事は私が嫁ぐまで全ての使用人の統括は執事に一任されていたと言う。
だから私が休んでいてもおそらくは屋敷の中は機能するだろうし、そう問題も無いのかもしれないけれど、それでも本来女性使用人の管轄を任されている身としては、日に一度の見回りは欠かせない。通常どの屋敷でもこういう事は女主人か或いはそれを任せられる長年屋敷で働いている女給長の役割だ。我が実家では殆ど女給長がその役割を担っていたが、ここには私が来るまで女性の使用人の数も少なかった為、そのような役職の者は居なかったのだと言う。その為、嫁いで来た時に

『今後女性使用人の統括と役割についての事は貴女に任せる。詳細などについては執事から引き継いでくれ。一通り慣れた後は信頼のおける者に任せてもいいし、そこは貴女のやりやすいようにやってくれて構わない』

と旦那様から告げられた。
以来ずっと屋敷で多くの女給が出入りしている部署は、私が管理を任されている。
その中での一番楽しみな作業は屋敷内に飾られる花の種類や配置を考える事。
私の衣類や旦那様との二人の部屋の清掃は、私の侍女や他の実家から連れて来た者に任せてあるし、旦那様の私室での身の回りのお世話は担当の従者がいるのでその事は彼のやりやすいようにと任せてある。他の部屋についても今まで通りの担当の女給に任せて、統括的なものだけを私が管理していると言う感じだ。
皆よく気が付くし、この屋敷は本当にいつも良く磨かれている。

とりあえず今日も部屋の見回りだけでも始めようと、気分が良くなってきた通常ティータイムの時間である午後3時過ぎ、寝台を抜け出そうとしたら侍女に止められた。

「奥様、あまりご無理はされませんように……」

「大丈夫。今は少し気分がいいの。お薬と甜瓜の効果かしら? しばらくは、食事は甜瓜だけで良いわ」

「あっ、はい……」

侍女は心配そうにまじまじと私の表情を伺っている。

「病気ではないのだし、気分転換に応接室とか大切なお部屋だけ少し回って来るわ。お花のチェックをしたら少しお庭を歩きたい気分だし」

「そうですか? でしたら、私もご一緒致します」

「これぐらい大丈夫よ」

「ですが、もし途中で具合でも悪くでもなられたら……」

「もう、エドナは心配性ね」

「旦那様からも『くれぐれも頼む』と言われておりますから」

「そう? だったらお庭には一人で出ないようにするわ。それなら良いでしょ?」

「はぁーっ……、仕方ないですねぇ」

ため息をつきながら、半ばしぶしぶという感じで、侍女エドナの了解を取ることが出来た。
4歳年上の彼女とは、私が13歳の時からの付き合いで、旦那様との恋の悩みも多く聞いてもらった間柄だ。
尼僧院へ駆け込んだ時も付き添ってくれているので、私が一度言い出したら中々利かない性格だということを良く知っている。

「では、これをお羽織り下さい。お身体を冷やされるのは良くありませんので」

肩に長めのショールが掛けられた。

「有り難う」

腰元まで冷やさないようにゆったりとした長いショールは、先日旦那様からプレゼントされたばかりの品だ。
つけ心地に満足した私は足元を十分に注意しながら、右手で前を合わせると左手を階段の手すりに添えながら慎重に下りて行く。
下りた先で一番最初に目に飛び込んできてのは、寝込んでからずっと気になっていたエントラスの花だった。だが目にした途端胸を撫ぜおろした。
エントランスは邸の顔となる場所だ。来客時に失礼があってはならないから、今自分が任されている仕事の中で最も気にかけている場所だった。
飾られているメインの花は昨日のままだけれど、周りに添えられている花が一部変わってとても良いバランスを保っていた。これもきっと執事が指示を出し変えさせたのだろう。とても有り難かった。
これから執事に迷惑をかけてしまうことも多くなるかもしれない。後で一言断りを入れておかなくてはと思った。

