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信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第22話(シルビア視点)

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旦那様が、私の事を大切に思って下さる気持ちは、本物なのかもしれない……。
けれど、今の状況で如何すればそれが私一人に向けられるものだと信じられると言うの?
今のままでは、私はこの先旦那様が外出する度に、ゆっくり休む事すら出来なくなってしまうと思う……。

最初は旦那様の側にずっといられるのならば、贅沢な事を望んではいけないと自らに言い聞かせて来た結婚だった。けれど、旦那様は私だけだと言ってくれた。
その言葉はとても嬉しかったし、ずっと続いて行くものだと信じていた。
けれど今は裏切られた……。そんな思いが溢れている。
もしかしたら心の何処かでは、こういう日がいつか来るのではないかと言う危惧する気持ちを拭い切れずにずっと持っていたかもしれない。
昨日までの私は、旦那様の側に居るだけで幸せで……、満ち溢れた気持ちになれた。だから誰かと旦那様を共有する日がこんなに早くに訪れるなど、夢にも思っていなかった。

いつか訪れるかもしれないと思っていても、現実を突き付けられた直後の精神的負担は、かなり大きいものだ。
加えて今の自分の身体的状況を思えば、それは決して好ましいものだとはとても言い切れない。
自分自身の心情的問題は、胎教に少なからず負担をもたらす事はおそらくは拭い切れず、それは出来る事ならばこの子の為に……、少しでも心安らかに過ごしたいと言う私の想いを否定させるものでしか無くなってしまう……。
だから私はせめてこの子の為に、何かあるならば包み隠さずに全てを告げて欲しいと思った。このように大きな出来事を受け入れるには、少なからず心の準備がいるものだから……。
だから何処か煮え切らない……、今の旦那様の口先だけ言葉など聞きたくも無かった。
旦那様が私に何か隠し事をしている事は明白で疑う余地は無い。
その真意は分からないが、分からないままでは今の私に安らぎの時間など有り得ないと思った。

誰かと旦那様を共有するの? 誰と!?

そうしたいとは思わないけれど、それで旦那様を繋ぎ止めておけるのならば、今はこの子の為に耐えるしかないのだと、心に深く思いを刻んだ。
告げられる言葉がどんなに辛いものであったとしても、この子の為ならば耐えて見せると覚悟を決めた……。
心で旦那様を繋ぎ止めておくことが出来なくても、今の私にはこの子がいる。
旦那様から貰ったこの小さな命だけは……、今は私だけのもの。
この子だけは誰にも奪えない!
大切な、大切な私の宝物……。
なのに私は己の精神的な弱さから、またしてもこの子を危険な目にさらしかけてしまった。
なんて私は弱い母親なのだろうか……。
私はまだ膨らみのない腹部にそっと手を当て、芽生えて間もない命に言葉をかけた。

(弱いお母様で、ごめんなさい……)

だから強くならなくては。この子の為に……。
強い母となって、何があってもこの子を守ることが出来る母親でありたいと、心からそう思い奥歯を噛みしめた。

「どっ、どうした? 何を泣いているのか!?」

腰をかがめ、心配そうにこちらを覗き込む旦那様の言葉で、私は頬が涙で濡れている事に気付いた。

「具合が悪いのか? だったら直ぐに医術師をッ!」

この子の為に……、強く!

「……いいえ、結構です。その必要ありません!」

私は気丈な声で旦那様の言葉を払いのけた。
これは私自身の心の問題。医術師の先生に診て頂いた所で、何の解決が出来るものとも思えない。

「だが……」

私の中に渦巻くこの思いを払拭できる者がいるとすれば、それは唯一人だけ。旦那様をおいて他にはいない。だから医術師が解決できるもので絶対に無いのだ。

旦那様は今回の事を、遅くなったから宿舎で仮眠だけを取って帰って来ただけだと私には告げていた。
だが、宿舎で仮眠を取っていただけの者が、不意打ちのようにあのように血にまみれの破れたシャツに女性ものの香水を匂わせて居るものだろうか?
如何考えても、そんな事は絶対にあり得ない!
宿舎に夜勤の給女が居ると言う話も、いまだかつて聞いた事も無い。
ならば考えられることは唯一つ。旦那様はやはり私に嘘をついていた……。と言うことになる。

……もしかして、以前懇意だった女性の所へ、行っていたのかもしれない……。
そんな思いが脳裏をかすめた。
私が動けない事を良い事に、再び顔を出し、そして……。
先程の夢の中の出来事が、再び私の心をかき乱す。
だが、あれは夢なのだと……、それを否定する自分も存在している。
だから、そこに迷いが再び生じる……。

旦那様は私だけだとあの時告白してくれた。
正直に、真っ直ぐな瞳で私を見つめ、それまでの事も包み隠さず話してくれて、私は旦那様の言葉をこれからは信じていけると、そう思った。
想いを告げてくれてからの旦那様は、今まで本当に優しかったし、もうきっと他の方の所に通う事はないだろうと信じられた。数時間前までは……。けれど……。

あの夢で見た事が現実の事のように如何しても思えて来てしまう。
考えれば考える程それは払拭できないものとなり、私を大きく悩ませる。
そして私は大きく首を振った。

「そんなこと……」

「……シルビア?」

思わず零れ出た心の声が旦那様を信じたいと訴えていた。
けれど、そう思いながらも、心の何処かでそれを否定させられ、挙句にはあのような現実を目の前に突き付けられては、やはり如何しても信じきれないッ。
あの血に染まり、裂け、鼻に突く異臭を放つ旦那様のシャツ。あれは紛れも無く突き付けられた事実だ。
ならば私は現実を真摯に受け止め、強くなる為にその事を踏み台にして、今から気丈に生きて行かなければならないのでは無いのか?
あの時倒れ、自分の精神的弱さから、この子を危険にさらしたかもしれない事も重く受け止めなければならない。今思い出すだけでもあの時感じた衝撃は苦しい程に胸が痛くなる。
突き付けられた現実は否定できない……。
ならば私はもっと強くならなくてはッ。この子の為に!
私には、この子を守らなければならない義務がある!!
この子を守る為ならば、私は何だって出来る覚悟なのだから、絶対に強くなれる筈だ!

