パウリンに導かれて
パウリンに導かれて《第13章7》
ニックとランドンがゼロの許に訪れたのは、それから2日目の事だった。
元キールのメンバーだった者の中から更に4名の協力者を仰げたことから、今後指揮は一層高まるに違いない。
「多くはありませんが今回集まってくれたのは、皆父を慕ってくれていた者達です。父の死後、新たなブラックナイトの体制下についていけずここを離れたとの事でした」
「もっと集められると思っていたのですが……、すみません。当時と状況が異なっている者も多く、思うようにはいきませんでした」
「世話をかけたな。ご苦労だった」
「いえ。奴を完全に失脚させる為なら、どのような事でもしてみせます!」
ニックとブラックナイトの絶対的な繋がりは、ライサンドが作っていると言っても過言では無い。
ライサンドの処遇次第では、今後単独行動に走るかもしれないと言う危うさの残るニックを、同じ目的を持ったランドンの存在が抑制効果となり働いているに違いない。
「実は公爵から、二人に申し出があった。キールのメンバーに正式に加わらないかと」
「それは直ぐにと言う事でしょうか?」
「今回、ライサンドの息のかかった者を一掃した件で、欠員の補充に奔走しているそうだ」
「今直ぐにという事でしたらお受けできません。ライサンドの件が正式に片付かない限り、私のとるべき行動ただ一つ。それに、今入った所でご迷惑をかけるだけですから」
「という事は、この件が片付けば検討の余地はあると思っても良いのだな?」
「今後の体制と統率者次第です」
ニックの返答は納得できるもので、ゼロは続く視線をランドンへと移す。
「私はお断りします。姉の件が片付くまでは、こちらへ滞在中はどのような協力も惜しみません。しかし今の私はあくまでルシオン様の従者。あの方が私を必要として下さる限り、今後もお傍を離れるつもりはありません。これからもあの方が皆様と行動を共にされます限りはご一緒させて頂きます」
「だろうな。お前ならそう言うだろうと思っていた」
「はい。それが、今の私が居るべき場所ですから」
そう告げるとランドンは嬉しそうに微笑んだ。
あの能天気で頼りない男の何処に、そこまでの忠誠心が掻き立てられるのか理解はできないが何処か納得できるのは、彼がローレライの兄であると言う事が一番の要因だろう。
「お前には、まだ色々と協力して貰わなければならないが頼んだ件も片付いたし、表向き立場に戻って貰った方がこれからの事を考えると都合がいい。ランドンの従者として暫くここに置いて貰えるように公爵に頼んでおこう」
「はい! 宜しくお願いします」
深々と頭を下げながら久方ぶりに見るランドンの明るい表情に、ニックは彼が自分とは似て異なる道を進んでいる事を改めて理解した。
彼は自分とは違い、新しい場所で別の人生を既に歩んでいるのだと……。
ここへ戻って来なければ、もしかしたら自分も違った人生を歩めたのかもしれない。
けれど、どうしても忘れる事が出来なかった。
老人と共に過ごした3年間、あのような酷い形で失ってしまった婚約者の姿が夢の中に幾度となく現れ、想いは深まっていった。
こっそりとこちらへ戻って来てからも、それは失われる事が無くライサンドへの憎しみは更に募るばかりで、いつしか平常心を取り戻すために、辛くなれば想い出の場所に足を運ぶようになっていた。
あの場所へ行けば、いつも彼女の存在を感じられる気がし、同時にその度に失ったものの大きさを再認識させられた。
より強くなっていく憎しみの中で、忘れたくない想い出のあの場所が、唯一の心安らげる場になっていたのは何時からだったのだろうか?
彼女の眠るこの地を絶対に離れたくない。そんな気持ちいつしかがそうさせていたのかもしれない。
「ニックには自宅を借りている件もあるし、もう暫くは世話になる。今回の件で公爵は牧場の調査を開始した。ザグソンは既に捕らえられ聴取されていると言うからお前はもう牧場へは戻れないだろう。それはこちらの落ち度だ。すまない。その代わりと言っては何だが、こちらで協力して貰っている間は、必要経費として今までの給金の同額以上は支払わせて貰いたい」
「いえ。それは結構です。当初の約束通り賃貸費用を保証して頂くだけで問題ありません。
食材の提供もありますし」
今まで考えたことも無かったが、もしもこれから先、自分より先にあいつが逝く事があったなら、自分は如何なってしまうのだろうか?
結婚をすると約束してから、漠然とゼロもニックの立場的状況に想像を巡らせるようになっていた。
今回は事なきを得たが、もしあの時自分が気付けずにいたらと思うとゾっとした。
もしかしたら、自分は第二のニックになり得たのではないのか!?
