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婚約者候補筆頭なんて知りませんッ

婚約者候補筆頭なんて知りませんッ 第18話 跡を追ってみると……(殿下視点)

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 妹のシルリルを屋敷へ帰するよう馭者に言い放ち見送ると、その足で彼女の父である統帥本部長は私へ神妙な面持ちで、思いもよらぬ言葉を口にしはじめた。

「殿下……、もしもの場合は、娘を諦めて下さいますね?」

「な、何を言って……っ」

 ……もしも、って何だ?
 もしもって……。

 これまで漠然と、頭の中にあった嫌な予感が駆け巡る。
 ここに来るまでの間、何度も打ち消して来た……。

「事は一刻を争います。万全は尽くしますが、消息が途絶え既に数十分……。最悪なる状況も考えなくてはなりません。何を目にされましてもお立場を重んじるご判断をお願い申し上げます」

「勿論だ」

 もしも彼女の身に何かあったなら……。
 いや、何かあってたまるか!!


 自らの娘が窮地に遭いながらも、痕跡を辿り王家の未来を見据え行く末を案じ、冷静に考えていられる人材。
 我が国の重鎮に身を連ねて久しいだけの事はある。
 私は天を仰ぎ大きく息を吸い込むと、ある言葉を胸に秘め唇をかみしめた。

「痕跡はここで途絶えています。とりあえず他にも策は取ってありますが、先に乗り込みますか?」

「勿論だ」

 痕跡の途絶える前には左右に別れた二つの棟。
 奥の方まで辿ってみたが、何の痕跡も残されていない事から手前の方の部屋の何れかが一番あやしいと言う話になった。
 どちらから探るべきなのかと思っていれば、奥の廊下から何者かが叫びながら煙のようなものがたちこめて来た。

『かっ、火事だぁーーっ!!』

「どうやら始まったようですね。炙り出し作戦が」

「火を放ったのですか!?」

「まさか、煙幕ですよ」

 手がかりの無い場合も想定し、到着後比較的早い段階で場所が特定できなかった場合、この策に転ずる案が話し合われていたらしい。
 慌てて奥の方から次々と着崩れた衣装のまま飛び出して来る、あられもない男女の姿。
 やがて騒ぎを聞きつけたらしく向かって左の棟の手前の部屋が大きく扉が開かれると、一人の男が飛び出してきた。

「かっ、火事だって!? うわぁっっっ!!!」

 飛び出して来たシャツの乱れた男の首元を掴み取り、素早く捻り上げる統帥本部長の姿。

「早く……中にッ!」

「はっ、はい!」

 何も考える余裕も無く、飛び込んだ部屋中に彼女の姿を探す。
 無造作に脱ぎ捨てられた女物の衣装が視界に入り、思わず視線を逸らした。

 ……間に合わな……、かったのか?
 
 震える拳を握りしめながら、勇気を振り絞りその奥に置かれてある寝台の上を直視すると、その上に力なく横たわり熱い息を吐き出しながら朦朧としている女と目が合った。

 違う……、フィフィじゃないッ!

「伯ッ、対側の扉だ!!」

 私は振り返り、部屋を駆け出しながら声を張り上げる。

「くそぅ!!」

 ニブい音がしたかと思うと、男は手を離した反動で床へと叩きつけられ横たわっていた。
 こんな奴の事など如何でもいい!
 急ぎ対側へと移動したその先には、形相し扉を蹴破る彼女の父親の姿。

 火事だと言う声にも気付きもせず、中に居る者は何に没頭しているのか? 
 考えたくもないが、嫌な予感が脳裏をよぎり、大きく首を横に振る。
 ……いや、大丈夫だ。彼女はきっと……ッ。

 そして、次の瞬間私が捉えたものは、寝台の上で何かを組み敷いている男の後ろ姿だった。

※おまたせしてスミマセン。ぼちぼち更新します。

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~ Comment ~

NoTitle 

大切な人がいなくなる感覚か。。。
私の小説でも結構沢山書きましたけどね。
私の場合は亡くなる時の方が多いですけど。。。
職業柄、どうしても、生存するご都合主義を描けないですよね。
読むのは好きなんですけどね。

LandM様 

今晩は。返信遅くなりました。
ついにこちらもコロナが身近に迫って来て、隣接している系列の整形の患者さんにコロナが発生し、毎日出入りしている利用者様もいるので、もうバタバタしておりました。発生から八日、今の所まだ出てないので大丈夫かもしれませんが、最長で潜伏期間は12日と聞くので、まだ油断はできません。

そちらは医療系のお話も多いですし人がいなくなってしまうお話、現実を直視している分、どうしてもそうなりますよね。
うちは私の部署的に看取り対応の利用者様も多い部署ですが、その時出来る事を精一杯、少しでも安楽に過ごせるようにお手伝いさせて頂いています。
リアルに現実的な話は無理と思いますが、お話がリアルにリンクしないのは全然大丈夫です。

お互い今が大変な時期ですが、頑張りましょうね。
いつも有難うございます。




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