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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第7話 いつの間にか訪れていたもの?

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 つかの間の私の休息をいつも脅かすのは、決まってこの国の王太子フリップ殿下。
 世間では、私がこのフリップ殿下の婚約者候補にまだ収まっているようだけれど、今の私にはもう、そんな事は関係無い事だった。


「殿下はああ仰っていらしたけど、事はお姉様のお気持ち次第だと思うのよ」

 直ぐ下の妹シルリルが、私にそう告げたのは3年前。
 独断で殿下に婚約者候補を辞退したい等と言い出して、あの後父からは、こういう行動は一人で考えてからでなく、きちんと親に相談してからにするようにと諭され、母からは唯々激しく泣かれ、少し勝手が過ぎたと反省していた夜の事だった。
 優しい妹は、私の為にそう言ってくれているのだと思っていたその後で……。

「私は殿下の事が好きだわ。凄く好き! ずっとお慕いして来たの」

「……えっ?」

 突然の妹からの宣言に、私はかなり動揺した。
 妹は、私の前では殿下と無邪気に話す事はあっても、そんな素振りを見せた事が一度も無かったから……。

「お姉様は? 殿下の事を如何思っていらっしゃるの? お好きなの? お慕いしている?」

 矢継ぎ早に問いかけられる言葉の中に、今まで平然とした素振りを見せながらも、妹が殿下への強い思いを内に秘めていた事を知った。
 それはきっと、全ては姉である私への気遣いだったに違いない。

「それは……」

 そう思うと胸が酷く痛んだ。

 好きか嫌いかと聞かれれば、確かに好きな部類には違いはないと言う感覚は持ってはいたものの、『お慕いしているか?』と深く聞かれてしまえば、この時点での私は、そこまでは自分でも良くは分かっていなかったと言う方が正しかった。

「えっと……、そうねぇ……」

 当然、自らの気持ちを掴めてない以上、返答に困ってしまうのは当然で、言葉を濁していると、妹は瞳にいっぱいの涙を浮かべながら私に言ったのだ。

「そんな中途半端な気持ちなら……、私に協力してよっ」

 妹の、純粋に殿下を思う気持ちが胸に響いた。

 我が家の王太子殿下の婚約者候補は私一人ではない。
 直ぐ下の妹シルリルと、その下の妹マリーサも、同じ地位にあった。
 私がその地位を退けば、年齢的にみて私に続くのは直ぐ下の妹のシルリルだ。まだ筆頭になるまでは数年を要するが、それまでに殿下がご結婚されなければ、妹にもチャンスは巡って来る筈。
 当時の殿下は、まだ直ぐの結婚と言うものにあまり興味を抱いていないように思えた。
 となれば、2年先か3年。或いはもっと先という可能性も考えられた。
 この時の妹の発言は、恋する乙女としては当然で、純粋なものだったように感じられた。

 それに対し当時の……、あの頃の私は、確かに身体の弱かった上の弟と生まれたばかりの乳飲み子である下の弟に、ローゼリアン家の未来を預ける事に危惧を覚え、殿下の婚約者候補と言う地位を、一旦廃そうとした。
 殿下へ対しては、当時それなりの気持ちはあったかもしれないが、ローゼリアン家の行く末と殿下への想いを比べた時、その重さは遙かに家の方に傾いていたと思う。
 私が婚約者候補を退いたとしても、母の期待は続く妹達がそれを繋いでくれるとそう軽く考え、思っていたのも事実。
『娘を王太子殿下の嫁にする!』
 これは母の念願でもあったから、その期待も絶対に裏切りたくは無かったが、私には続いてくれる妹達がいる。
 それに比べ剣の道は決して甘いものではない。生半可な事ではおそらく達成など出来ない。ならば比重の軽い方を捨て去るしかない。
 そう思い、当時妹の訴えを聞き入れたのは自分だった筈なのに、人の感情と言うものは、何故こうも厄介なものなのだろうか?
 最近、何故だか平素で殿下を正視する事が難しい。

 今もこうやって殿下を見ていると、先日自らがセッティングした筈の妹と二人で城の中庭を腕を組み寄り添い散策していた姿が思い出され、イライラが募って来てしまう。

「そんな怖い顔をしていると、せっかくの美しい顔が台無しだよ?」

「美しくないしッ!」

「ここに座っても良いかな?」

「どうぞお好きに。私はもう行きますので」

 立ち上がりその場を移動しようとすれば、腕を強く掴まれた。

「もう少し良いだろ。時間はまだあるよね?」

 自身に纏わりつく腕を、必死に振りほどこうとしてもがいていると、その胸に急に抱きすくめられていた。

「!!……なっ」

「ねえ、もう強がるのはやめにしないか? フィフィ」

「しませんッ!」

 次の瞬間、突然殿下が少し含んだように微笑を浮かべた。

 ――あれ?
 私、何か変なこと言った??

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~ Comment ~

NoTitle 

案外難しいですよね。
剣の道は自分との戦いなので、
自分がどうにかできれば、
どうにでもなるんですけど。

愛や結婚は相手があることで、
他人は思い通りにできないっていう真実があるので、
自分だけではどうにもならない、ってことがあるんですよね。

まあ、その困難を乗り越えてこそ
本物の愛があるってことですね!!!
(●´ω`●)

LandM様 

今晩は。
返信大変遅くなりました。

最近色々バタバタしてまして^^;
執筆する時間が全く取れていないと言う。。。

恋愛は、一人でするものではないので、そこが大変なんですが、それを乗り越えた時の味はまた美味なものだと思うので、二人には何とか頑張ってほしいと思います。
きっとフィフィもいつかは幸せが訪れる筈です^^

いつもコメント有難うございます。
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