ニックの想いの深さを目の当たりにし、遂げさせてやりたいとゼロは切実に思った。
その為には少しでも早く我王を引き摺り降ろし、自分が玉座に座る必要があった。
※随分とお待たせ致しました。
主人もやっと退院し、先日社会復帰できるようになりましたので、スローペースですがまた再開させて頂きます。
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「多くはありませんが今回集まってくれたのは、皆父を慕ってくれていた者達です。父の死後、新たなブラックナイトの体制下についていけずここを離れたとの事でした」
「もっと集められると思っていたのですが……、すみません。当時と状況が異なっている者も多く、思うようにはいきませんでした」
「世話をかけたな。ご苦労だった」
「いえ。奴を完全に失脚させる為なら、どのような事でもしてみせます!」
ニックとブラックナイトの絶対的な繋がりは、ライサンドが作っていると言っても過言では無い。
ライサンドの処遇次第では、今後単独行動に走るかもしれないと言う危うさの残るニックを、同じ目的を持ったランドンの存在が抑制効果となり働いているに違いない。
「実は公爵から、二人に申し出があった。キールのメンバーに正式に加わらないかと」
「それは直ぐにと言う事でしょうか?」
「今回、ライサンドの息のかかった者を一掃した件で、欠員の補充に奔走しているそうだ」
「今直ぐにという事でしたらお受けできません。ライサンドの件が正式に片付かない限り、私のとるべき行動ただ一つ。それに、今入った所でご迷惑をかけるだけですから」
「という事は、この件が片付けば検討の余地はあると思っても良いのだな?」
「今後の体制と統率者次第です」
ニックの返答は納得できるもので、ゼロは続く視線をランドンへと移す。
「私はお断りします。姉の件が片付くまでは、こちらへ滞在中はどのような協力も惜しみません。しかし今の私はあくまでルシオン様の従者。あの方が私を必要として下さる限り、今後もお傍を離れるつもりはありません。これからもあの方が皆様と行動を共にされます限りはご一緒させて頂きます」
「だろうな。お前ならそう言うだろうと思っていた」
「はい。それが、今の私が居るべき場所ですから」
そう告げるとランドンは嬉しそうに微笑んだ。
あの能天気で頼りない男の何処に、そこまでの忠誠心が掻き立てられるのか理解はできないが何処か納得できるのは、彼がローレライの兄であると言う事が一番の要因だろう。
「お前には、まだ色々と協力して貰わなければならないが頼んだ件も片付いたし、表向き立場に戻って貰った方がこれからの事を考えると都合がいい。ランドンの従者として暫くここに置いて貰えるように公爵に頼んでおこう」
「はい! 宜しくお願いします」
深々と頭を下げながら久方ぶりに見るランドンの明るい表情に、ニックは彼が自分とは似て異なる道を進んでいる事を改めて理解した。
彼は自分とは違い、新しい場所で別の人生を既に歩んでいるのだと……。
ここへ戻って来なければ、もしかしたら自分も違った人生を歩めたのかもしれない。
けれど、どうしても忘れる事が出来なかった。
老人と共に過ごした3年間、あのような酷い形で失ってしまった婚約者の姿が夢の中に幾度となく現れ、想いは深まっていった。
こっそりとこちらへ戻って来てからも、それは失われる事が無くライサンドへの憎しみは更に募るばかりで、いつしか平常心を取り戻すために、辛くなれば想い出の場所に足を運ぶようになっていた。
あの場所へ行けば、いつも彼女の存在を感じられる気がし、同時にその度に失ったものの大きさを再認識させられた。
より強くなっていく憎しみの中で、忘れたくない想い出のあの場所が、唯一の心安らげる場になっていたのは何時からだったのだろうか?
彼女の眠るこの地を絶対に離れたくない。そんな気持ちいつしかがそうさせていたのかもしれない。
「ニックには自宅を借りている件もあるし、もう暫くは世話になる。今回の件で公爵は牧場の調査を開始した。ザグソンは既に捕らえられ聴取されていると言うからお前はもう牧場へは戻れないだろう。それはこちらの落ち度だ。すまない。その代わりと言っては何だが、こちらで協力して貰っている間は、必要経費として今までの給金の同額以上は支払わせて貰いたい」
「いえ。それは結構です。当初の約束通り賃貸費用を保証して頂くだけで問題ありません。
食材の提供もありますし」
今まで考えたことも無かったが、もしもこれから先、自分より先にあいつが逝く事があったなら、自分は如何なってしまうのだろうか?
結婚をすると約束してから、漠然とゼロもニックの立場的状況に想像を巡らせるようになっていた。
今回は事なきを得たが、もしあの時自分が気付けずにいたらと思うとゾっとした。
もしかしたら、自分は第二のニックになり得たのではないのか!?
ニックの想いの深さを目の当たりにし、遂げさせてやりたいとゼロは切実に思った。
その為には少しでも早く我王を引き摺り降ろし、自分が玉座に座る必要があった。
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鍵コメ様
色々とご心配頂き有難うございます。
中々間が空きすぎてしまい、実は細かい設定でカットした話か実際にアップしている内容なのか自身であやふやになっている部分もあり、しっかり書き進めるには各作品読み直してからと思っています。なので、かなりお待たせしていますが、必ずどの作品も完結はするつもりでいますので、気長にお待ちいただければと思います。
楽しみして頂き有難うございます。
貴方様も季節柄ご自愛ください。
中々間が空きすぎてしまい、実は細かい設定でカットした話か実際にアップしている内容なのか自身であやふやになっている部分もあり、しっかり書き進めるには各作品読み直してからと思っています。なので、かなりお待たせしていますが、必ずどの作品も完結はするつもりでいますので、気長にお待ちいただければと思います。
楽しみして頂き有難うございます。
貴方様も季節柄ご自愛ください。
- #1730 涼音
- URL
- 2021.12/18 17:12
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