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信じても良いですか?旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第31話(シルビア視点)

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カーテンの隙間から差し込む光に刺激され、重い瞼をゆるりと開くと、そこには椅子に座ったまま私の手を握り、掛布の上に身を横たえる暖かい腕があった。

「……、旦那……さま?」

何時お仕事から戻られたのか?
確か昨夜はお戻りが遅くて少し空が明らんで来た頃知らせが入り、そして……。

「あっ……」

忌々しい出来事と、羞恥の事実の双方を思い出し、思わず頬が朱色に染まっていくのを感じた。

(やだ……私ったら、旦那様に……何て事を……ッ)

真面に旦那様のお顔が見れないッ。
慌てて掛布を引っ張り、中に顔を埋めてしまう。

……それにしても、今は何時なのだろうか?
随分と久しぶりに頭がすっきりしていて、吐き気も今はおさまっている。
旦那様との精神的交わりは、私に良い眠りをどうやら齎してくれたらしい。

(旦那様……)

そっと掛布をずらし再び顔を少しだけ覗かせて、旦那様のお姿を覗き見る。
柔らかなプラチナブロンドに長い睫毛。

「私の……、私だけの旦那様……」

ゆっくりと手を伸ばし、その髪に触れようとした瞬間、気配に気づいたのか飛び跳ねるような勢いで、旦那様が身を起こされた。

「シルビア!……お前、大丈夫なのか!?」

何処か焦ったような声音で、心配そうにそう告げられた。

「あ……、はい」

「直ぐに、先生を!」

「えっ?」

私の返答も聞かずに、旦那様が立ち上がり部屋を後にした数分後、現れたのはローゼリアン伯爵家の主治医である医術師のマグノーマル先生だった。
旦那様は隣室へ待機させられ、私の診察結果を待っている。

「ご気分が優れずに、一昨夜また倒れられたという事でしたが、今現在特別な不調がございますか?」

「……いっ……、一昨夜って!?……今は、朝……、ですよね?」

先生の言葉に一瞬、呆然としてしまう。
私は何時間眠っていたのか?
道理で頭も気分もすっきりしている筈だ。

「はい。丸1日以上お目覚めになられない状況でしたもので、伯爵も無理をさせてしまったからに違いないと、酷くご心配されておりまして……」

先生の言葉に、思わず俯き頬を染めてしまう。
一昨夜の事になるらしいが、旦那様の衝撃的な告白に頭に血が上り、羞恥を覚える行動を衝動的とはいえ取ってしまった事実を、先生は何処までご存じなのだろうか?
先生は柔らかな笑みをただ零されているだけだが、羞恥で思わず掛布の中に私は再び潜り込んでしまう。

話によると、私の経過については、先生はただ眠っているだけの状態であり、何の問題も無く思われると旦那様にも仰って下さったそうなのだが、それでも旦那様は酷く心配されていて、私の側からずっと離れようとしなかったらしい。
旦那様は私が心配だから目が覚めるまで暫く邸に留まってほしいと先生にも懇願したらしいが、先生に言わせてみれば私の状態よりも旦那様の傷の方がかなり心配だったらしい。

「旦那様のお怪我は、そんなにも酷い状況なのですか?」

「はい。断絶までは致しておりませんでしたが、神経が少し損傷しておりましたので、無理は禁物なのです」

傷の回復具合が心配で、邸に何度も様子を見に来てくれていたそうだ。
旦那様は損傷を受けた当初、飲まされた薬の関係で痛み止めや化膿止めが直ぐに処方できなかった事から、想定内の範囲ではあったが一昨日より少し発熱していたらしい。
にもかかわらず、普通に騎士団にも顔を出し、屋敷へ帰れば私を心配し寝台で横になろうとは一切なさらず、ずっと傍についていてくれのだと……。

「傷の回復を思えば、適度な睡眠をとって頂いた方が良いのですが……」

「もっ、申し訳ございませんッ!」

色々な意味で、夫婦二人して心配をおかけしている事を、本当に申し訳なく思う。

「いえ。ですが仲直りされたようですし、本当に良かったと……。奥様に致しましても、心の不安要素は悪阻を誘発させる原因の一つでもありますし……。それに、外傷は時間の経過と共に良くなりますが、ああみえて伯爵の心の傷を癒せますのも、奥様だけでしょうから。伯爵は怪我を負われてからずっと、ご自身の不甲斐なさを責めておいででした。ですが、私は不思議でならないのです。あのような薬を飲まされた上に、お体が真面に動かない状況で一体如何やって御自身で抜け出して来られたのかと……。通常の者であれば抜け出すなど絶対に無理としか考えられず……、これも日頃の鍛錬の賜物なのでしょうが、そこに少なからず伯爵様の奥様を思われる心の強さが表れたのは事実でしょう。私はその事に感動を覚えずにはいられません」

