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信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第26話 (シルビア視点)

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状況から言って、旦那様になすすべがなかった事は理解できるのに、とてもその事に直ぐには感情がつて行かない。

「如何して、こんな事に……」

一方通行の恋だと分かっていながらも、お父様に話を纏めてもらい無理やり旦那様と夫婦になったのは、例え思いを交わすことが叶わなくとも、旦那様にとっての唯一の……、特別な存在になりたかったから。
旦那様には幾ら思いを交わす相手はあっても、その方々との間には決して子を儲けることが許されない。その事が分かっていたから、妻となり、子を成すことに全ての望みを託した。
子を授かり、真の家族になれれば、或は私との間には新たな関係性が芽生えるかもしれない……。
けれどそんな中で、婚姻早々思いもよらぬ事態が勃発した。
旦那様が懇意にしていた相手の一人が、懐妊したと言うのだ。
けれど、相手は夫のある身。夫との間の子という事も考えられると自身に言い聞かせ、探りを入れさせた結果、どうやら夫には執着している愛人がおり、久しく会う事すらしていないとの事だった。

だとすれば……。

ローゼリアン伯爵家には、まだ子は無い。
旦那様は初婚。過去において通われていた方々との間にも、誰一人として子は儲けられてはいなかった。

『夫以外の殿方との間のお子ですってよ』

『まあ、それで離縁されてご実家に?』

『あら、お身受けなさると言う話を聞きましたわ』

旦那様が、その方を迎え入れるのは確実な状況だった。
旦那様の唯一の存在になれるかもしれないという私の儚い願いは、この時見事に打ち砕かれた。

それでも、正妻は私だ。
何を言われようと、私はこのまま旦那様の許に留まる事が許される存在だ。
そうなれば、週に一度の関係だけれど、旦那様との間にいつしか私も子を授かる事が出来るかもしれない。
そうすれば少なくとも旦那様との間に家族関係は成立することはおそらく出来る……。
旦那様は子供好きだ。
けれど、決して旦那様にとっての、唯一なる存在にはおそらくはなり得ない。
ならば、いっそのこと……。
長い間、旦那様と情を交わしてきた相手に、若いだけが取り柄の婚姻間もない妻が太刀打ちなど出来る筈もないと思うと、全てが終わった事のように思えだ。

旦那様は週に何度も通われているというその方に、今までどのような愛の言葉を囁いたのだろうか?
週に一度だけの、形式的に夫婦として躰を重るだけの妻の身には、分かろうはずもなかった。
愛の言葉すら囁かれたことのない妻には……。

嫁いで来た時のかすかな望みは脆くも立ち消え、私はついに……、旦那様との離婚を決意した。

『……離婚しましょう、旦那様ッ』

けれど、意を決した私の言葉に対し、旦那様からは信じられない言葉が返ってきた。
旦那様の口からは、私に対する賢明なる愛の告白が紡がれた……。
それは、にわかには信じがたいほどの、熱のこもったものだった。

(旦那様が……、本当に私の……事を!?)

旦那様の表情は真剣そのもので、本当の想いに触れられたと感じられた私は歓喜に涙した。

旦那様と、相思相愛になれるなんて……。
そんなことが起きようとは、夢にも思っていなかった。

更に、思い悩んでいた全ての事は私の誤解で、まさかこれ程までに旦那様に愛されていたなんて……。

(えっ?……妊……娠……??)