私は目を反らさずに真剣に旦那様を見つめ返した。
旦那様は何処か訝し気な表情の私を見て、何も気づかないのだろうか?
おそらくは再び燃焼した恋の病に惚けていて、鈍感になっているだけなのかもしれない……。
私の想いに何の理解も示そうとはしていない旦那様の様子に落胆を覚えながらも、私はお腹の子に勇気を貰い、旦那様を再び強い視線で睨めつけた。そして……。

「……せん……たく場の……」

「んっ?」

「洗濯場の……、脇に女性ものの香水を漂わせ、血に染まり破れたシャツが廃棄されておりました。その件について旦那様に是が非でもお聞きいたしたい事がございます!」

私は声を震わせながらも、強い意志を持ち旦那様に問いかけた。

「っ!!…………」

私の気迫に満ちた眼差しは、旦那様には衝撃的だったのか?
一瞬目に見えて旦那様が息を呑む様子が伺えた。
私はすかさず更に勇気を振り絞ると、言葉を畳みかける。

「あの……、破れたシルクのシャツは間違いなく旦那様のものでした。最初は夥しい血痕に何かあったのかと心配も致しましたが、あの香りで私はっ……ぅぐッ」

突如数時間前の……、あの時の鼻腔を擽られた生々しい臭いと香水の忌々しい香りが思い出されてしまい、私は再び胸の奥に何かが競り上がって来るのを感じ、口もとを両手で慌てて塞いだ。

「しっ、シルビアッ、大丈夫か!?」

「触ら……ないでッ!」

身を乗り出し、背をさすろうとする旦那様の手を、私は必死に払い除けた。
今は、どうしても触れられたくは無かった。他の人を抱いたかもしれない手でッ……。

「し……、シルビア……」

私の突然の反応に呆然と立ち尽くす旦那様を尻目に、燭台に置かれた呼び鈴に私は手を伸ばす。
すると直ぐに待機していた侍女が駆けつけて来て、旦那様の脇をすり抜けると処置用の容器を私の目の前にかざし、手を添えた。

「ああ、奥様ッ……」

「ぅぐぐっ……」

「…………」

旦那様はその姿に、ただ茫然と……、放心状態になりながら見ているだけだった。

胸の中に痞えていた物を何とか吐き出すと、やがて気分も少しだけだが再び楽になる。
軽く用意された冷水で口をゆすぎ、侍女に礼を言うと直ぐに下がらせた。旦那様との話はまだ終わってはいない。

「……大丈夫……なのか?」

「ただの悪阻ですから、お気遣いなく」

「だが……」

「私には、旦那様に全てをお聞きする権利がございます!」

「はぁ――っ……」

旦那様は私の言葉に、大きなため息を一つつくと、項垂れた。

「……見てしまっていたとはな……。早急に処分するように言っておいたのだが……」

(はあ? 処分!?)

やはり……、旦那様はあの事を隠すつもりだったのだ!

旦那様の言葉に、私はまた収まりかけていた思いが、ふつふつと煮えたぎって来るのを感じた。

「私にお隠しになったまま、また以前の方の所へ通われるおつもりだったのですね?」

「えっ?」

「確かに……、今の私は旦那様の御相手も出来ませんし……、旦那様にご不自由をさせてしまう事は、申し訳ないとは思います。ですが……、私がこのような状況の時にと言うのは……、何処か酷すぎは致しませんか!?」

「……何を言っている!?」

「空惚けるのですか!?」

「違う!」

「昨夜は何方とお会いになられていたのですか? 城に上がっていただけでこのような流血事が容易に起きるとでも!? それも女性の残り香が付きで!ふざけないでください!!」

「だから、それはッ!」

「いい加減、お吐きになって、スッキリなさっては如何ですか? 私はもう……、疲れてしまいました。何を聞いても最早驚きはしないので、仰ってください!」

「私を……信じてはくれないのか?」

「この状況で、旦那様を信じられるとでも!?」

私はキッパリと、旦那様を否定する言葉を投げつけた。

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~ Comment ~

NoTitle 

信じる信じないは。
その人次第なんですけどね。。。
ちょっと深いテーマですね。

信じれば救われる。
・・・という時代は終わりましたからね。

昔は宗教が心を救ったのでしょうけど。
今は宗教だけでは心は救えませんからねえ。。。
緩和ケアでもキリスト教や神道が採用されてますが。
もうちょっと、日本も宗教的要素とか取り入れてもいいのかなあ・・・・。。。
・・・と医療現場でも思う次第です。
科学は宗教じゃないですからね。
科学で人の身体は救えても人の心は救えないですからね。

(*´з`)



涼音さんが忙しいのは仕方ないので。
また、暇なときによってくださいませ。
涼音さんは古参の人なので。
私にとってはブログで大切な人です。
(*´ω`)

LandM 様 

今晩は。
返信遅くなりました。

信じる信じないは最終的にはその人の心の問題ですものね。
宗教によって救われるなら、周りにさえ迷惑をかけないのならばそれはそれで良いのかもしれませんが、緩和ケアにしても確かに色々と難しいものがあるのはあるし。
化学は日々進化をし、有り難い所も多々ありますが、人の心を救うのは最終的な心のケアと思っているので、頑張って貰いたいなあと思う次第(笑

いつもコメント有難うございます。
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