「旦那様の飲まされたお薬は……、それ程に酷いものだったのですか?」

「人的害の残らない薬品の中では、最悪と言われる部類の痺れ薬ですから」

そして、更に問い詰めれば、隠していた所で最早どうしようもならないだろうからと、旦那様の傷の具合についても詳しく教えてくれた。
もう一ミリでも深く傷つけていれば神経までもを完全に損傷し、騎士の道も絶たれていたかもしれぬ程の大怪我なのだと言う事を……。

「そんなに酷いものだったなんて……」

旦那様は大したことは無いと仰っていたが、そんな事は無かったのだ。
私との約束を守る為に、旦那様が、そこまでして下さっていたなんて……。

「……先生……、私……っ」

旦那様を許そうと決心していたものの、全てをまだ払拭できていた訳では決して無かった。
頭で理解し、行動も起こしてもみたけれど、心の何処かでは完全に拭いきれない何かがまだ心を燻っていたのは事実。
けれど……。
目頭が、ほんのり熱くなる……。

「ああ、泣かないで下さいよ。私が伯爵に叱られてしまいますから」

「なっ、泣いていませんッ……」

こんなにも、自分が旦那様に愛されていたという事実に、自然と涙が溢れて止まらない。

「ああ、参りましたね……」

頭を掻き、先生が苦笑いを浮かべていると、隣室から続く扉が勢いよく開けられた!

「……如何いう……事だ?」

目の前には困惑しながら、佇む旦那様の姿。

「……私のせいではありませんよ。泣かせた張本人が居るとすれば……、それは伯爵、貴方です」

「はあ!?」

旦那様は、訳が分からぬと言った表情で、私を見つめている。

「何があった??」

「旦那様……、ごめんなさい……。私、全然何も分かっていなくて……」

「何のことだ?」

「ここに来て……。私を抱きしめて」

私は旦那様に両腕を伸ばし、訴えた。

「えっ?」

旦那様は普段人前ではありえない私の反応に少しだけ戸惑い一瞬たじろいだ後、先生の方を振り返った。

「ああ、邪魔者は退散致しましょう。奥様は気分が宜しければお庭への散歩は宜しいかと。伯爵は毎日の処置は欠かせぬ状況ですので、無理は絶対になさらず安静を心がけて下さいよ」

去り際に放たれた医術師の先生の言葉に、「そんな事、出来るか!」と旦那様が小さく呟いていた。

状況から、全ての事情を明かされる事になってしまった事実に気が付かれた旦那様は、一瞬だけだったが、まるで苦虫でも潰したような表情を私に見せたが……。

「旦那様の事が……、とっても大好きなのっ!」

私の言葉が旦那様の表情をみるみるうちに破顔させ、笑顔に変えていく。

「私も、シルビアを誰よりも愛しているよ」

旦那様に抱きしめられて、自然と重なり合う唇の暖かさ。
ただただ優しい温もりに包まれて、私の心は幸せに満ち溢れて行った。

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~ Comment ~

NoTitle 

まあ、思いと言動が上手く繋がらない、、、
というのはよくあることです。
子どもではそれが著明だと思いますが。


大人だったら、その辺の折り合いをつけて、
どうしたら愛情を伝わるか、思いが旦那に伝わるか、
っていうのを行動で示すのも大切だと思いますけどね。
雰囲気、化粧、お香を焚く、感謝の気持ち(プレゼント)。
等々、、、。。。
愛しているからと言って、
その思いが相手に伝われないと難しいですからね。
・・・恋愛関係は難しい。。。
・・・ということを教えてくれます。
(--〆)

LandM様 

返信遅くなりました。
恋愛ごとは夫婦であっても……、夫婦だからこそまた難しい事があったりします(苦笑)
次がラストです。
次も開くと思いますが、もう暫くお付き合いください。

いつもコメント有難うございます。
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