旦那様との間に、こんなにも早くに子宝に恵まれ、本来のならば喜びに満ち溢れ幸せを噛みしめられる筈なのに、全く無知な私はその事に気付けず……、この子にはとても辛い思いをさせてしまった。
それは、己の心意的弱さと無防備な行動が齎した結果だった。
何とか頑張って欲しいと願う私の思いは、旦那様の心強い支えによって聞き入れられて、今この子は私の中に息づいている。

幸せすぎて信じられない程の穏やかな日々。
報われるに余りあるほどの幸せを、私は噛みしめていた。



結婚当初の、旦那様の愛を感じられずにいたあの頃のままの私だったら、今回の旦那様の出来事も、不慮の事故として自分の中できちんと整理し消化できたのかもしれない。
けれど、私は知ってしまった。
旦那様が傍にいてくれる幸せを……。
知らなかった過去には決して戻れない。

最初は不確かのように思えていた旦那様からの愛情表現も、やっと最近、当然のことのように受け入れ、信じられるようになって来ていた。
これは夢ではないのだと……。
何時か消えてなくなるのではないかと言う不安も、ここ最近の呆れかえるほどの旦那様のかいがいしさが、私の心の迷いを払拭してくれていた。
これ以上の幸せがあるのだろうかと……。
私は旦那様に愛されているのだと、素直に信じられた。

信じてはいても、それでも少し前まで付き纏っていた不安。
それは当人の想いとはうらはらに、旦那様がとてもおモテになるから……。
実家の家の者の話では、旦那様の周囲には、まだ懇意になろうと近づく輩が居るのだという。
その誘いに乗る事は、今の所は無いようだが、それでもその話を耳にする度に、心穏やかでは居られなくなる。
この子の存在が旦那様との絆になると同時に、私の躰を気遣い、最近閨を共にすることが出来なかった日常が、更に私を不安な状況へと駆り立てていた。

想いを交わせないと感じていた頃には無かった思い。
旦那様から愛の言葉をささやかれ、それを信じ、共に歩んでいけるのだと思った時から私の心は婚姻当初より贅沢になっていた。
心が狭くなっていた。

(そんなの……、旦那様の意思に反する行いなのだから、そもそも責められるべきものでも無いのに……)

旦那様が実際に出来ない状況にあったと言うのなら、そうなのだろう……。
言い難いであろう状況を正直に告白してくれた時点で、とても旦那様が嘘をついているとは思えなかった。

しかし……、動けない状況にあったというのに、旦那様はその状況を如何やって回避したのだろうか?
それに、全身痺れて動けなかったと言っていた。どうやって帰って来……っ。

「あっ、……血……」

その時、洗濯場で見た破れたシャツに付着する、おびただしい血痕の事を思い出した。
あれは、一体誰のものなのか!?

(まさか……、旦那様はその者を殺……)

いや……、動けないのだ。それはあり得ない。
それに幾ら何でも殺めたのであれば、旦那様は既に捕らえられている筈。
何のお咎めも無いのであれば、それはそういう事なのだろう。
ならば、他に考えられる事は……。

「まさか……、旦那……様の?」

(私に心配をかけまいと、……傷を負った事を隠して?)

一つの結論に達し、私の身は小さく震え始める。

「奥様ッ、今ご無理をされては……」

「大丈夫。旦那様の所へ伺います」

私はそう侍女に告げると、身体を起こし旦那様の許へと向かった。

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※父、何度も急変し、人工呼吸器をつけたり外したりを繰り返してましたが、先週末気管切開をしてから、吸引は必要ですが状態が安定し始めました。良くなる病気ではありませんが、落ち着いているので少しずつまた再開したいと思います。

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~ Comment ~

NoTitle 

唯一の支えの存在っていうのは幻想ですね。
正直、人間一人では支えられないですからね。
みんなで支えあって生きていくっていうのが現実ですからね。
そういうのを理解して、相互依存していくのが大人になるってことですからね。
なかなか難しいですけどね。
(--〆)

LandM様 

今晩は。
幻想かぁ(笑
でも、確かに難しいんですよね~。
って言うか、最初は一人と一人であっても、家族だったり友人だったり、侍女であったりばあやであったり、、、。
うちのキャラにも影で支えてくれる人はきっと居る筈。
でもこの二人はも、これから互いを助け支え合い、そして家族と言う絆を得て大きく育って行くんです。
頑張れ~♪

いつもコメント有難うございます^^/
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