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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第15話 危険へのカウントダウン

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 プロムナード伯爵邸に到着し、マグリット・ムハナム男爵令嬢と合流するや否や、怒涛のように押し寄せる麗しき殿方の数々。
 そこには夢のような光景が目の前に広がっていた。

「レディ、私と踊って頂けませんか?」

「いえ、是非私と先に」

 あっという間に私たちの前には列が出来上がり……。
 ああ、なんて素敵なの!
 高揚する気持ちを抑えきれず、思わず顔がほころんだ。

「マグリット、これって……」

「ふふふっ、凄いでしょう?プロムナード伯爵邸の夜会はいつも特別なのよ」

 特別も良いところ。大特別だ!
 ざっと見積もって15、6人……。
 いや、それ以上。
 こんな夢のような体験は初めてだった。

「マグリット、貴女いつもこんなに人気者なの? 私、こんな状況初めてで気後れしちゃうんだけど」

「そんな必要はないわ。社交界デビューしたばかりの娘は貴重なものよ。殿方って若い子に目が無いから」

「そう言うもの?」

 確かに周囲を見渡せば、ここにいる中では確かに私たちは若そうだ。

「さあ、少しでも気になる殿方がいたら手を取って。片っ端からどんどん踊っていくわよ。そして見定めるの。貴女ダンスは得意でしょ。それでこの人だと思える殿方が決まれば、一緒に抜け出すの。だって、それからは二人だけで楽しみたいじゃない?」

 ウィンクを返されたので、私はこの時何も深く考えずに、それが気軽な事なのだろうと捉えてしまった。
 月明かりの下、二人で庭園を散策するのかぐらいに……。
 それに私にはお姉さまがいつも付いて下さる。何があってもきっと大丈夫。
 そう考えていたのも事実だった。
 ならば滅多にない機会だ。素敵に殿方に囲まれるこういう状況を味わうのも悪いことでは無い。
 殿下以外の方という事に立場的に少し戸惑いもあったけれど、マグリットの言葉が引き金となった。

「私、一応殿下の婚約者候補の一人なんだけど」

「誰もそんなこと知らないし、気にしないわよ。婚約者候補って言ってもそれは殿下がその中からお妃を選ぶと言う形式的なものなのよ。求婚されなければそれで終わり。貴女、候補に挙がって長いのにまだ求婚されたことないでしょ。可能性の低い今の状況では、他の殿方に今の女として一番輝ける時期をアピールして無駄に過ごさないようにするべきだわ」

「低いって、失礼ね」

「あら、だって殿下はここ数年ずっと貴方のお姉さまに求婚中だってもっぱら噂よ。貴女の勝ち目は低いでしょ?」

「!!」

 突きつけられた衝撃なる出来事に、拳を強く握る。
 殿下が過去にお姉さまに何度か求婚したことがある事は知ってはいたけれど、ここ最近もそのような噂が出るほどの行動をとられていた事を私はこの時初めて耳にした。
 凄く、ショックだった……。

「最悪行き遅れたら、古狸の後妻に落ち着く事にもなりかねないのよ。貴女、その覚悟はあるのよね?素敵な殿方を見つけて先に幸せになるのは自由なんだから、殿下以外にも自分の伴侶となり得る殿方を見定めておくのは悪いことでは無いと思うわ。今日なんて、その絶好の機会じゃない」

「でもっ」

「それにね。地位の高い殿方って、往々にして周囲からの注目度も気にするものよ。更に殿下の目にとまりたいんだったら、もっともっと自分をアピールして常に殿方の視線を集められるような魅力を纏わなきゃ。貴女のお姉さまなんて職業柄高貴な方々と付き合う事が多いんだから、状況としてはそれだけで貴女は常に不利な立場に立たされているのよ。思いが残っているのなら尚更今のままじゃダメ。それにしても、貴女のお姉さまって全く羨ましい限りだわよねぇ」

 マグリットの視線の先にあるのは、お姉さまの姿。
 私と目が合い、何も知らない姉は笑顔でこちらに向けて手を振ってくれている。
 ふと見つめ返したその先に、何故かマグリットの言うように、背後に多くの素敵な殿方が見えた気がして、私は大きく息を呑んだ。

 私には、元から殿下と毎日関われるような機会はお姉さま程ない。
 ならばここは、お姉さまとは違う得意分野で勝負すべきではない?
 私がお姉さまより誇れるものがあるとすれば、それは社交性。
 だったら、ここで見返す為にも勝負しなきゃ!

「これ位、みんなやっている事なのよね?」

「そうよ、私の周りでは普通にね」

 こういう場ではいつもお姉さまは壁の花。
 最初は心配する父が頼んだことがきっかけだったけど、今では私が保身の為に頼んでいる。
 護衛に付いて貰っている事を、今まで利用していると言う風に意識は無かったけれど、いつもありのままの私でいられるのはそのお陰もあったかもしれない。
 それに、今日は良い機会だ。

「さっ、とにかく踊り始めないと。殿方をあまりお待たせするのもではないわ」

「そうね」

 多少の不安を覚えつつもこの時の私は、少しでも自身にとって優位になる事しか考えておらず、事態を軽く捉えていた。
 これから起こる事についての、想像すら膨らませる術も持たずに……。
 
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~ Comment ~

NoTitle 

女性磨きも大切ですよね!!
待っているだけで王子様はやってこないモノですからね。
特に今のご時世は~~ってことでしょうけど。
昔だとこういう社交場で色々経験値を重ねていたのでしょうかね~~。
・・・と色々と勉強になります。
(*´ω`)

LandM 様 

今晩は。
社交界に出たばかりの娘たちは、女性磨き必須なんですが、ここではそれはそれとして、ちょっとここで含みを持たせて続くって事で(笑

いつもコメント有難うございます。

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