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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第5話 私を捕える彼女の存在

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 気付いてしまえば現金なもので、彼女との幾つかの節目となる出来事の一つ一つが特別なもののように感じられて来るから不思議だ。

 誕生してひと月後の、初対面した時の赤子の割にハッキリとした顔立ち。伯爵に良く似た面差しに、思いがけず苦笑いを漏らした。
 初誕生を迎えた1歳の時には、足取りがおぼつかないながらも私の腰の帯(サッシュ)が気になって、ひたすら触ろうとしていた可愛い姿。
 2歳の誕生には、色々な事に興味を持ち始め舌っ足らずな喋りで私を質問攻めにして魅了し、3歳になると、何処に行くにも妹シルリルの手を引いて引きずり回し、4歳の時に二人目となる妹マリーサが誕生すると、お姉さん気取りで妹にミルクを飲ませる事に夢中だった。
 そしてローゼリアン伯爵家ならでわの手習い事と称し、5歳で護身刀術を教わるようになると、7歳の誕生日には――。

「殿下、私と剣の手合わせをして頂けませんか?」

「えっ?」

 まさかの彼女からの申し出に驚き、父であるローゼリアン伯爵を振り返れば、微笑を浮かべて頷かれた。
 まじまじと彼女を見下ろせば、そこには何処か一本筋の通ったような真剣な眼差し。

 少し位は出来るのか?
 
 考えてみれば相手は騎士を多く輩出している名門ローゼリアン家の令嬢。
 まあ、相手にならずとも型位は出来ているかもしれないなと漠然と思い相手をしてみれば、放つ剣のあまりの重さに度肝を抜かされた。

「ぅっ……」

 その剣捌きは凄いもので、とても7歳の少女のモノとは思えなかった。
 歳の割に、身長もあるしリーチも長い。そのせいなのか?

「殿下、本気を出してくださって構いませんよ」

 彼女の父であるローゼリアン伯爵は、微笑を浮かべ楽しそうに観覧していた。

 結局の所、私はこの時勝つ事が適ったが、このまま成長し、私とのつり合いがとれる年齢に達した時、彼女がどの様な成長を遂げているのかと思うと、その事が末恐ろしく感じた。
 今思い起こせばそれ以降、彼女に対する注目の仕方が、それまでのものとは少しずつ変わって来ていたのかもしれない。

「殿下、シルリルを捕まえて下さい! 具合が良くないのに、お薬を窓から捨てちゃったんですッ」

「マリーサが、恥ずかしがって……。ご挨拶も出来ずにすみません……」

「キャーッ、プリシア! 殿下に何てことを……っ」

 だが季節の折り毎に触れる普段の彼女の姿は、決まっていつも面倒見の良いお姉さんで、その表情はクルクルといつもとても良く変わり可愛いかった。
 その表情は会う毎に、私に微笑ましい休息の場を与えてくれた。

 そして14歳のあの宣言の日を経て城に上がるようになった彼女は、従騎士を経て昨年我が国の正騎士に就任。私は彼女を優先的に、私の護衛の任に就くように命じた。
 通常新人が、王族の護衛に付くなど考えられない事だが、そこは彼女が現在我が婚約者候補筆頭と言う位置にある事から、周囲の者に暗黙で認めさせた。
 最初の頃は指導騎士がついての護衛だったが、今では単独でつつがなく私の傍で職務を行っている。

「殿下、これより先には例のモルガンテ子爵が……。こちらの迂廻路からお回り下さい」

「いつも気が利くね、フィフィは。可愛いだけでは無く、有能で機転も利くから助かるよ」

「……殿下、このような場で、その様な呼び名やご発言はお控えください……」

 何処か涼やかな眼差しで微笑みながらも、私を諌める姿も好ましい。

「ああ、そうだった。すまない、ローゼリアン副隊長」

「……いえ」

 王族の傍に配置を許されるのは、各隊と副隊長以上となっている事から、彼女は名目上護衛騎士団第7部隊の副隊長と言う肩書を与えられている。
 形ばかりの地位は不要だと、その事を彼女は当初不服としていたが、そこは王族の力で強制的に認めさせた。
 彼女は私の苦手な人物も全て把握しており、その者の動向を常に視野に入れながら、夜会などの席でも極力顔を合わせないようにする事を考えて、いつも進路を確保してくれる。
 そこまで視野に入れ、機転をきかせ詳細に事を考えてくれる護衛騎士は少ない。
 彼女を護衛騎士として指名するのには勿論私の個人的趣向も大きいが、事細やかな気配りも今や彼女を護衛騎士として好む要因の一つとなっている。
 王族といえども決して甘えさせない。この手厳しさも、今では彼女の魅力と思っている。
 他の彼女以下の婚約者候補は、私を前にすると媚び諂うか、ひたすら従順になるかのどちらかだが、彼女は誰とも違う。
 彼女は常に私を敬う事を忘れず、それでいて律することの出来る人材なのだ。
 
 成長した彼女は、以前にも増して私には好ましく、公私共にもはや手放せない存在となっていた。

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~ Comment ~

NoTitle 

源氏物語の同じ状態かな。。。
まあ、自分の娘を自分の好みに育てる。。。
・・・ということでもあるでしょうし。
自分が大切に育てていたり、成長過程を見ていれば、愛着が湧く。。。という話なんでしょうが。。。

有名なのは、柴田勝家とお市でしょうが。
30歳ぐらいの年の差がありましたからね。

LandM 様 

自分の好みに育てると言うのは少し違うかもしれませんが、成長を見守っている内に愛着からいつの間にか愛情が芽生えていたと言うパターンですね。

私も結構年の左婚の話は書いてますがまだ30歳違いは無いなぁ。
確か25歳差が最高の筈。
柴田勝家とお市様程のドラマは無かったかもしれませんが、結構楽しく描いた記憶はある(笑

こちらへのコメントも有難うございました。
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