エントランスから左の廊下を奥へ進むと、厨房へと続いている。
料理長に先程のフルーツのお礼に行こうと奥へと足を進めていると、思いがけず途中で引き返さなければならない状況に陥ってしまった。
だいぶ良くなってきたと思っていたけれど、夕食の支度に取り掛かっているのか色んなものが混ぜ合わさった匂いが途中から漂ってきて、我慢が出来ずに結局それ以上奥へ足を踏み入れることが出来なかった。
情けない……。
けれど今はこれが精一杯だ。仕方ない。後で旦那様からもお礼を言ってもらう事にしよう。

続いて先ほど汚してしまった大量の洗い物のお詫びに行こうと洗濯場に足を向けてみた。
中ではこちらを背にして何やら懸命に揉み洗いをしている様子の給女等の姿。
ただですら屋敷での洗い物は多く、力仕事になると言うのに本当に申し訳ない。有り難い限りだ。

「今日は余計な洗い物を増やしてしまって、申し訳なかったわね。別に急ぎではないからゆっくりしてくれて構わないわ」

と優しく声をかけたつもりだったのだけれど、中にいる給女から酷く驚かれてしまった。

「おっ、おお……、奥さま!?」

「えっ? 奥様ですって?!」

「早く隠してッ!」

(えっ? かく……して??)

かなり慌ただしい様子。
一体どう言う意味なのだろうか?
私はその言葉が気になり、部屋の中へと入っていった。
するとそこには部屋の隅には廃棄用の袋に入った血の付いたボロボロのシャツ。

「……誰か怪我でもしたの? 誰?! 先生にはもうお見せしたの?」

「いえ、それは……」

「もう、バカ! そんなこと言ってバレたら執事様に怒られるわよ」

「えっ?」

その言葉に驚いた給女が、思わず今洗っているらしき衣類から手を放してしまった。
洗濯液に浸かっている衣類に目を向けてみれば、その液は衣服から染み出たような茶褐色に染まっていた。
直ぐ横に目を向けてみれば、そこには洗濯済みのような旦那様のマント。

「まさか……、旦那様……、お怪我をなさっているの?」

「いえ、あの……これは……」

「あの袋に入っているシャツも……、もしかして旦那様の……」

「いえ、あれは……、あの、スウェーデン様がお怪我をなさって……」

スウェーデンと言うのは旦那様の従者の名前だ。確かに似たようなシャツは着ているけれど……。

「……でも、その今浸かっているのは旦那様の正装着……よね?」

「「!!…………」」

給女達は口を急に閉ざしてしまった。

私は更に奥へと足を進めると、震える手で廃棄される袋の中に入っているシャツに手を伸ばした。

「あっ、いけません、奥様ッ!!」

手に触れるシャツの素材は明らかにシルクの肌触り。旦那様のもので間違いない。
そして袋から取り出した途端、私は再び吐き気に襲われ、その場に蹲ってしまった。

「うぐッ……」

「ああ、奥様ッ!!」

「誰かッ、早くバトラーを!」

「早く奥様をお部屋へお連れしてッ」

今の臭いは……、何?

旦那様の汗の臭いとともに感じる血なまぐさい臭いを打ち消すような鼻に突く香水の匂い……。
あれは明らかに女性ものの香水の匂いだ。

「旦那様……、如何してッ……」

「あっ、奥様ッ!!」

私はその場から直ぐにでも逃げ出したくて、立ち上がった途端、眩暈に襲われた。
そして倒れる寸前の所を、執事によって支えられたようだった。

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~ Comment ~

NoTitle 

またまたまたまたま~~~~。
こんな変化球を投げてくるとは涼音さんも意地悪ですねえ。。。
(;一_一)

お母さんは精神的にも身体的にもリラックスを!!
・・・ですよ。

シングルマザーの妊娠で病院にやってこられたときとか、
私も何を話題にしたらいいのか困った記憶があるじぇ。。。
(;一_一)

LandM様 

お返事遅くなりました。

本当に、どこで発見させようかと考えていた時に、つい筆が走ったので思いのまま~(笑
シングルマザーでって、ホント色々複雑すぎて触れられない事も多いと思うので大変そうですね^^;
まだ未発表の作品では、最初はシングルマザー設定の話もあったりー^^;
それが日の目を見るか見ないかは神のみぞ知る~(苦笑

いつもコメント有難うございます。
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